池袋の地下洞窟
目が覚めると視界には暗くまだ夜が明けてないことを瞬時に理解し脳を働かせる
「犬山君!?おいしっかりしろ!」
返事はない 息はある
「なんで俺はいつも役立たずなんだよ…」
役立たずではダメだ
ずっとがんばってきた
捨てられたくなくて、子供ながら必死に勉強して
それでも親は荒れ続け、結局何も変わらなかった
引き取られた先はのは母の妹で、今まで以上の苦痛が待っていた
役立たず
母や義母、その夫にも言われ続けた
「今はそんな事を思い出してる場合じゃない」
包帯やら消毒液やらを出し簡単な治療をする
子供の頃から自分でやってた事もあり手慣れた手つきで素早くすまし、担ぎ込む
とにかく建物の中に入らないと
一番近いのは…
犬飼君の居るところか
《みんな無事か?》
ダメか…
もしかしたら最悪の事態だ、やっぱり僕は役立たずだ
とにかく敵がまだいるかも知れない…気は抜けない
「はぁ…はぁ…」
中学生とはいえ人を担ぐのがこんなにきつかったなんて
ここも大分崩れてるな…
『Skype』を発動させながら進む
じゃないと脳波をキャッチすることが出来ない もちろん普段は必要なときしか使ってない
「「お兄さん」」
「うわあ「静かに」」
突然の声に驚き悲鳴をあげそうになる
「な、なんて子供がこんなところにいるんだ!?」
「落ち着いて、まず聞きたいのは」
「爆破の能力者は仲間?それ以外の人たちは?」
右と左、交互に喋る
「あ、ああ 爆発男は敵 それ以外はみんな仲間だ
それより君たちはなぜここに?それに…」
大事なとこで口ごもる
「嘘じゃないみたい」
「じゃあ連れていこっか」
「「着いてきて」」
着いていってどうする?罠かもしれないんだぞ
犬飼君達を探さなくちゃいけない
怪我人もいる
もしかしたらこんな子供でも反乱軍かもしれない
犬山くんを置いてはいけない…どうしたら…
「疑いだしたらキリないよ」
「僕たちは味方」
「この辺で倒れてた人も保護してるよ」
「中学生くらいの男の子」
「なっ!?それは本当か?」
「「うん」」
とにかく今は着いていくしかない用だ…
「「じゃあこっち」」
振り向き二人並んで歩き出す子を観察しながら進む
見た目小学生の2、3年生くらいで身長は同じ
服は黒字で背中に「根性」と刺繍されている
スポーツクラブでも入ってたのだろうか
双子でも、片方には左目の下に泣き黒子が
もう片方はヘヤピンを付けていて見分けはつくようだ
「ちなみに能力は使えないよ」
「どういうことだ?」
「これが俺たちの能力」
ホクロの子が忠告するかの様に告げ
ヘヤピンの方が答えた
試しに『Skype』でなにか取り出そうとしたが、なにも起こらず もしかしたらさっきのは邪魔されただけでみんなまだ生きてるかもしれない
まだ希望がある
「着いたよ」
「ここが僕たちの秘密基地」
どこからどうみてもなんの変哲もないただのゲームセンター その奥にある4×4マスのボタンを押す音ゲーを泣き黒子が不規則に叩く
頭に?が浮かべるがなんの説明もしてくれない
「「足元気を付けて」」
「へっ?」
足元から小さな光が眩しい
一瞬見えたのは魔方陣のようなものだった
光が収まり目をあけると数十人はいるであろう人だかりができていた
「これは…地下?さっきのは入り口か」
防空壕を広くしたような場所にいくつもの物資とテントが張られている
洞窟みたいだ
「おいおい!また怪我人を連れてきたのか…」
「「見てやってくれませんか」」
「お前らが連れてくるなら悪人ではねぇんだろうけどよ…」
双子に文句を言ってるのは筋肉質でいかにも大工って感じの人
頭にタオル巻いてるし
「お、お願いします!」
俺が言っても役に立たないだろうけど、だめ押しだ
「しゃーない、兄ちゃんそいつ見せてみろ」
お礼を言い犬山くんを優しく下ろす
「なんだって今日は怪我人が多いんだ?また戦争でも始まったか」
「いえ…」
文句を言いながらでも大工っぽい人は手当てしてくれるようだ
「ヒール」
「えっ!?」
みるみる怪我が塞がり、包帯を取っていく
絶対能力間違えてるだろこの人、と思ったが口にださない
「今顔と能力が合ってないと思ったろ」
あれ、顔に出てたかな
早めに謝っとこう
「す、すみません」
「いや、別にいいんだ みんなそう思うのは分かる
本人でさえ驚いてんだから」
やっぱみんな驚くのか
「そういやさっきも一人連れてきてたな」
「! その子僕の仲間なんです!」
大工に迫る
あ、すごい迷惑そうな顔してる
「おい、ちけーよ ホモか?」
声がしたのは後ろからだ
聞き覚えのある、声変わりしたばかりの無理に低音を出してる声
「生きてた…」
「あぁ…どうやらここの連中に助けられちまったようだな 借りはいずれ返すぜ」
カッコつけた喋り方が今は安心する
「あれ…どうなったん?」
犬山くんも平気みたいだ
生きてて、よかった
「あーまだ戦ってるみたいだな、行くぞ拓海」
「ok 犬飼が戦うってんなら勝てる相手なんだな どんなやつ?」
一人、会話に入れずにいる
なんで?生きてたからいいじゃないか
無理しないで帰ればいいじゃないか
「ちょっ、ちょっと待ってよ!君達中学生は死にかけたんだよ!?どうして戦うって言うの?」
必死に止めたつもりだ
そんなのは「もしもの時」の自分への言い訳
そんなの分かってる
このまま死んだらおしまいだし やり直しも出来ない
運命は変わらない
「中学生だ でも今まで何度も死にかけてる
いつ死んでもおかしくなかった ならいつ死んだって同じだと思うからよ
それに音がする まだユッキー達が戦ってる証拠だ
逃げるわけにはいかない」
たしかに微かだけど上から爆発音が聞こえる
「"役立たず"になるならここで待っていてくれ」
「犬山くんまで…
そうだ、皆さん助けてください!」
自分でも厚かましいとわかってる
「悪いが俺たちは戦わないことを決めてる
たとえ相手が誰であろうと不干渉だ
国も反乱軍も何も信じられるものはないからな」
誰も戦う気がないのを見てとれた
力がぬける
僕は、子供が戦うのに僕は隠れてるのか?
分かってる、分かってるつもりだけど簡単には言えない
「出口はあそこ」
ヘヤピンが指差したのは
最初に入ってきた場所と異なって洞窟の奥だ
「ありがとう」
それだけ伝えて犬飼は走り出す
少し遅れてから犬山はチラリと俺に目を合わせてから走る
あいつ、わざとか
中学生のくせに気を使わせやがって
でも自分に言い訳ができた
「すいません!ありがとうございました!」
仕事のくせで深々と頭を下げてから
急いで追いかける
二人はもう地上に出たみたいだ
黄色い魔方陣
これで地上に…もう引き返せなくなる
いや、行くんだ
魔方陣の真ん中に立つとまたしても眩しさで目を瞑る
地上か
何度やってたら視力落ちそうだな
「お前ら…」
「ほらぁ、ちゃんと来ただろ?」
そこに待っていたのは、二人の大人な子供
「犬山くん、ライター忘れてるよ "火"がないと何も出来ないんだから」
「アー、ワスレテター」
無駄な小芝居をいつまで続けるつもりだろうか




