亜子の覚悟
大きな爆発音で私は目が覚めた
(…っ!?)
気を失ってたことに気づいた私はすぐ様立ち上がる
サンシャインタワーから少し離れたところにある雑居ビルの3Fから
そこから見えたのは走り回る能力者とユッキー
本名は…たしか、ひろゆき?ゆきひこ?
思い出せない
「…すごい」
人前でまともに喋れない
何年も引きこもってた人なのに、なんでそんなに頑張れるんだろう
さっき手を握った時みたいにきっと震えてる
私が水を被せられた時、殴られた時の教室みたいに
誰も手を貸してくれない
誰も守ってくれない
そんな状況でなんで戦うの?
私達を置いて逃げるんだと思ってた
私だったらそうする
そうすることしかできない
「……!」
視線の先でユッキーが飛ぶ
無理だ 倒せっこない
あんな吹き飛んだら死んでしまう
今逃げれば助かるかもしれない
でも、せっかくの見つけた居場所には戻れなくなる
記憶を見られたらきっと軽蔑される
見殺しにした、と
嫌だ
きっとみんなは責めない むしろ生きていたことを誉めてくれるかもしれない
だけど
「…なりたくない、あいつらみたいにはならない!」
弓と矢を拾い上げる
カーボン弓
その名の通りカーボンで造られたものでグラスファイバー製より軽く、竹弓の軽さとは質が違う
軽い分、矢の勢いも付くが壊れやすい
矢は遠的矢
飛距離を出すために軽量化された物
それでもここからだと遠すぎる
当てなきゃ、助けなきゃ
震える手のひらに矢を突き刺す
こんなところで怖じ気づくわけには行かない
「はぁ…はぁ…」
全速力で階段を降りる
苦しい 酸素が足りない
でも
今までの人生できっと一番早い
道路に飛び出し、確実に当たる距離まで近寄る
思いきり弓を引く、また手が震え出す
それでも狙いを定め
放つ
矢は奴の肩を貫いた
でも、奴は止まらない
殺気が怒りが伝わってくる
(もうだめだ)
「死ぬ覚悟がないなら 戦場に来るな」
奴の手には包丁
きっと力を使い果たしたのだろう
(死ぬ覚悟…)
何度も頭の中で繰り返される言葉
刹那 奴の背で爆発が起こる
いや 奴の背中に、だ
「グッ…一体…」
私は痛みを感じる手を強く握り
覚悟を 感情を込めて叫ぶ
「死ぬ覚悟なんてない…でも
何度も何度も「死」に憧れた!今更死ぬことに恐怖も後悔も無い!」
吹っ切れた
手足の震えはなくなる
「なら死ね」
一瞬で背中をとられ首を絞められる
弓を落としてしまい、ただもがく
「…う…ぐ…」
とんでもない力で押さえられどんなに体を動かしても抜けられない
助けを求めようにもユッキーは倒れ込んだまま動かない
(生きてる…よね)
どうせ私はいらない存在
誰かに求められた事なんて1度もない
こんな世界になって、人工が減っても
それでも、私を必要とするのは研究や実験のためで他にも代わりは沢山いた
そんな人生で最後に仲間ができて終わりかぁ
せめて来世は幸せになりたいな…
《亜子!しゃがめ!》
えっ?
「ゴホッ…」
急に腕が外れた
《しゃがめ!》
2度目の忠告でやっとしゃがむと
声の主を確認した
《キョウちゃん?》
《ああ俺達は無事だ、とにかくそこを離れてくれ》
助かった様だ
そうだ、ユッキー
「おも…」
引きずってでも安全な場所へ…
急に軽くなった
「もしかして…健二くん?」
他に考えようがない
ユッキーを肩に抱えているものは段々と色付いていく
「ああ…とにかく今は京一達にまかせて
犬飼がいれば最強だから」
こんな状況なのに笑っていた
一人じゃないという安心感からか、私も綻んでいた
亜子視点でした!
次は社蓄と負け犬三人組の戦い!
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