第一章一節 見習い魔術師リル
「リル!また調合を間違えたね!」
私は見習い魔術師のリル、元は日本でシェフをやってたんだけどある日カナっていう精霊(私から見たら妖精)が突然現れて「魔術師やってみませんか?」と誘われてこのメレイトクにやってきたのはいいんだけど、見習い魔術師として転生されちゃって毎日が大変!
それに、ここの料理はおいしいのだけど何故か見た目が変に仕上がる。
例えば、色の付いた消しゴムのようなものが綿飴に似た味だったり、オムライスに似た料理がラーメンの味にすごく似てたり。
(絶対この世界の料理の見た目を変えてやる!)
そんなこと考えてると師匠のミヴさんが私の目の前に調合に失敗した催眠薬をおいた。
「リル!あんたは立派な魔術師になるんでしょ!」
「そ、そうですけど、調合は苦手です・・・」
「調合が苦手じゃないよ!立派な魔術師になるためには調合もできなきゃだめ!」
「で、でも~・・・」
「でもじゃない!ほら、催眠薬の調合をもう一回やるよ!」
ミヴさんのやる気が出てきちゃった・・・
こうなるとミヴさんを止められるのはミヴさんの夫、キリさんだけだけど今日はキリさんがいない!
「まず、瓶に入ったミストラの葉の粉に水を加える」
ミルトラの葉っていうのは竹に似た木に生えてる葉で、ものすごく甘い。
どのぐらい甘いかというと、パフェに砂糖をたくさんかけてその上に黒糖をかけたような甘さ。
そのミストラの葉の粉に水を入れると緑色の水になった。
「次はちゃんと唱えるのよ」
「えっと確か『ミリクト』」
「違うわ!『ミセイラ』よ!」
「あ!しまった!」
緑色から真っ黒になっちゃった・・・
「リル!なんであんたは簡単な呪文も間違えるの!?」
「す、すみません!!」
また間違えてしまった。
呪文は暗記をしなければいけないのだけど、私は暗記が苦手。
暗記は受験だけで十分なのに!!!!
「リル、呪文の勉強はちゃんとしてるのでしょうね!」
「してますよ!ただ覚えづらいだけです!」
「だったらちゃんと覚えられるようにもっと勉強しなさい!」
「おやおや、ミヴ、リル、また喧嘩かい?」
玄関を見ると赤髪、緑目のキリさんが微笑んでこちらを見ていた。
「キル、おかえり」
「キルさん、おかえりなさい」
「ただいま。ミヴ、分かってると思うけど、リルはまだ見習いだよ。少しは手加減しなきゃ」
「だ、だけど、見習いのうちからこういうのに耐えなきゃだめでしょ」
「そうだけど、もっと優しく、ね?」
キルさんが微笑みながらウインク。
破壊力満点だよ・・・このウインク・・・
「わ、分かったわよ・・・///」
ミヴさんの顔が真っ赤になってる。
キルさんのウインクは強烈だ・・・
「次からは気をつけてね。それじゃ、僕は城に行くよ」
「え?もうですか?」
「大丈夫、ただの呼び出しだから。それじゃ、ミヴ、リル、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
「キルさんいってらっしゃい」
キルさんは私達に微笑んだ後、家を出た。
この国、リンスト帝国は魔術師の国として知られている。
元々はひとつの国であった隣国のミストキア王国が魔術王国だったのだけど、最近では魔術より剣が主流になってリンスト帝国が現在、魔術ではトップに上がった。
だから、魔術師の階級制度もできてしまった。
一番下は見習い、二番目は下級魔術師、三番目は中級魔術師、四番目は上級魔術師、そして一番上は帝国魔術師。
私は見習い、ミヴさんは中級魔術師、キルさんは帝国魔術師だからある意味すごい。
才能ある上級魔術師でも、帝国魔術師になるには早くて十年は掛かって、そして帝国魔術師は五人と決まっていて、その中にキルさんが入ってる。
だからキルさんが城に呼ばれるのは、不自然じゃないんだけど今日は日本で言えば休日。
休日に呼ばれるのは、普通はおかしい。
何もなければいいのだけど。
「リル、今日は調合と呪文以外の事、勉強するよ」
「え!?」
「つ・ま・り、空を飛ぶってこと」
「ええええええ!?」
ちょっと、ミヴさん!私に勉強すること増やしてどうするんですか!?
「空を飛ぶの待ち遠しいかったよね。それじゃ、ちょっと待ってて」
ミヴさんは魔法資料庫に入ってしまった。
あそこに入ると二、三十分は出てこない。