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閑話・桜紅葉

学校は春休みに入った。そんなある日の出来こと。


海は、近所の山に来ていた。そう、あの、三人で紅葉を見に来たあの山だ。


「――綺麗」


海は思わず声を漏らす。


海の周りは、桜だらけ。海は桜に囲まれていた。

 

この桜は少し前に開花し、今は丁度満開あたり。勿論それ目当ての観光客も多い。


「約半年前、綺麗な桜紅葉だったなあ」


約半年前、それは三人で紅葉を見に来た日のことだ。

あの時の紅葉は全て、桜紅葉――即ち、桜の木だったのだ。


「そういえば、類さんと巧さんに会ったのも、こんな桜紅葉の綺麗な木の下だったっけ」


三人の出会い。それは約一年半前、秋のことだった。








* * * * *



平々凡々な海は大学の教授である類と助手の巧の存在など知らなかった。

一部では天才、秀才と話題にはなっていたが。


そして、勿論のことだが、一年半前に二人の授業はない。

今にしてみれば、はっきりと言ってしまえば二人は海に会うために高校に訪れている様なものだったと、そう思う。

 

一年だった海は始めて大学の敷地に入った。


入ったといっても、ただ単に海が学校で迷子になり、大学の敷地に入ってしまったのだ。

 

歩き続け、疲れた海は赤い葉の生い茂る桜の木の下にあったベンチに座る。

それが良かった。この場所は巧のお気に入りの場所だったのだ。

 

一年前、二十四歳だった巧はこの桜の木の上でよく類から逃げていた。

単に助手が面倒でサボっていたのだ。


そして、二人は出会った。


「君、誰? 大学生じゃないね。高校の制服着てるし」

「――っ。あ、あの、私迷ってしまって……」


突然木から振ってきた――というより、飛び降りて聞いてきた巧。

一瞬、驚きで息を詰めた海だが、大学生の人かと思い事情を説明する。

 

そして、その時に巧に気に入られ、巧から同じ桜紅葉の木の下で類を紹介された。

二人が教授と助手だと知った時の海の顔は見物だったと、後に巧は語る。


そして、二人が高校に遊びに来るようになり、二年になった頃、二人の授業が出来上がってしまったというわけだ。








* * * * *

 


あの頃は、おそらく、いや、まず間違いなく、生きてきた中で一番楽しかったと断言できるほど、その日常を満喫していた。

 

しかし、その半年後、巧は事故に遭い、三人での日常が壊れてしまうのだった。



ちょっとした閑話として、三人の出会いを紹介させてもらった。

では、本編に戻ろう。


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