落日 5話
大魔王ケルベゾールドが復活した。
大僧正候補である御身様が、インディラ寺院の代表として従者候補となるのは当然のこと。
寺院の中で最も優秀な僧侶は御身様。
最も尊き御方は御身様なのだから。
エウロペの勇者のもとへ向かう御身様に、陰ながら付き従った。
嬉しかった。
旅の間、配下の忍として御身様の為に働ける。
毎日のようにそのお顔を目にできる。
影として常に物陰から護衛できる。
生きていて良かったと、思った。
* * * * * *
御身様が移動魔法で向かった先は、エウロペの首都クリサニア――その下町だった。わしと御身様の名代の方を連れての移動だった。
名代の方――御身様のご友人のジャガナート武闘僧が王宮に向かい、御身様は当分クリサニアの安宿にご滞在の予定だ。
名代をたてる事になったのは、総本山の高僧の方々のせいじゃ。有髪のままエウロペ国王の御前にあがってはならぬ、教団の恥になるなどと騒ぎおって。大僧正様自らが御身様をインディラ教団の代表と指名されたというのに。横からガーガーと……。
むろん、御身様は小物どものさえずりなど気にもかけておられぬが。
髪を剃らぬし、『王宮にあがれない以上仕方がない』と下町観光をお決めになった。おそらく花街と賭場巡りになるだろう。
いつでもどこでも御身様は輝いておられる。さすがじゃ。
ジャガナート様と安宿でお話をしている間に、お口をお慰めするものをお運びした。エウロペ産のワインとチーズに燻製肉。名店と名高い店は事前に調べておいたので、さほど時間をかけずに用意できた。
御身様は舌鼓をうち、俺を褒めてくださった。俺に味覚修行をさせておいて良かったと上機嫌だ。御身様のお好みの味はおおよそわかる。これからは各地の名産品をよく吟味した上でお出ししてゆこう。
ジャガナート武闘僧の分もご用意したのだが、
「気持ちだけいただく。わしはナラカ様ほど精神力が強くないのでな、僧侶の禁忌は破らぬようにしておるのだ。わしの分まで有難うな、ナラカ様の影殿」
ジャガナート武闘僧は、がっはっはっはっはと豪快に笑われた。下賎な忍者まで人扱いしてくださる気持ちのよい方だ。御身様の後輩らしいが、御身様が友人として遇しておられるのもわかる。
「魔法道具、ありがたくお借りします」
ジャガナート武闘僧は御身様から渡されたアイテムを幾つか、懐にしまった。
「助かります。ナラカ様もご存じの通り、私は魔法の方はさっぱりにございますから」
御身様への連絡用、盗聴用、姿隠し等隠密活動用アイテムなどだ。御身様の名代として王宮にあがるジャガナート武闘僧の為に、御身様がご用意した物だ。
「ジャガナート、勇者の人なりをあなたの目でよく観察してきてください。くだらぬ男だったら、うまく誘導して怒らせ、インディラ寺院からの従者などいらぬと相手から言わせるのです」
「はいはい、それはもうわかっておりますとも。総本山の人気者のナラカ様をめったな男にはお預けできませんからな」
と言ってからまた豪快に武闘僧は笑った。
ジャガナート様が王宮に向かった後、御身様より向かいの席に座るよう命じられた。先ほどまでジャガナート武闘僧が座っておられた席だ。
まだ残っていた酒を、御身様御自ら杯に注いで渡してくださった。ありがたくて恐縮した。
御身様と差し向かいで酒を交わし、ツマミを口にする。
何とも気恥ずかしく、そして懐かしかった。御身様のご実家で、俺はよく御身様のお食事やお茶のご相伴に預かったものだった……。
「……昔に戻ったみたいですね」
同じことを御身様も感じておられたようだ。
「毎日、こんな風に過ごしたいですよね」
「ですなあ」
「……大魔王戦が終わったら、殉死したって事にして出奔しちゃいましょうか?」
「総本山を離れるのですか?」
「大僧正様は素晴らしいお方ですけど……あそこ戒律好きだらけで居心地が悪すぎて……。僧侶ナラカは死んだってことにして、あなたと二人、世界中を遊び歩きたい。そうできたら、楽しいでしょうね」
「御身様のお望みとあらば、俺はどこへなりともお供いたします」
御身様と二人旅を想像しながら俺は答えた。御身様のおっしゃる通り、この上なく楽しいものとなるだろう。御身様と二人っきりで過ごせるなど。
「俺は御身様の『影』です。どこまでもお連れください」
御身様が俺を見つめる。
うっとりするほどお綺麗なお顔。たいへん賢く、信仰にも篤く、魔法も大魔術師並のご実力で、芸術面にも才があり、棒術も達者。何もかもに優れた俺の御身様。
このお方の影である事が俺の誇りだ。
このお方以上の者がこの世に存在するはずがない……
御身様が寂しそうに微笑む。
「冗談ですよ……そうしたいのは山々ですが、私は大僧正候補です。ちゃんと総本山に帰りますよ」
冗談と聞いて、少しがっかりした。御身様と何処までも行けたら、さぞ幸福だろうに……
「インディラにはサティーもいますしね……国を捨てるわけにはいきません」
十三も年の離れた妹君を、御身様はたいへん愛しておられる。ご両親が事故でお亡くなったので、唯一のお身内だからだろうか。しかし、直接会話をかわされたことはない。聖職者の御身様は、勝手にご実家に戻る事ができない。花街へ行くぐらいならば、妹君に会いに行かれればよいのに、一度も御身様はご実家に帰られない。俺から妹君のお話を聞くのを楽しみにされているだけだ。
「それに、あなたも……」
御身様が意地の悪い顔をなさる。
「インディラにはかわいい妻子がいますものね。私にくっついて世界を歩きたくないでしょう」
御身様はずっとお怒りなのだ。俺が幼馴染のくノ一と結婚していた事を知ってから。
いわゆるデキ婚なので恥ずかしかったせいもあるが……俺の結婚のような瑣末なことを、わざわざご報告するまでもないと思ったのだが。
俺に妻子があると知ると、御身様は烈火のごとく怒り、妻子を見せろと無理やり俺を案内させた。妻シータルと息子アシダ。まだ赤子のアシダをご覧になった時の御身様は、とてもやさしいお顔をなさっていた。
「シータルには伝えてあります。御身様の御用と家族、二つが並び立たなくなった時は、家族を捨て御身様の御用をとると。ですから、御身様、旅立たれる時は、お気兼ねもなく、俺をお連れください。どこへなりともご一緒いたします」
「旅立ちません」
「わかりました。ですが、気が変わられた時には、お忘れなくこのガルバを」
「旅立たないって言ってるでしょ。 私のわがままであなたの家庭を崩壊させるほど、そこまで非常識な男ではありませんよ、私は」
* * * * * *
ほんに御身様はまめな御方だ。
総本山を出立する前々日、わしの配下の者達との顔会わせの時だ。
一人一人に、お言葉をかけてくださったのだ。しかも、全員に対して違う言葉を。前にわしから聞いた話をよう覚えておられ『手裏剣が得意なのだそうですね、警備をお願いします』だの『仲間うちで一番足が速いそうですね、今度、その実力をみせてください』だのそれぞれの個性にあわせ言葉をかけてくださった。
ご記憶にない者に対しては『得意技は何です?』と、尋ねて『×××なのですね、わかりました。覚えておきます。×××をもって私に仕えてくれることを期待します』だの相手の心をくすぐるような事をおっしゃる。
忍者は、道具として扱われるもの。
個を認めてもらう事ほど嬉しい事はない。
皆、主人からの一言をたいへん喜んでいた。
二人っきりになってから、部下に代わってお礼を述べると、御身様は当然のことをしただけだとおっしゃった。
「これから私の為に働いてもらう者達です。挨拶をするのは当たり前ではありませんか」
世の中のほぼ全ての主人はそんな事はしないのですよ……忍者など使い捨ての駒なのですから。
「大魔王討伐の旅に出るのです……全員が生きて帰れるとは思えません。私の為に働き、私の為に死んでくれる者達を心に刻み込んでおきたかったのです」
ああ……御身様は、まだ……
幼い日々の事をご記憶なのだ。
御身様を庇い亡くなった忍達の事を、ずっと気にかけてくださっていたのだ。
アシダの事もお忘れなく、ずっと……。
「あのランツ様の孫で女の勇者……私もあなた方も、無駄死ににならないといいんですけれどねえ」
伯父上様のご生存を知ってから、御身様は伯父上様同様に慕っていたランツ様勇者一行を嫌うようになった。ランツ様らが、伯父上様の出奔をお止めせなんだからだ。捨てられたわしには同情してくださっているようだが。
『伯父上への忠誠心なんて捨ててしまえばいいのに……』
以前、御身様が不愉快そうにおっしゃられた事がある。
『己が楽しみの為に義務を放棄するような不真面目な人間で、しかも、あなたを見捨てた情の無い男です。慕う理由がさっぱりわかりません』
『主人が死なない限り、一度決めた主人に忠義を尽くす……それがインディラ忍者の忍道なのでございます。伯父上様がお認めにならなくとも、私は生涯あの方の忍……そして、御身様の忍なのでございます』
わしは主人を一人と定められぬ、情けなき忍だ。
せめて、働きだけは一人前とならねば。
「御身様」
わしは御身様に対し、平身低頭した。
「大魔王討伐の旅の間、このガルバ、配下の忍達と共に御身様の耳目手足となり、御身様のお命を守る盾となり、旅をお助けいたします。どうぞ我等をお心のままにお使いください」
「それにあたって条件があるのですが……」
「何なりと」
「顔をあげてください、ガルバ」
床に跪くわしの前に御身様はたたずまれている。
「私をよく見てください」
お言葉に従う。筋肉隆々たる逞しいお体、両腕・両脚にはインディラ一の武闘僧の証の装甲。知的な思慮深い、端正なお顔。ほんに大きゅうなられた……あの小さかった御身様が……
「私、もう二十八なんです。いい大人なんです、知ってますよね?」
「はい、それはもう」
「なら、私を子供扱いしないでください、絶対に」
「はあ」
「私を傷つけまいと、嘘をつくなんてもっての他ですよ。報告は正確に、隠し事は無しで、悪い情報も私に伝える。いいですね?」
「承知いたしました」
「この約束を破ったら……今度こそ許しませんよ」
御身様がジロリとわしを睨まれる。
「あなたはすぐに嘘をつく。それが私の為の嘘であっても……不快なのです。子供扱いするのはやめてください。私と共に生きたいのなら、ありのままの真実を私に見せてください」
「御身様……」
「私はもう無力な子供ではありません。大僧正候補で、インディラ一の武闘僧なのですよ。私の為に働いてくれるあなた方だって守れます。ガルバ、あなたが私を守ってきてくれたように、これからは私にもあなた達を守らせてください。いいですね?」
* * * * * *
大魔王討伐の旅が終われば、日常に戻る。
四六時中、御身様のお側に仕える事は再びかなわなくなる。
大僧正候補である尊い御身様と汚らしき忍者では、生きる世界が違う。
お側に仕えられなくなるのは寂しいが……
だが、それでも……
旅が無事に終わる事を……
御身様が英雄としてインディラに凱旋なさる事を……
祈り続けていた……
* * * * * *
何故?
何故?
何故?
大魔王を討伐したというのに……
何故、御身様は何処にもおられぬ?
王宮にもタブールの街にも御身様はいらっしゃらない。
何処にもお姿がない……
移動魔法で遠所に行ってしまわれたのか……?
大魔王戦で殉死したと装う為に迅速に……
御身様……
何故、俺を……
置いてゆかれたのだ……
俺のせいなのか……?
『おぬしには妹に仕えてもらいたいそうじゃ……おぬし、インディラに愛妻と三つになる息子がおるであろう。仲よう暮らして欲しいと言うておったわ』
俺が御身様の影にふさわしくない男となったから……
家族という重荷を持つようになったから……
連れてゆけぬと……そう思われたのか……
お優しい御身様は家族を持ちの俺に情をかけられ、インディラに残そうとしたのか……
俺のせいなのか……
* * * * * *
臓腑の病……?
治癒不能……?
食事の後、胃がもたれるとは思った。時々、腹も痛んだ。
しかし……
どうも、かなり重い症状のようなのだ。
タチの悪い腫瘍ができており、治癒魔法でそれを取り除いてもすぐに再生してしまうのだそうだ。しかも、治療を行えば脊髄損傷の危険もあるという病状……
主人の為に働けぬ忍など忍ではない。
御身様には病のことはご報告しなかった。
ムジャらにも口どめした。わしの病のごとき瑣末なことお耳に入れる必要もない。御身様はお忙しいのだ。
* * * * * *
生きる屍のようだと、シータルが俺を心配する。
元気に遊びまわるアシダを見ても、むなしさが募るばかりだ。
シータルは自分達の事など気にせず御身様を探しに行って欲しいと、俺に願った。
だが、俺はかぶりを振った。
御身様は……影にふさわしくなくなった俺を、俺の為に捨てたのだ。探しに行っては怒られるだろう。ご迷惑に思われるだけだ。
サティー様は俺を憐れんでくださった。
『お兄様はとても賢く深慮なお方です。あなたを私の護衛にと決めたのにも理由があるはずです。ねえ、ガルバ、俗人の私やあなたでは、どれほど考えようともお兄様のお心はわからないと思うのです。お兄様が戻られるまで私と共に生き、一緒にお帰りを待ってくれませんか? お兄様のご予想通り、絶対私にはあなたの護衛が必要となるはずですから』
御身様との手紙の橋渡し役だった俺。既知の俺のフヌケぶりをみかねたのだろう、サティー様は俺を自分の『影』にとりたててくださった。
間もなく、ラジャラ王朝より、大魔王戦で殉死した英雄の妹サティー様を新王の第一夫人に召したいとの話がきた。
サティー様より七つ下の子供との婚姻だが、第一夫人ならば正妃、御身様の妹御の高貴さを損なわぬ結婚だ。
それは古代王朝とラジャラ王朝との婚姻でもあった。
お二人の間に男子が生まれたならば、四十三代様でありながらラジャラ王朝国王となる可能性もある。
ラジャラ王朝を打倒することなく、この国の真の支配者たる血の者が王となるのだ。
これ以上の理想の結びつきがあろうか……
お供することを決め、シータルの許しを得てから去勢した。後宮付きの忍者は、くノ一か男ではない忍と決まっているからだ。
そんな決め事は有名無実でしょうにと、サティー様は俺の行動に心を痛めた。
実際、男性のままの後宮付きの忍者も多い。
しかし、俺は……
俺がお側にいることで、サティー様にご迷惑をおかけしたくなかった。サティー様のお側に夫たる国王以外の男性がいてはいけない。
サティー様がお子を宿した時に、あらぬ噂でサティー様を辱めたくない。
もう二度と……
主人にふさわしくない忍にはなるまい……
俺は、そう心を決めたのだ。
すっかり弱体化していた古代王朝の忍者一族は、サティー様の影の俺を頭領と定めた。
マンガラ叔父御の死後に幾つかの勢力に別れ抗争を繰り返した為、一族は数を減らし、忍としての質も低下していた。しかし、サティー様が子をなし、その子が国王となれば何百年にわたる一族の宿願がかなうのだ。
一族には活気が戻り、シータルの実家が中心となって、サティー様の為の忍者軍団が組織されていった。
* * * * * *
夢を見る。
大魔王討伐の旅の夢だ。
若い頃に比べ衰えた体を嘆きながらも、御身様に仕えられる喜びにうちふるえ、夢中で働いた日々……
神というものを身近に感じた事など今までなかったが……
神がおわすような気がした。
大魔王討伐の旅は……
死の前のわしへの最後の褒美だったのだ……
死なせてしまった配下の者達には申し訳なかったが……
だが、それでも……
御身様のおそばに仕え……
御身様のお声を聞き……
御身様と共に戦い……
御身様と同じ時間が過ごせたのだ……
幸福だった……
* * * * * *
御身様のお声が聞こえる……
わしが良い働きをすると、御身様は満足そうに微笑んだ。
『あなたの忠義にはいつも感謝しているのですよ。これからも私を守ってください』
『さすがは、もとインディラ一の忍ですね、よい仕事をするではありませんか』
始終お側に控え忍として働こうとすると御身様は……
喜ばれた。
『あなただけですよ、誠実に私に接してくれるのは……あなたが共に生きてくれるから私は光の道を歩めるのです』
怒られた。
『だから、その超過保護はやめてください! 私、もう三十なんですよ! うっとうしいからまとわりつかないでください! あなたなんか嫌いです!』
御身様の泣き顔も笑い顔も怒った顔も……
わしにかけてくだすった情も……
全て覚えている……
御身様……
御身様のお声が聞こえる……
返事をして、急ぎお側に駆けつけねば……
御身様、いずこに……?
闇ばかりで何も見えませぬ。
お許しください……
喉がまったく動かぬのです。
お声にお答えせねばと気ばかり焦っておるのに、まったく……
主人をお待たせするなど、忍者としてあるまじき失態。
すぐにも……すぐにも向かわねば……
わしが行かねば……
御身様が泣いてしまう……
涙を隠され、声を殺し、壁に向かって……
誰にも知られぬよう……
静かに泣かれるのだ。
早く行かなくては……
お母上様はもはや御身様のお側におられないのだ……
御身様……お許しください……
いましばらくお待ちください……
必ず御身様のおそばに参ります……
「頭領!」
ムジャの声だ……
ぼやけた視界に、だらだらと涙を流すムジャが見える。忍のくせに泣くなどだらしがない。
「頭領、お気を確かに!…………様がいらしてくださいましたよ!」
誰……が、いらした……?
歪んだ視界に……
そこに居るはずもない御方の姿が見えた……
御身様……
ああ、これは夢だ……
御身様が微笑んでおられる……
わしのもとに御身様がいらっしゃるなどありえぬこと……
これは、夢だ……
現実ではない。夢だ……
だが、良い夢だ……
最期に御身様のお顔が拝見できたのなら……
御身様の口が動く。
何かをおっしゃっておられるようなのだが、その声が耳に届かない。
お答えしたいのだが、ひゅーひゅーと息が漏れるだけで言葉が出ない。
御身様の青い瞳を見つめた。
言葉にできずとも……
御身様ならばわかってくださるだろう、わしの忠義を……
何なりとご命じください……どのような役目も果たします。
影となったその日から、御身様のお望みをかなえる事だけがわしの望みとなりました。
御身様のご期待に添えるよう、このガルバ、働いてみせましょう……
視界を闇が覆う……
御身様のお姿までもが闇の中へ消えゆく……
御身様……
このガルバ、決して御身様をお一人にはいたしませぬ。
影として、常に御身様のおそばに……
『落日』 完。
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最後に来た御身様がどちらの御身様かは、何の話のつづきかによって変わります。しかし、どちらの御身様であっても、その再会は、ガルバにとっては同じ。歓喜の再会です。
ガルバの初登場は『死の荒野5話』。当初は、これほど目立つ予定ではありませんでした。ナーダの部下でナラカのもと部下、先代勇者一行の旅を助けていた……ぐらいの設定しかなかったのです。が、『御身様命』の姿がかわいく、そのかわいいシーンを描きたくて出番をどんどん増やしてしまいました。忠義の忍者は私的には萌えツボなので……。技に溺れる冷酷な一匹狼の忍もツボなんですが。
ガルバはナラカに対しては盲目的な忠義心を抱いていて、『御身様のなさる事はなんでも正しい』と信じていました。ナラカが悪事に走っても信じております! と、ついてゆくような。ガルバが純粋な敬意をずっと捧げてくれていたから、根は結構悪どいナラカも『善の僧侶』を演じ続けられました。
一方、ナーダはいかに大きくなろうとも、ガルバにとって『お守りすべき尊き子供』でした。あれこれ世話をしてしまうのも、還俗させ王位に就かせようと画策したのも、全てナーダの為。ナーダは本当は王位を継ぎたいのだと思い込んでいます。そのくせ、自分こそ最もナーダを理解していると信じている困ったおじいさんです。
ナーダは自分の性格を汚れていると思っており、ガルバの事を忍者にしては人情家のおひとよしと思っています。ガルバは自分を非情で冷徹な汚らしい忍と思っており、ナーダの事をお人がよすぎると思っています。似たもの主従です。
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次回は『悪夢』。悪夢から悪夢へのアジャンの話です。