黄金の晩餐、冷たい視線
その日の夜、俺たちに用意されたのは、現実では見たこともないような豪華な晩餐だった。
高い天井から吊るされたシャンデリアが、銀食器を眩しく照らしている。
並べられた料理の香りは食欲をそそるはずなのに。
俺の胃は鉛でも入っているかのように重かった。
「すげー……これ、マジで食べ放題かよ!」
家持が声を弾ませ、大皿から肉料理を自分の皿へ山盛りに移している。
広間の上座。
そこには、鑑定で「当たり」を引いた連中が固まっていた。
日ノ出を中心に、大伴、白波、そして家持。
彼らの周囲には、早くもその「恩恵」に預かろうとするクラスメイトたちが群がっている。
その喧騒から少し離れた特等席。
そこには、山上くんが座っていた。
周囲の連中は、彼の持つ「深淵滅葬」という禍々しい力に腰が引けている。
どう接していいか分からず、遠巻きに顔色をうかがっている。
そんな腫れ物に触るような空気さえ、山上くんは口角を歪めて楽しんでいるように見えた。
そして。
俺と、あの鑑定で光の弱かった二人――藤原と源は、入り口に近い、一番端の席にいた。
一応、料理は同じものが運ばれてくる。
だが、周囲からの視線が、その料理を「不相応なもの」だと突きつけてくる。
「……ねえ、あの三人さ」
近くの席に座る女子が、こちらをチラリと見て、隣の友人に耳打ちした。
「場違いだよね。あんな弱いスキルで、よくあそこに並んで座ってられるよ」
「本当。日ノ出くんたちが王国のために戦うんだから、あいつらはその分、遠慮すればいいのにね」
聞こえている。
けれど、誰もそれを止めない。
日ノ出たちは、まるで俺たちがそこに存在しないかのように、これからの「英雄譚」を語り合っている。
コツン、と隣でスプーンが皿に当たる音がした。
眼鏡をかけた男子――藤原が、一口もつけていない冷めたスープを見つめていた。
「……はは、まあ、そうなるか」
藤原が、自嘲気味に小さく呟いた。
「俺もこのスキルじゃ、何も言えないもんな。……向こうに行きたくても、席がないよ」
彼は自分の不甲斐なさを噛み締めるように、ただ黙ってうつむいた。
「……あ、あの」
藤原の向かいに座っていた女子――源が、消え入るような声で口を開いた。
「……私たち、どうなるのかな。……帰れるのかな」
その問いに、答えられる奴はいなかった。
俺はただ、窓の外に広がる、見たこともない異世界の夜空を見つめることしかできなかった。
同じクラスメイトだったはずなのに、スキルの強弱だけでこれほどまでに世界が変わってしまう。
豪華な食事さえ、今は惨めさを加速させるだけの道具でしかありませんでした。
隅に追いやられた渚、澄人、結衣。
この三人に向けられる冷たい視線は、この先さらに過酷なものへと変わっていきます。
次回、第7話「選別の天秤」は明日19:10更新です。
ついに王国側が、渚たちに対する「最終判断」を下します。
物語の暗雲が立ち込める中、渚たちの反撃を願ってくださる方は、ぜひ評価やブックマークでの応援をお願いします。皆様の応援が、彼らの力になります!




