光の名を冠する者
光は空間をやさしく包み込み、静かに収まった。
一瞬の静寂を挟んで、ざわめきが戻ってくる。
ただの騒音じゃない。
期待と興奮が、抑えきれずに漏れている。
「……これは、すごいな」
「王国にとって、これ以上ない吉報だな」
水晶の前に立つ彼女は、あまりの反応にただ立ち尽くしていた。
それでも、不思議と落ち着いているようにも見えた。
「――鑑定結果を告げる」
その場の全員が、鑑定結果を待っていた。
「名前、時雨 桜花」
「スキル――聖女」
神官の声が広間に響く。
それを聞いた王国側の面々が、抑えきれない反応を見せた。
待ち望んでいたものが、確かにそこにある――
そんな空気だけが、静かに広がっていく。
玉座に身を預けていた国王が、重々しく立ち上がった。
「時雨 桜花」
声は穏やかで、しかし揺るぎない重みがあった。
「そなたは、王国の未来を照らす光になり得る存在だ」
桜花は一瞬だけ戸惑ったように視線を揺らし、それから小さく頷いた。
「……はい」
「期待に応えられるよう、頑張ります」
拍手が起きる。
祝福の音が、広間を満たしていく。
――遠いな。
少し前までは、同じ場所に立っていたはずなのに、
もう、別の場所に行ってしまったみたいだった。
「次」
神官の一言で、空気が切り替わる。
残っている人数は、もうわずか。
誰も前に出ない。
一瞬の沈黙。
……今さら、か。
期待されていないのも、
覚えられていないのも、分かってる。
俺は、小さく手を上げた。
「……あ、次……やります」
声は、我ながら頼りなかった。
「……まだ残ってたんだ」
「萎えるわー、さっさと終わらせろよ」
聞こえてくる声に、胸がちくりとする。
でも、否定できない。
カースト最下層。
“何もない側”。
それでも。
俺は水晶の前に立ち、深く息を吸った。
(……ここで)
変われる保証なんて、どこにもない。
(それでも、俺だって)
水晶に、手をかざす。
光が――弱い。
先ほどまでの興奮が嘘だったかのように、
神官は淡々と告げた。
「名前、神代 渚」
「スキル――水鏡」
その瞬間、俺はこの世界での立ち位置を理解した。
桜花に与えられたのは、伝説の役職「聖女」。
それに対し、渚に与えられたのは、あまりに弱々しく光る「水鏡」というスキルでした。
光の中に消えていったかつての日常と、突きつけられた残酷な格差。
果たして渚に、逆転の目はあるのでしょうか……。
本日19:10、第5話「反転する序列」を更新します。
ここで、クラスのパワーバランスを根底から覆す「あの男」が動きます。
物語が激動する第5話、ぜひお見逃しなく!
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