鑑定開始
広間の中央に据えられた水晶は、想像していたよりも小さかった。
台座の上に載せられ、淡く光を宿しているだけの透明な塊。
だが、俺たちを取り囲む神官、魔術師、そして兵士たちの鋭い視線が、ここが召喚の成否を決める場なのだと、嫌でも理解させてくる。
「これより、鑑定を行う」
神官の声が厳かに響く。
一瞬の沈黙のあと、最初に動いたのは――。
「はいはーい! じゃあ俺からでいいっすか?」
軽い声。
手を高く挙げたのは、クラスでも目立つ存在だった男。
彼は躊躇なく水晶に手を触れる。
直後、水晶が強く輝いた。
「名前、家持快晴」
「スキル――炎上纒」
神官の声が、淀みなく告げる。
「おお……」と王国側から感嘆が漏れた。
――ああ、やっぱり成功してる召喚なんだな。
そんな確信が、自然と場を満たしていく。
次いで名乗り出たのは、柔らかな笑みを浮かべた女子生徒だった。
姿勢が良く、所作もきれい。
それなのに、どこか計算された隙を感じさせる。
放たれた光は先ほどと同じく強かったが、その輝きはどこか濁っているように見えた。
「名前、白波姫心」
「スキル――心籠」
姫心は軽く肩をすくめて笑った。
「ひめも成功って感じ?」
この世界でも、要領よくやっていくタイプ。
なんとなく、そう感じた。
三人目に前へ出たのは、生徒会副会長だ。
静かに水晶に近づき、触れる。
再び鋭い光が走った。
「名前、大伴冬真」
「スキル――氷軍指揮」
やはり彼の光も強い。
だが、その光り方には刺すような冷たさがある。
「ほう……」と魔術師が小さく声を漏らす。
これも文句なしの「当たり」という雰囲気だ。
――まあ、当然の結果だ。
そして――場の空気が、明確に変わった。
ゆっくりと前に出たのは、クラスの「キング」。
学校という狭い世界の支配者。
彼が水晶に触れた瞬間、内側から弾けるように光が溢れ出した。
それまでとは次元の違う輝き。
広間の隅々までを暴力的な光が照らし出す。
「……っ!」
王国側が明確にどよめく。
驚きと、そして隠しきれない称賛。
「名前、日ノ出恒一」
「スキル――唯我独尊」
説明を聞くまでもない。
疑いようのない「規格外」だ。
この瞬間、はっきりと理解させられた。
――この世界でも、キングはキングなんだと。
それから先の鑑定は、滞りなく進んだ。
皆、それなりに良いスキルを授かり、王国側も満足げに頷いている。
ほとんどの生徒が鑑定を終えたところで、神官が次を促すと、一人の女子が呼びかけた。
「桜花も、早く行きなよ」
呼ばれた彼女は、少し戸惑ったように周囲を見回し、不安げな表情のまま前へ出た。
彼女が、水晶にそっと手を伸ばす。
その瞬間。
光が――溢れた。
神聖さを帯びた極光が広がり、広間は一瞬で白一色に包まれた。
「なっ……」
「これは……」
王国側の反応は、日ノ出の時と同じ、いや、それ以上の驚愕に満ちていた。
彼女のスキルが特別であることは、誰の目にも明らかだった。
神官は、しばし沈黙したまま水晶を見つめ、やがて震える声でゆっくりと口を開いた。
「……時雨桜花」
張り詰めた空気の中、神官は彼女に与えられた「運命」を告げようとした――。
ついに始まった鑑定。
家持、白波、大伴……そして「キング」日ノ出。
それぞれの性格を反映したような強力なスキルが次々と現れ、召喚の成功を確信させる王国側。
そして最後に現れた、圧倒的な極光。
時雨桜花に与えられた「運命」の名前とは……?
明日は第4話を10:10に、第5話を19:10に更新します。
渚たちの運命が大きく動き出す明日。
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