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塗り固められた虚飾

ソルディア王城の一角、召喚者たちに与えられた豪華な休息の間。

 

帰還したばかりの若者たちが集まるその場所には、形容しがたい重苦しい空気が満ちていた。

 

「――っざけんな。なんで、俺が……あんな奴に……ッ!」

 

日ノ出恒一は、拳を震わせながら低い声で毒づいた。黄金の魔力がその全身から陽炎のように揺らめいている。その瞳には収まりきらない怒りと、自分より上の存在を認めがたい矮小な自尊心が煮え繰り返っていた。

 

「……なぁ恒一、落ち着けよ。でもさ、本当に良かったのか? 『神代たちの処分は完了した』なんて報告して。あのディザスターとか言う奴に、あいつらが連れていかれるのは見てただろ?」

 

家持快晴が、顔を引きつらせながら日ノ出に問いかける。

 

日ノ出は即座に、蛇のような鋭い視線で家持を射抜いた。

 

「あぁ? よくわかんねぇ奴に邪魔されて失敗しましたって? 俺たちが……ましてやこの俺が、あんな奴に遅れをとったなんて事実、あり得ねぇんだよ。次はあいつもろともぶっ殺してやる。結果は変わらねーんだよ」

 

「……恒一の言う通りだ、カイ」

 

椅子に深く腰掛け、考え込んでいた大伴冬真が冷徹に言葉を添える。

 

「我々がこの世界に来てまだ数日。アドバンテージは向こうにあった。恒一がそう判断するなら、それでいいだろう」

 

家持は、少し怯えたように「分かったよ……」と引き下がった。

 

その休息の間には、今回の任務には同行しなかった時雨桜花の姿もあった。「聖女」というスキルから王国のアイコンとしての役割を与えられ、別行動を強いられていた彼女は、帰還した友人たちと言葉を交わしていたが、ふと耳に入った名前に顔色を変えた。

 

「みんな! ……いま、神代って聞こえたけど。日ノ出くん、渚はどうしたの? みんなが帰ってきてから姿が見えないけど……源さんも、藤原くんも!」

 

桜花の切実な問いに、日ノ出が苛立ちを爆発させようとしたその瞬間。

 

「あー、桜花ちゃん! そっちはどうだったのー? 一人だけ別のお仕事なんて大変だったでしょー」

 

白波姫心が、これ以上ないほど明るく、それでいて悲しげな色を滲ませた声で割り込んだ。

 

「あのね、大変なことがあったの。敵の中に、すっごく強い人が現れてね……。その人の攻撃で、神代くんたちとは離れ離れになっちゃったの。私たちも撤退命令が出ちゃったから、その後どうなってるか……」

 

「そんな……。みんな、みんなは何か知らないの!?」

 

桜花が周囲を見渡すが、返ってくるのは重苦しい沈黙だった。

 

クラスメイトたちは一様に目を逸らす。それは自分たちが渚たちを切り捨てたことへの罪悪感に他ならなかった。

 

「……桜花ちゃん、みんな大切なクラスメイトを失って、辛いんだよ。そんなに責めるように言わないであげて?」

 

姫心の突き刺すような「優しさ」に、桜花は「ごめんなさい……」と黙るしかなかった。

 

だが、その胸中には消えない違和感が残る。明らかに待遇の悪かったあの三人だけがいなくなった事実に、彼女は微かな疑念を抱き始めていた。

 

数刻後。

 

召喚者たちは筆頭魔術師ヴォルガによって、厳粛な円卓の間へと呼び集められた。

 

「――皆さん、今回の任務、実にお疲れ様でした。報告は聞いています。エクシア共和国の最高戦力の邪魔が入りましたが……皆さんの才能は、やはり素晴らしい」

 

「ヴォルガさん。その『エクシア共和国』……あいつは何者なのですか?」

 

大伴の問いに、ヴォルガは待っていたと言わんばかりに目を細めた。

 

「エクシア共和国とは、この大陸において我々の平穏を脅かす厄介な敵国です。そして奴こそが、そのエクシアで最高戦力とされる、通称『ディザスター』と呼ばれる者です」

 

ヴォルガは、憎しみを煽るように言葉を紡ぐ。

 

「名前すら一切を掴めていませんが、エクシアを筆頭にその周辺諸国が手を組み、このソルディア王国を滅ぼさんとしているのです」

 

「……そのディザスターが、渚を……」

 

桜花の震える呟きを聞き、山上が何かを悟ったように、いやらしく口角を吊り上げた。

 

「ふっ……。だから俺たちがこの世界に呼ばれたってわけだ。大丈夫だよ、時雨さん。俺が……あのディザスターから渚の仇をとってやるからさ」

 

「山上くん……」

 

ヴォルガは満足げに頷く。

 

「おお、なんとも頼もしい。では、次の段階へ進みましょう。あなたたちの実力は証明されました。今回活躍の多かった方々には、一隊の指揮権を任せます。我が軍の主戦力や、あなたたちより以前に召喚された『先輩方』については、後ほど紹介しましょう。期待していますよ……救世主の皆さん」

 

ヴォルガの描いた絵図の通りに、事態は運んでいく。

 

王国はより深い、光の届かない闇の底へとその身を沈めていった。

「救世主」という虚飾に踊らされる少年たち。

日ノ出たちは己のプライドを守るために嘘を重ね、ヴォルガはその憎しみを「正義」へとすり替えていきます。


一方、疑念を抱く桜花と、不敵な笑みを浮かべる山上。

そして語られた「先輩」と呼ばれる先代召喚者たちの存在……。


王国側の戦力も、一筋縄ではいかない怪物たちが揃っていそうです。


次回から毎週日曜日に最新話を更新します。

第24話は 3/15(日) 20:10 更新予定です。


新章突入で不穏な空気が加速していますが、楽しんでいただけていますか?

「日ノ出たちが腹立つ!」「桜花ちゃんだけが救いだ……」と思った方は、ぜひブックマークや**評価(★★★★★)**で応援いただけると嬉しいです!

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