決意と居場所
あれから数日。俺たちは演習場の隅で、再解釈したスキルの鍛錬に明け暮れていた。
忙しい合間を縫って、天城とヒュリアが代わる代わる様子を見に来てくれる。
ただ、最近の二人はどこか慌ただしく、騎士団全体にピリついた空気が流れているのを感じていた。
何か大きな動きがあるのかもしれない。
「よし、そこまで! 結衣、今の踏み込み、すごく良かったわよ。剣の腕も目に見えて上達してるわ!」
模擬戦を終えたヒュリアが、眩しい笑顔で結衣の肩を叩く。
「……えへへ、ありがとう。ヒュリアちゃんの教え方が上手いからだよ」
最初はあんなに縮こまっていた結衣が、いつの間にかヒュリアと笑い合っている。
その光景を見ているだけで、俺の胸の奥も少し温かくなった。
「三人とも、精が出るね」
そこへ、天城がひょっこりと姿を現した。
「突然で悪いけど、君たちに団長殿からお呼び出しだ。少し、付き合ってくれるかい?」
俺たちは顔を見合わせ、天城の後に続いて団長室へと向かった。
重厚な扉の先には、相変わらず威厳に満ちたアネモス団長が待っていた。
「座りたまえ。……あの一件の傷も癒え、鍛錬に励んでいるようだな。今日は率直に聞きたい。――君たちは、この先どうしたいと考えている?」
アネモス団長は組んだ手に顎を乗せ、静かに俺たちを見据えた。
「望むなら、エクシアの市井で平穏に暮らせるよう、信頼できる者に口を利くこともできるが?」
それは、提示された「自由」だった。けれど、俺たちの答えはもう決まっていた。
俺は代表して、団長の目を真っ直ぐに見返した。
「そのことですが、僕たち三人で話し合っていたんです。……もし許されるなら、このまま騎士団でお世話になれないでしょうか。僕たちを救ってくれた天城さんや、親身になってくれた団長、ヒュリアさんたちに、少しでも恩を返したいんです」
続いて、結衣が静かに、けれど芯の通った声で言葉を繋ぐ。
「一度は国に捨てられた私たちだけど……同じように理不尽な思いをしている人たちの力になりたい。それに、王国に残されたクラスメイトたちにも、いつかもう一度会って、あの日をことを確かめたいんです」
「まだ力になれるか自信はないけど……俺たち、覚悟はできてます!」
澄人も力強く頷く。
沈黙が流れた。
……が、次の瞬間、アネモスと天城が顔を見合わせ、堪えきれないといった様子で笑い出した。
「ワハハハ! 天城、お前の言った通りになったな」
「でしょう? あー良かった。実は僕も団長も、君たちが騎士団に残ってくれればと願っていたんだよ」
天城がいたずらっぽく笑う。
「実は団長、君たちの訓練をずっと遠くから見ていてね。君たちが持つ『面白い力』に、かなり期待していたんだよ?」
「俺たちに、期待……」
その言葉が、どれほど俺たちの救いになったか。
王国ではゴミだと切り捨てられた俺たちを、この人たちは一人の戦力として、一人の人間として見てくれている。
「皆まで言うな、天城。……さておき、君たちが自らその答えを持ってくれたことを嬉しく思う。本日をもって、正式に君たちをエクシア聖騎士団に歓迎しよう」
アネモス団長は椅子から立ち上がり、誇らしげに胸を張った。
「我が騎士団はソルディアの軍隊ほど巨大ではないが、なかなかの粒揃いだぞ。他の団員たちは追々紹介しよう。……話は以上だ。存分に我が騎士団、ひいてはエクシア共和国での生活を楽しみたまえ! ワハハハ!」
団長の豪快な笑い声が、部屋中に響き渡る。
絶望の底に突き落とされ、全てを失ったあの日。
けれど今、俺たちの手の中には、新しく書き換えられた「可能性」と、信じ合える仲間、そして帰るべき場所がある。
俺たちの異世界生活は、ここから再び、力強く動き出した。
ついに再始動編完結!
王国を追放された渚たちは、エクシア聖騎士団の一員として新たな一歩を踏み出しました。
「ハズレ」の烙印を跳ね除け、彼らの本当の物語がここから始まります。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
切りの良い20話ということで、もし「この先の逆襲が楽しみ!」「三人を応援したい!」と思ってくださったら、ぜひブックマークや**評価(★★★★★)**をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!
次回、第21話からは新章突入! 3/6(金) 20:10 更新予定です。
魅力的な騎士団メンバーや王国のキーマンが続々と登場してきます。




