知らない場所、同じ顔
目を開けた瞬間、世界が書き換わったことを悟った。
空気が違う。
肌に触れる重さというか、肺に吸い込む温度というか――。
言葉にしづらい違和感が、そこがさっきまでいた場所ではないと告げていた。
「……どこだ、ここ」
誰かの掠れた声で、意識が強制的に現実に引き戻される。
視界に映ったのは、鈍く光る石造りの床と、威圧的なまでに高い天井。
壁には血管のように不気味な紋様が刻まれている。
教室じゃない。
学校ですらない。
「おいおい、ドッキリだろ?」
「いや、これ作り込みすぎじゃね?」
そんな強がった声が飛ぶが、どれも語尾が震えている。
本気でドッキリだなんて信じている奴は、ここには一人もいなかった。
周囲を見渡すと、そこにいるのは見慣れた顔ばかりだった。
クラスの連中。さっきまで同じ空気を吸っていたはずの人間たち。
少し離れた位置で、一人だけ異様に落ち着いている男がいた。
状況を値踏みするように、静かに周囲を見回している。
「……囲まれてるな」
低い声。生徒会副会長だ。
成績も素行も完璧で、こういう非常事態に無駄なパニックを起こさないタイプ。
「武装しているが、即座の敵意は感じない。少なくとも、今すぐどうこうされる気配はないな」
その冷静な分析に、周囲のざわめきがわずかに引いた。
誰かが状況を言葉にしてくれるだけで、人は縋ることができる。
確かに、俺たちを取り囲んでいる連中は異様だった。
剣、鎧、ローブ――。
映画やゲームでしか見たことのない、現実離れした光景。
完全にファンタジーの世界だ。
そのとき、ふと視界の端に動くものがあった。
少し離れた場所で、彼女が誰かに寄り添っている。
震えるクラスメイトに小さく声をかけ、その背中にそっと手を添えていた。
こんな極限状態でも、まず周りを気遣う。
そういうところは、本当に、驚くほど変わらない。
やがて、群衆の前に立つ一人の男が一歩進み出た。
「突然、このような形で招くことになり、驚かせてしまったな」
場が、凍りついたように静まる。
「私は、ソルディア王国国王、アルディオス・ソルディアだ」
国王。
その単語が、現実感をさらに一段階遠ざける。
「我が国は今、存亡の危機にある。それに対処するため、勝手ながら君たちをこの地へ召喚させてもらった」
ざわり、と空気が揺れる。
「早速で悪いが、君たち一人一人の資質を確認する必要がある」
資質。
その単語を聞いた瞬間、嫌な予感が胸をよぎった。
「これより、鑑定を行う」
簡潔な宣言。
誰かがごくりと息を呑む音が、静寂の中でやけに大きく響いた。
場所が変わっても、結局は同じらしい。
どこへ行っても、俺たちは価値や序列ってやつを測られる。
王国側の冷徹な視線が、値踏みするようにこちらを舐める。
期待と不安。
そのどちらともつかない濁った感情が、胸の奥で重く膨らんでいく。
鑑定の場へと続く視線が、静かに、そして残酷に向けられていた。
ついに王様が登場し、「鑑定」という不穏な言葉が出てきました。
どこへ行っても評価や序列がついて回る……渚たちの平穏はどこへ行くのでしょうか。
次回、ついにクラスメイトたちのスキルが判明します。
本日このあと18:10に第3話を更新します!
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