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可能性 ー藤原澄人ー

ヒュリアが示した「意志」の証明。その余韻が残る演習場で、天城が俺たちに向けて言った。

 

「さて、それじゃあ始めようか。まずは君たちの『ありのまま』を僕に見せてくれ」

 

三人が顔を見合わせる中、最初に名乗りをあげたのは澄人だった。

 

「……俺からいいですか。俺のスキルは『不火ふねん』。魔力で炎を蓄積して、それを放出することができるスキルです。でも、これ……ちょっと溜めるだけでも、すごく時間がかかっちゃうんです」

 

澄人は掌を掲げ、集中を始めた。

 

数十秒のチャージを経て、ようやくその手に炎が灯る。

それは昨日までの暴発しそうな危うさはなく、天城に教わった魔力操作によって以前と比べて安定していたが、勢いはまだ掌の上で激しく揺らめく程度に留まっている。

 

「なるほど。確かにとっさの瞬発力を求められる実戦には向かないね。……だけど、それは額面通りに受け取ったらの話だ」

 

天城はポケットに手を入れたまま、澄人を試すように見つめた。

 

「澄人。君はこのスキルを通して何をしたい? どんな『意志』をそこに宿らせる?」

 

澄人は少しの間、黙って自分の手のひらの炎を見つめた。

 

王国では、ただ「火が出るのが遅いゴミスキル」だと蔑まれてきた力。だが、今の自分には、魔力を操るという術がある。

 

「……『不火』が、溜めることに特化した装置だとしたら」

 

澄人の瞳に、知的な光が宿り始める。

 

「蓄積するってことなら、俺が限界だと思わなければ無限に溜め続けられるんじゃないか? それに、蓄積方法だって布団を圧縮するように小さく固めることもできるはずだ。……そうか、個包装みたいに、あらかじめ魔力をストックしておくこともできるんじゃないかな!」

 

「うんうん、いいね。その感覚だ」

 

天城が満足げに頷く。澄人はもう止まらなかった。可能性の奔流が、彼の頭の中で弾けていく。

 

「放出の仕方だってそうだ! ただバーって広げるだけじゃなく、針みたいに細く、ビームみたいに撃ち出すことだってありだよね。要はエネルギーの出口をどう絞るかだ。いくらでも工夫できそうだよ……!」

 

澄人の顔に、初めてワクワクとした高揚感が浮かぶ。

 

彼は実験するように、溜めていた魔力を丁寧に練り上げた。

それはただの火球ではなく、一羽の小さな、輝く火の鳥の形をとった。

 

澄人が手を放すと、その小さな命は鮮やかな軌跡を描いて空へと高く飛び立っていった。

 

それを見送っていたヒュリアが、優しく、けれど確信に満ちた声で言った。

 

「ねえ、見た? あんなに綺麗な火を見たのは初めてよ。……ハズレだなんて言った人たち、きっと後悔するわね」

 

「え、あ……ありがとうございます」

 

不意にかけられた真っ直ぐな言葉に、澄人は顔を赤くして照れ笑いを浮かべた。

 

空に溶けていく火の鳥を見上げながら、澄人の秘めた可能性は、今まさに翼を得て、高く飛び立ったようだった。

「不火」の真の価値は、その圧倒的な蓄積力にありました。

澄人が生み出した「火の鳥」は、王国への反撃ののろしとなるのでしょうか。


そして次回、ついに結衣の「無音」の再解釈が始まります。


次回、第18話は 2/25(水) 20:10 更新予定です。


三人の逆襲が本格化してきました!

面白い!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや**評価(★★★★★)**で澄人たちを応援してください!

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