具現化される意志
翌朝、朝露に濡れた演習場には、すでに天城とヒュリアが待っていた。
天城はいつも通り気だるげに俺たちを迎える。
その傍らに立つヒュリアは、朝日に白銀の髪をなびかせ、まるで一輪の花のような美しさを放っていた。
「昨日はよく眠れたかな? ……さて、早速始めよう。昨日少し教えたけど、スキルっていうのは魔力を特定の現象に変換するための『装置』みたいなもんだ」
天城は俺たちを一人ずつ見据え、自らの胸元を指さした。
「だが、その装置をどう稼働させるかを決めるのは君たちの意志だ。スキルがどう具現化するかは、使い手がその力をどう定義しているかに委ねられているんだよ」
俺たちが困惑していると、天城は隣に立つ少女に視線を向けた。
「ヒュリア、お手本を見せてあげてくれるかい?」
「いいわよ。……私のスキルは『聖剣』。名前の通り、魔力を聖なる剣に変換するスキルよ。見てて」
彼女が掌を広げると、光の粒子が集まり、一振りの美しい剣が姿を現した。
「これが基本の形。目に見える『意志』っていうのはこういうことよ」
ヒュリアが目を閉じ、魔力を高める。
すると、その手にある聖剣が陽炎のように揺らぎ、見る間に巨大化していった。さらに剣身からは逃れようのない圧力が放たれる。
「私の意志を持ってこの聖剣を大きくする。あるいは、もっと密度を上げてより強力な、折れない一撃に変えることもできる。ただ『剣が出る』だけじゃない、私が『どう使いたいか』が形になるの」
驚く俺たちをよそに、天城が薄笑いを浮かべた。
「そして、その本質はこういうことだ。……ヒュリア、よろしくね」
天城がゆっくりと片方の手のひらを天に向けた瞬間、ヒュリアの表情が劇的に引き締まった。彼女は弾かれたように、天城から大きく距離を取る。
「分かったけど、全力はやめてよね? あんたの全力を完全に止められる人間なんて、この世界にいるはずないんだから!」
その直後、天城の手のひらの上に、昨日の比ではない、太陽の如き巨大な熱球が出現した。
空気が焦げ、演習場の地面が熱波で爆ぜる。
それを、天城は無造作な動作でヒュリアへと放った。
――凄まじい轟音。
爆風に思わず腕で顔を覆う。
やがて凄まじい土煙が晴れると、そこには信じられない光景があった。
「やりすぎよ、天城!」
そこに立っていたのは、神々しいまでの白銀の鎧を纏い、身の丈を越える大剣を構えたヒュリアだった。
「え……なんで……? 剣のスキルじゃなかったのか?」
俺が呆然と呟くと、ヒュリアは大剣を肩に担ぎ、鎧を光の粒子に戻しながら言った。
「スキルは意志。つまり自分がそれをどう捉え、扱うかよ。私は『聖剣』というスキルを、単なる武器じゃなく『聖属性の物質を具現化する力』だと解釈したの。だから、こうして鎧として纏うこともできるわ」
三人の間に、衝撃が走る。
水で鏡を作るだけの『水鏡』
火が出にくいだけの『不火』
音を消すだけの『無音』
それらは本当に、鑑定官が言った通りの「ただそれだけ」の力なのか?
もし、俺たちの意志でその解釈を塗り替えることができたら――。
「さあ、始めようか。君たちのハズレスキルも、使いようによっては化ける可能性は十分にある」
天城の不敵な笑みと共に、俺たちの本当の修行が幕を開けた。
スキルは、使い手の「解釈」で進化する。
ヒュリアが見せた圧倒的な力に、渚たちは「ハズレ」と呼ばれた自分たちの力の可能性を見出します。
果たして3人のスキルの本当の姿とは……?
次回、第17話は 2/22(日) 20:10 更新予定です。
いよいよ覚醒回が近づいてきました。
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