表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/24

少女は嵐と共に

夕食後の騎士団宿舎、食堂の隅にある席。

わずかなランプの灯りの下、俺たちは今日一日で起きた出来事を反芻していた。


「……信じられるか? 王国が、資源のためにあの集落を襲ったなんて」


澄人がコップを握りしめ、悔しそうに声を潜める。結衣も静かに頷いた。


「天城さんの話も、アネモス団長の話も……嘘には聞こえなかった。私たちが教えられてきた正義は、なんだったんだろうね」


重苦しい空気が漂う。だが、その沈黙を切り裂くように、明るく凛とした声が響いた。


「あなたたちが例の集落の件で、天城が拾ってきた召喚者さんね。いろいろ大変だったみたいだけど、顔色は悪くないわね。ああだこうだ聞き回るより、直接会ったほうが早いと思って来ちゃった!」


声のした方へ顔を上げると、そこには透き通るような白髪を揺らした美少女が立っていた。


月光を閉じ込めたような髪、そして意志の強さを感じさせる瞳。

一瞬、食堂の空気が華やいだような錯覚に陥るほど、彼女は可憐だった。


「ごめんごめん、自己紹介がまだだったわね。私はヒュリア・アネモス。エクシア聖騎士団で1番隊隊長を任されてるわ。よろしくね!」


見たところ、俺たちとそう年は変わらなそうに見える。なのに、聖騎士団の隊長。

やっぱり、この人も「持っている側」の人間なんだろう。

天城と同じように、俺たちとは住む世界が違うのだ。


その気さくで屈託のない振る舞いに、俺は元の世界にいた頃の桜花を思い出した。


「……初めまして、アネモスさん。俺は渚。いろいろとお世話になってます」


俺が代表して挨拶すると、ヒュリアは少しだけ顔をしかめて、ひらひらと手を振った。


「あー、その『アネモスさん』ってやめてくれる? パパと呼ばれ方が同じなのは、ちょっと嫌なの。……ねえ、私たちきっと同年代よね? ヒュリアでいいわ。お友だちになりましょう!」


――パパ?

アネモス団長と親子ってことか。


俺が内心で驚いていると、隣で澄人が慌てて立ち上がった。


「えっ、あ、あのアネモス……じゃなくて、ヒュリアさんは、その、その若さで隊長なんて、すごいですね……!」


澄人は完全に彼女の美貌に当てられ、たじたじになっている。

顔を赤くして視線を泳がせる様子は、いつもの冷静な彼からは想像もつかないほどだった。


「あはは、ありがとう! 気づいてるかもしれないけど、アネモス団長は私の父よ。だけど、この役職が親の七光りだなんて思われたくないからね。これからも誰より精進していくつもりよ!」


腰に手を当て、胸を張して笑う彼女からは、嫌味のないポジティブなエネルギーが溢れていた。

自立した一人の騎士としての芯の強さが、その立ち姿から伝わってくる。


「それで、お友だちへ天城から伝言を預かってるの。『明日の朝からは本格的にスキルの訓練を始めていこう。王国からハズレの烙印を押された君たちのスキル、一度見せてくれ』ってさ」


天城さんらしい、どこか挑発的で、それでいて確かな自信を感じさせる言葉だった。


「正直、私も興味があるの。ソルディア王国に『ハズレ』と切り捨てられた力に、どんな可能性があるのか。……明日、私も稽古に付き合ってあげる。楽しみにしてるわね、渚!」


そう言い残すと、彼女はまた嵐のように去っていった。


ハズレと切り捨てられた力。


その言葉を噛み締めながら、俺は自分の手のひらを見つめた。

明日、俺たちは初めて自分自身の「力」と向き合うことになる。

新ヒロイン候補(?)、ヒュリアが登場しました!

団長の娘にして1番隊隊長。そんな彼女に「お友だち」と言われ、澄人はすっかり骨抜きに……(笑)。


そして次回以降、いよいよ「ハズレスキル」にフォーカスしていきます。

天城とヒュリアの前で、三人の力がどう変化していくのか。


次回、第16話は 2/20(金) 20:10 更新予定です。


続きを楽しみにしてくださる方は、ぜひブックマークや評価で応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ