倉庫の奥の、なにか
午後の授業が終わり、校庭に部活の掛け声が響くころ。
ユウトとセリカは、例の古い倉庫の前に立っていた。
「……で、なんで俺がこんなとこに来てんだ」
「だって、昨日も路地で不思議なことあったでしょ? これはその続きかも!」
「いやいや、ただの倉庫だろ。体育用具とか段ボールとか眠ってるだけの」
「逆に怪しい!」
セリカは身を乗り出して、半開きの扉をじっとのぞく。
中は昼間でも薄暗く、ほこりが舞っていて、独特のカビと木の匂いが漂ってきた。
「うわ、絶対コウモリいる」
「それはそれで冒険っぽいよね!」
「俺はリアルに苦手なんだよ!」
そこへ、サッカー部の男子が数人通りかかる。
「なんだ、探検ごっこか?」
冷やかされてユウトは赤面し、慌てて扉を閉めかける。
しかし――。
ガコン、と奥で何かが落ちる音がした。
「……な?」セリカがにやっと笑う。
「いや、ただの道具が倒れた音だろ」
「ふっふっふ。冒険者の“呼び声”ってやつだよ」
「勝手にRPG進めるな!」
仕方なくユウトも中をのぞくと、木箱が少しずれて通路のような隙間ができている。
暗がりの奥からは、かすかに冷たい風が流れ出していた。
「……なんで風が?」
「やっぱり、ダンジョン入口だ!」
セリカはうれしそうに足を踏み入れようとする。
ユウトは慌てて腕を引っ張り、
「待て待て待て! もし先生に見つかったら説教どころじゃ済まないから!」
「だって気になるじゃん!」
二人が小声で押し問答していると、チャイムが鳴った。
放課後を告げるあの音に、セリカは少し肩を落とす。
「……今日は撤退?」
「当然だ」ユウトは深くため息をつき、扉をそっと閉めた。
「でもな、なんか……気持ち悪い風だったな」
校舎の影が伸び、夕暮れの色がグラウンドを染めていく。
二人が背を向けると、閉じたはずの倉庫の扉が――ほんの数センチ、また開いていた




