夕暮れのシャッター通り
夕方の商店街。赤く傾いた陽に照らされて、シャッターを閉める音がそこかしこで響いていた。
「ふあぁ……学校終わって、バイト終わって、で……まだ歩いてる俺って何」
ユウトは、だるそうに肩を回しながら商店街を歩く。
「そう言いながら、ちゃんと付き合ってくれてるあたり、優しいよね」
隣でセリカがにやにや笑う。両手に買い物袋を提げている。中身はお菓子やら文房具やら、学校帰りに思いついたものばかりだ。
「お前が“寄り道していこうよ”って言ったからだろ」
「だってさ、この時間の商店街ってちょっと特別じゃない? 昼と夜の間、って感じがして」
「ポエムみたいなこと言うな」
そんな軽口を交わしながら歩いていると、ふとユウトが立ち止まった。
正面の通りが、夕陽に照らされてやけに長く、深く伸びて見える。
「……あれ、こんなに奥行きあったっけ?」
「ふふん。出ましたね、異世界スポット理論!」
「いや、別にそういうのじゃなくて。単に疲れて目がしょぼしょぼしてんだろ」
「ユウトはロマンがないなぁ。ほら、シャッターの隙間から光がもれてるの見えない? あれ、異世界の入口っぽくない?」
「……どう見てもコンビニの蛍光灯だろ」
セリカは笑いながらも、足を止めてじっとその路地を眺める。
夕陽と蛍光灯の光が入り混じって、確かに一瞬だけ不思議な色合いに見えた。
「でもさ、子どものころ“この時間帯は人外が歩く”って聞かなかった?」
「……あー、地元の迷信っぽいのはあったな。夕方に口笛吹くと変なのが寄ってくるとか」
「それそれ! きっと異世界から来てたんだよ」
「……はいはい」
やがて二人はスーパーの角まで歩き、セリカが袋を持ち替えながらぽつりと呟く。
「この商店街も、昔はもっと賑やかだったんだって。おじいさんが言ってた。
“夜になると、霧の奥にもう一つの通りが見えた”って」
ユウトは鼻で笑うように答える。
「霧の奥のセール会場か? ポイント二倍デーでもやってたんじゃねぇの」
「違うってば! ……でも、そういうのが今も残ってたら面白いよね」
二人が笑い合いながら歩き出すと、不意に商店街の電灯が一瞬だけ、夕陽と違う色で瞬いた。
まるで、どこか別の世界がほんのわずかに顔をのぞかせたかのように。
ユウトは振り返る。だが、そこにあるのは静かなシャッター通りだけだった。




