セリカの異世界オタク事情と、ちょっとした事件
(夕方の喫茶店「コトリ」。ユウトは窓際の席でスマホをいじりながらコーヒーを飲んでいる。セリカはカウンター席でノートパソコンを開いている)
ユウト「最近、急に涼しくなってきたな。夏の終わりって感じだ」
セリカ(キーボードを叩きながら)「そうだね。もうすぐ学校のテストもあるし、気が抜けないよ」
ユウト「俺? まあ、なんとかなるだろ……って感じだけどな」
セリカ「その“なんとかなる”精神、ちょっと見習いたいわ」
ユウト「お前は完璧主義すぎるんだよ」
セリカ「それは認める(笑)。でも、やらなきゃいけないことはちゃんとやるタイプ」
ユウト「尊敬はしないけどな」
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セリカ(ふと顔を上げて窓の外を見ながら)「ねえ、ユウト。今日また、あの“異世界スポット”がちょっと騒がしかったらしいよ?」
ユウト「……またその話かよ。セリカはほんとそれ好きだよな」
セリカ「だって面白いじゃん。調べてみたら、この商店街って何度も異世界と繋がってる記録があるんだよ?」
ユウト「お前の“異世界マニア”はさておき、今日のバイトはどうだった?」
セリカ「まあまあかな。でも、ちょっと変なことがあったんだ」
ユウト「変なこと?」
セリカ「店の灯りがチカチカして、あの常連のおじいさんがこんなこと言ってたんだよ」
ユウト「どんなことだよ?」
セリカ「“昔はこの街の空も青くなかった。霧の向こうの世界が見えてたんだ”って」
ユウト「……それ、ただの迷信だろ」
セリカ「でも、“隣の世界から来た”とか“時々こっちに戻ってくる”って話もしてて」
ユウト「おじいさんの妄想か、それとも異世界ネタにハマってるのか」
セリカ「どっちもかもね(笑)」
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(セリカが席を立ち、窓の外を見つめながら)
セリカ「外の空気、なんだかいつもと違う感じがする」
ユウト「……確かに少し静かすぎるかもな」
セリカ「気分転換も兼ねて、ちょっと散歩しない?」
ユウト「まあ、いいけど。いつもの路地だろ?」
セリカ「そうそう。あそこは雰囲気が変わるから気になるんだ」
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(二人は喫茶店を出て、ゆるやかな商店街の路地を歩く)
セリカ「あの猫、最近よく見かけるよね。まるで案内してるみたい」
ユウト「俺は猫に案内されるタイプじゃないけどな」
セリカ「まあまあ、ついてきてよ」
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(路地の奥で、猫が立ち止まり、壁に小さな“扉”がぼんやりと浮かび上がる)
ユウト「……おい、これって……」
セリカ(小声で)「これが今日の“事件”の始まりかもね」