チョコの謎と、少しだけ不思議な午後
(午後の駄菓子屋「たばた屋」。ユウトはレジにだらっと座っている)
ユウト「学校始まると急に静かになるの、ちょっとなあ」
セリカ(棚のラムネを整えながら)「今はみんな提出物に追われてるけど……それより、そうそう、あの“異世界スポット”がまたちょっと騒がしくなってるらしいよ?」
ユウト「……相変わらずセリカはその話好きだな」
セリカ「だって不思議だもん。うちの商店街、異世界と隣り合わせなんだから!」
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(セリカが棚をチラリと見る)
セリカ「そういえば、チョコレート補充したよね?」
ユウト「したはずだけど……あれ、見当たらないな」
セリカ「レジには記録ないし、ずっと棚にあったはずなんだけど……もしかして、また何か“異世界トリック”とか?」
ユウト「おい、冗談だろ?」
セリカ(ニヤリ)「冗談かどうかは……ね?」
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(二人は棚の奥を覗き込む)
セリカ「……あった! まるで迷子になってたみたいに、チョコが隠れてるよ」
ユウト「ただの見落としだろ」
セリカ「そうかなあ……?」
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(店の奥の古い柱時計の秒針が、いつもよりゆっくり動いているように見えた)
ユウト「なんだこれ、時計の調子でも悪いのか?」
セリカ「それとも、時間の流れがちょっとだけズレてるとか?」
ユウト「それはさすがにお前の妄想だろ」
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(ユウトはチョコを手に取り、肩をすくめる)
ユウト「まあ、こういうちょっとした不思議も、悪くないんじゃないか」
セリカ「うん、この街はいつも何かが少しだけズレてるから面白いんだよ」
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(夕暮れの商店街。風がのれんを揺らし、路地の奥に見慣れない影がふわりと揺れた気がした)