証拠品(?)
翌日の放課後。商店街の喫茶店「コトリ」。
ユウトは気だるげにアイスコーヒーをかき混ぜながら、ポケットから例の木片を取り出した。
「……で、昨日の倉庫でこれが出てきたんだけど」
「なにそれ!」セリカは椅子から乗り出すようにして目を輝かせる。
「やっぱり“向こう側”の遺物……! いや、“遺物”って言葉だとスケール小さいな。アーティファクト?」
「ただの木の切れ端だろ。ほら、机に置いといたら勝手にカタンって動いた……気がしただけ」
「気がしただけでも大事件だよ! 絶対そういう伏線!」
「お前の人生、ずっと伏線ばっかりだな」
セリカは木片をひっくり返したり、光にかざしたり、耳に当てたりしている。
「これさ、模様みたいなの見えるよ。古代文字っぽい。いや、魔法陣の欠片かも……」
「いやいや、どう見てもただの木目だろ」
「いや、木目に見せかけた暗号かも!」
「木工職人への冒涜やめろ」
そんなやりとりをしていると、カウンターのマスターが苦笑して声をかけてきた。
「君たち、また珍しいことやってるね」
「これ、大発見かもしれないんですよ!」セリカが自信満々に掲げる。
マスターは一瞥して、「ああ、それ多分、店の古い飾り棚の部品だよ。先週ちょっと壊れちゃってね」
「…………」
「…………」
気まずい沈黙。
セリカはしばらく固まったあと、妙に明るい声で言った。
「……ま、まあ、真実ってのは往々にして意外と地味なもので!」
ユウトは両手で顔を覆い、心底疲れたようにため息をついた。
「俺の緊張返せ」
店を出るころには、夕暮れが商店街をオレンジ色に染めていた。
ユウトはポケットの中で、あの木片を指先で転がす。
――ただの部品。そう思うのに。
どこか、ほんの少しだけ温かい気がしてならなかった。




