表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふつうと異常の間で  作者: まどろみ=アオ
12/13

証拠品(?)

 翌日の放課後。商店街の喫茶店「コトリ」。

ユウトは気だるげにアイスコーヒーをかき混ぜながら、ポケットから例の木片を取り出した。


「……で、昨日の倉庫でこれが出てきたんだけど」

「なにそれ!」セリカは椅子から乗り出すようにして目を輝かせる。

「やっぱり“向こう側”の遺物……! いや、“遺物”って言葉だとスケール小さいな。アーティファクト?」


「ただの木の切れ端だろ。ほら、机に置いといたら勝手にカタンって動いた……気がしただけ」

「気がしただけでも大事件だよ! 絶対そういう伏線!」

「お前の人生、ずっと伏線ばっかりだな」


 セリカは木片をひっくり返したり、光にかざしたり、耳に当てたりしている。

「これさ、模様みたいなの見えるよ。古代文字っぽい。いや、魔法陣の欠片かも……」

「いやいや、どう見てもただの木目だろ」

「いや、木目に見せかけた暗号かも!」

「木工職人への冒涜やめろ」


 そんなやりとりをしていると、カウンターのマスターが苦笑して声をかけてきた。

「君たち、また珍しいことやってるね」

「これ、大発見かもしれないんですよ!」セリカが自信満々に掲げる。

マスターは一瞥して、「ああ、それ多分、店の古い飾り棚の部品だよ。先週ちょっと壊れちゃってね」


「…………」

「…………」


 気まずい沈黙。

セリカはしばらく固まったあと、妙に明るい声で言った。

「……ま、まあ、真実ってのは往々にして意外と地味なもので!」

ユウトは両手で顔を覆い、心底疲れたようにため息をついた。

「俺の緊張返せ」


 店を出るころには、夕暮れが商店街をオレンジ色に染めていた。

ユウトはポケットの中で、あの木片を指先で転がす。


――ただの部品。そう思うのに。

どこか、ほんの少しだけ温かい気がしてならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ