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8羽目:銀の羽

「オレはギルドマスターの三影(みかげ)、ネコの獣人族(アニマリア)で職業は暗殺者(アサシン)だ、よろしくな。三影でもギルマスでも好きなように呼んでくれ」


 全身を漆黒の衣装で包み、口元にはマフラーを巻いているせいで表情はほとんど読み取れない。

 切れ長の猫目が印象的な、まさにクール系イケメンだが、その白銀の髪からぴょこんと覗く黒いネコミミと、背後でゆらゆら揺れる尻尾がどうにも感情を隠しきれていないっぽい。

 

 これ、歓迎されてるってことでいいのかな?

 獣人族って動物と同じように、体に感情が出るって芸が細かいなぁ、犬の獣人族だったらうれしい時すごいしっぽブンブンするのかな?


 「うふふ、私はサブマスターのまりんよ、よろしくね。人間族(ヒューマン)で職業はみんなの心と体を()()聖職者プリーストよ」


 やたらと癒すの部分が強調されていたような気がするけど、のほほんうふふと微笑む、聖職者というにはあまりにも大胆なスリットがスカートに施されているグラマラスなお姉さま。

 クリーム色の長い髪をふわりと耳にかける仕草ひとつで、思わず息を呑んでしまう。

 その瞳は柔らかく、声は甘く、まるで包み込むような優しさと、ふとした瞬間に垣間見える大人の色気が絶妙に同居している。

 これが“成熟した魅力”ってやつなのかぁ、と、思わず見とれてしまうのも無理はないね。

 

 ……ん?みぃさん何でちょっと目が怒っているの?


 「……この子が変態のルーイよ」

 

 「変態じゃないわい!どうも!初めまして!()()のルーイです!種族は人間族(ヒューマン)にしてみました!職業未定、鳥が好きです!よろしくお願いしまぁす!」

 

 違います、聞いてください、誤解なんです。と言わんばかりに両手を勢いよくピーンと伸ばして挙手し、名誉を挽回するため食い気味の早口で自分の紹介をする。


 「ぶふっ……!ンッる、ルーイちゃん、よろしくっ、な」


 今吹き出しかけたよね?クールぶってるけどギルマスめっちゃ笑いこらえてますよね?表情は見えないけれども、声と肩がマナーモードの如く震えてますよ?


 「ゴホン、えー、みぃが変な事言いましたけど……ゲームはほぼ初心者なので色々と質問しちゃいますが、ギルドに入れていただけたら嬉しいです!」

 

 「あらあら、堅苦しい事とか気にしなくていいのよ?うちのギルドは誰でも大歓迎だから。それにしても、いつも聞いていたけれど本当に仲良しなのねぇ、うふふ」

 

 とりあえずは通報されずに歓迎してくれるようで一安心だ、あぶなぁ~変態が第一印象にならなくてよかった……。


 「じゃ、さっそくお言葉に甘えて……ん?いつも聞いて?」

 

 「ギルマス早速だけどこの子にギルド承認飛ばしてあげて。ほら、ルーイ教えてあげるからこっちきて、はい、ここにお座りステイ承認にお手」


 おぉう、すごい早口じゃん。ってうちは犬じゃないわい!

 あ、ギルド《Silver Feathers》に加入しますか?って飛んできた。え?これ承認したらいいの?ハイハイ、ぽちっとな。おぉ、頭上のプレイヤーアイコンが銀色の羽のアイコンに変わった!

 次はハウス覚えられるね~ってだから犬じゃないわい!(2回目)


 あ、ついにギルマスがこらえ切れず吹き出した。机に突っ伏して誤魔化そうとしてるね?クール系かと思ったけど結構笑いの沸点低いな。

 まりんさんは片手を頬に添えて優雅にあらあら、うふふってみんなを見守っている、お母さんかな?まりんママァ、あの子が弄りまくるからちょっと抱きしめt……おっと殺気が隣から飛んできたような気がするので話題を変えようかな。

 

 「ねぇ、みぃ。ギルドに入ったはいいけど、うちは何からやればいいのかな?」

 

 「そうだね、まずはやりたい職業を決めるのがいいと思うよ、ステータス振り分けが変わっちゃうし。ルーイは何かやりたいことはある?」


 「んー鳥を愛でる以外何も考えてなかったからなぁ」

 

 「あらあら、じゃ鳥を愛でるってことならば鳥獣メインの召喚士でDEX上げとかどうかしら?契約成功率が上がるのと召喚獣に乗ったりもできてライドの際必要になるわよ」


 ギルドに来る途中でみぃが説明してくれた事をおおざっぱに思い出してみる。

 

  STRは物理の攻撃力

  AGIは素早く動ける

  INTは魔法の攻撃力

  VITは防御で守ったりする

  DEXは製造やテイムの成功率、乗り物とかに必要


 難しい動きとかできそうにもないし、魔法とかインテリっぽいし頭使うのはなしとして……そうなると消去法でSTR、VIT、DEXってところか。

 鳥ちゃんに乗りたいけど申し訳ない気持ちが大きくなるからDEXもなしかなぁ。エッグケッコーみたいにいっぱい受け止める方が性に合ってる気がする、というか受け止めたい、君たちの羽毛を。あと、受け止める際に必然的に埋もれる事も可能だから一石二鳥ではないだろうか?


 「よし!VIT上げる系にする!」


 拳で反対の掌をポンと叩き決意する。

 

 「え?それだと守る(タンク)職あたりになるけど、鳥とあまり関連ないんじゃない?」

 

 「大いに関連あるでしょ!むしろ最重要項目じゃん!突かれても、噛まれても、受け止めるのに防御いるじゃん。合法的に埋もれることもできるし!」


 「「「う、うん?」」」


 3人共ちょっと何言ってんだコイツ?って顔してません?


 「可愛い鳥ちゃんを自ら攻撃したり、乗ったり従えるのは何か違うなぁって感じてさ。だったら鳥のすべてを受け止めるためのVITこそ自分最強のステータスだって思ったの」

 

 「あー……なるほど、鳥愛が脳筋の方向に行きすぎているけど、守ったりする方がルーイらしいね」


 だから、古事記にも載っているとあれほど……え、それは誤視記(ごみき)だって?

 誤字×誤視×ゴミをかけ合わせて誤視記(ごみき)ってか!うまい!ってちがうわ!

 

 あ、ダムの崩壊のようにこらえ切れずに、ギルマスが膝から崩れ落ちて机の下でお腹抱えだした。

 うわ、あんなにゴロゴロ素早く転がれるんだ。暗殺者(アサシン)はAGIが高いからねって?そういう所でも素早さが適応されるの!?

 それじゃぁ、やっぱVITで鳥の全部受け止める以外ないわ、決定事項ですね!私は盾職になりまぁす!まだ見ぬ箱あるの鳥ちゃんたち!!君たちを全身全霊で受け止めるよ!


 そういえば、肝心のその盾職って一体どの職業ギルドに行けばいいんだろ?

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