表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/58

6羽目:要注意(仮)テロリスト

 古びた木の扉の上には、枝に止まるフクロウが描かれた手彫りの看板が吊るされているお店だった。

 

 《かふぇ ふくろうの木》


 扉を開けると、ほのかに香るハーブと焼き菓子の匂いが鼻腔をくすぐる。

 店内は温もりのあるフレンチカントリー風のウッド家具でまとめられていて、所々の棚や窓辺には、陶器や木彫りのフクロウたちが静かに並んでいて、まるでこの空間で寛いでいるようだった。

 外の喧騒から切り離されたような、どこか懐かしくて、心がふっとほどけるような場所だ。


 席に着くと羊皮紙で出来たメニューがどこからか、魔法の絨毯のようにふわりと飛んできて一気にテンションが跳ね上がる。


 ほわー!ファンタジー!と目をキラキラさせていると、みぃに「私のおすすめでいい?」と聞かれたので、おもいっきりお任せすることにした。メニューは羊皮紙でファンタジーなのにタッチパネルっぽい操作で注文しているあたり現代っぽさがある。


 しかし内装とか、めちゃめちゃ好みのお店過ぎるぅぅぅ!今日行ったカフェもそうだけどもさ!みぃさん、うちの好み把握しすぎてませんか?木目調が好きだからリアルの部屋も全部ウッド家具にしているから、よく泊まりに来ていたみぃならわかっちゃうか。


 そして、つい先ほど注文したばかりなのにも関わらず、すぐに品物が届くところもさすがゲーム世界ということか。


 カートを器用に押しながら、すいっと現れたのはまるでモリフクロウを思わせるふわふわの羽毛に包まれた子だった。

 首元には蝶ネクタイのような模様がくっきりと浮かび、まるで正装しているかのよう。

 その上、しっかりと給仕用のエプロンまで身につけているという徹底ぶり!ころんとしたつぶらな瞳は、どこか誇らしげで、でもどこか癒し系、美しかっこいいなんて言葉がぴったりすぎる。

 と、いうかそのつぶらなお目目サイコぅー!今すぐワタシは君が乗っているそのカートの取っ手に生まれ変わりたい。


「あ、通報ボタンおしますねー」


「こんな短時間でもう1度押そうとしないで?」


「だって、すごい興奮して舐めまわすように見ているから……」


「言い方ァ!そんな卑しい目で見てません!!てか、スイーツとカップもフクロウだ!かわいい!!」


 ふわり、ふわりと空中を漂いながら、香ばしい香りとともにマグカップが机の上へと舞い降りる。

 そのカップには、フクロウのシルエットが描かれており、うちの前にはブラックコーヒー。みぃの前には、ふわふわのミルクフォームにフクロウのラテアートが施されたカフェラテが静かに着地した。


 続いて、空間をすべるように現れたのは、二皿のイチゴモンブラン。チョコレートで愛らしい顔が描かれ、丸いフォルムでフクロウを見立てているようだ。

 そのスイーツたちもまた、念力に導かれるようにふわりと浮かび、テーブルへと並べられていく。


 ごゆっくりどうぞと言わんばかりに「ホッホゥ」と短く鳴いてからお辞儀をしてモリさん(モリフクロウだから)はカートを引いて下がっていった。


 んはー、こんなかわいいフクロウさん崩すのもったいない……!というか、どこにフォークを刺せばいいの?!と、ためらっていた。

「いらないならもらっちゃうよ?」と横取りされそうだったので、決死の想いでフォークを腹に刺して一口食べる。


 あ゛あ゛あ゛あ゛、フクロウさんごめんなさいいぃ!君のすべてをおいしくいただきますから!って、ふぁー!めっちゃ、おいしいー!

 これが幸福の味というやつ……!でも、お腹に……ウッ、拙者も腹を切らねば……!


「幸福と申し訳ないのと死を覚悟した顔がコロコロ入れ替わっているけど……ゲームとか、今のところ、どうかな……?」


「自分の足に違和感なく歩けるのもそうだし、郵便ハトさんも可愛すぎるし、ここもお店の空気感だけじゃなくて、コーヒーの香りとかケーキの味もめっっちゃ気に入った!森でふわザクされた時にも感じたけどフルダイブってこんなにも五感がリアルそっくりなの?!」


「ふふっ、ならよかった。郵便ハト気に入ると思ったからゲーム内メッセージで連絡しようと思ったんだよね。てか……最後のふわザクって何……?」


 チュートリアル後にエッグケッコーの殻の下が気になって捕まえたくだりを伝え、ついでに耐性と集中回復を獲得できた話をしたら呆れられた。


「武器なしでノンアクティブだろうとモンスターに向かっていくどころか素手で捕まえにいく人初めてよ……」


「オーストラリアの農場でニワトリの保定うまいねって褒められたからいけると思ったんだよねぇ」


 君、本当に初めてニワトリ抱きかかえたの?信じられない君はナチュラルチキンホルダーだ!とまで言われたんだぞぅ。生まれ持った天性がニワトリをホールドする事ってどうなの?とツッコミはしない、褒められたことは素直に受け取ります。


「そういうことではないんだけど、何か鳥バカ悪化してない……?」


 って頭抱えちゃった。

 リアルだと自然界とか個体に影響でちゃうけど、ゲームだしね!遠慮しないよね!あれだよ、ペットがあくびしてるときイタズラで口に指入れちゃうみたいな?それの気持ちに近い感覚なのよ。


「あ、そうだ。あとね怪しいNPCにもなんか指輪もらった!」


「怪しいって……でもNPCから物をもらうってのはよくあるけど、どんな指輪?」


 路地裏での出来事を説明をしつつもインベントリーにある指輪の説明をタップし、みぃにパネルを渡して読んでもらうが、目を見開いたと思ったら、頭を抱えて机に突っ伏した。


 もしかして要注意(仮)テロリストに該当してましたか……?

 いや、もしかして鳥リスト要注意人物か?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ