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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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51羽目:地下溶鉱都市《マグマの街ダンジョン》⑥

 フレイムグラットの体が苦しげに震え、赤く輝いていた表面が一瞬だけ弱まった。


 次の瞬間――


「ギュウウウウウウウッ!」


 フレイムグラットの体が再び赤く燃え上がり、内部から黒い煙のようなものが立ち上る。それは、赤い絵の具に黒を混ぜたときのように、ゆらりと渦を巻きながら体内に広がっていく。

 ……ってか、スライムって鳴くんだね?!


「これは……第二形態?!」


 まりんさんが叫ぶと、渦の動きがピタリと止まった。


「みんな、気をつけろ!何かくるかもしれん!」


 三影さんは双剣を構え直して、ボスの様子を探るが何も起こらない。

 遠距離攻撃で様子を探るため、きの子さんが氷のつららを放った。すると、先ほどよりも狭い範囲しか体表が凍らなくなっていた。


「魔法耐性が上がってるきの!」


「でも、まだ凍るなら数打てばええねん!それで削っていくで!」


 ジョンさんとツバキ先輩が再び合奏スキルを発動し、仲間たちは連携して攻撃を続ける。

 ギルマスの双剣、サブマスのメイス、みぃの風の刃が凍った部分を狙い、ゼリー状の体をパキンパキンと砕いていく。フレイムグラットの体はさらに縮み、黒く渦巻く中心部に、何かが浮かんでいるのが見えた。


「みんな、あれ見て!渦の中に黒い核みたいなのが浮かんでる!」


 体が縮んだことで、中央に黒く輝くコアが露出し始めていた。

 それはまるで心臓のように脈動し、黒い渦があばら骨のように、包み込んで守っているように見える。


「まりん、みぃちゃん、ルーイちゃん!コアを狙うぞ!」


 三影さんの声に応じて、呼ばれた者は一斉に攻撃態勢に入る。


「バフは任せて!【神楽共鳴】!」

「やったるでぇ!【セッション】!」

「もっと凍るきの!【氷河の嵐(ブリザードストーム)】!【氷槍連陣(アイスパイク)】きの!」


 フレイムグラットの体が、凍っていくのを皮切りに、4人がボスに向かって攻撃する。


「【ダブルアタック】!」

「えーいっ」

「【シールドチャージ】!」

「【ウィンドブレード】!」


 次々とスキルが発動し、凍った部分に向かって攻撃が集中して、次々と氷を割る音を立て体表が削れていく。

 1人だけ軽やかな掛け声なのに、ガシャバリィン!と凄まじい打撃音が聞こえた気もするけど……きっと気のせいじゃないよね……。


 赤い体表が削れていくたびにコアは奥へ、そして上へと移動し、最終的にはスライムの後頭部あたりで移動を停止した。

 やっぱり、スライム系にとって、プレイヤーから遠い位置がコアの安全地帯なのかもしれない。


「もう少しで届くで……!」


 ジョンさんの声が聞こえた、その直後――


 ゴゴゴゴゴ……!



 床が低く唸りを上げ、魔法陣が輝き出し、フレイムグラットの体がぼよんと宙に浮かび上がった。


「何が……っ、避けろ!」


 三影さんはその様子をみて、何か変化に気づいたのか、双剣を構え指示を飛ばした。

 すると、フレイムグラットの体がぶるりと震え、赤い球を発射し始める。

 うちは咄嗟に盾を構えると、赤い球が当たり、「ジュッ」と音を立てたのが聞こえた。


「第三形態は、遠距離攻撃かいな!しかも、音からして火傷もするやろ?!」


「ギョウウウウウウウー!」


 フレイムグラットは咆哮とともに、赤い球を自身の周囲に連続で発射したため、誰も近づけなくなった。赤い球が放たれるたび、地面が雨に濡れるように焼け焦げていった。


「これじゃ近づけない!それに、コアの位置が高くて狙えないじゃない……!」


「はわわわ、あのサイズじゃ、まだ全身凍らせられないきの!」


 ツバキ先輩ときの子さんから焦りの声が聞こえる中、うちはふと、三影さんなら届くんじゃないかと思い、声を上げた。


「三影さん!あの駆け上がるので届かない?!」


「ちょっと高さが足りない……!あと1メートル低ければ……」


 ……なるほど、つまり1メートル底上げすればいいんだね?


「じゃ、合図して!ぶち上げるから、駆け上がって!【反転 AGI】!」


 そう言い残し、1歩踏み出すと、景色がグンっと加速する。

 その少し前に黒い影が飛び出し、背後のうちに向けて親指を立てた。


「ちょ?!【神楽の舞】!」


 ツバキ先輩のスキルにより、白い光がさらに2人の足を加速させ、赤い球の間を縫って行く。


「【氷河の嵐(ブリザードストーム)】きの!」


 きの子さんは援護するように、フレイムグラットの前方が凍らせたので、目の前に降りそそいでいた、赤い球の攻撃が止んだ。だが、これも溶けてしまえばまた球の攻撃が降り注ぐ。


 1メートル程前方を走る三影さんから、カウントダウンの合図がでた。前で3本の指を立てて、1つずつ折り曲げていく。うちもその指の動きに合わせる様に声を出す。


「3、2、 1……!【シールドバウンド】!」


「【幻歩】!」


「【即席転写・氷インスクリプト・アイス】!!」


 盾を地面に叩きつけると衝撃が走り、三影さんの体がぶわりと舞い上がる。

 みぃがスキルを唱えると、空中を駆け上がる彼の武器には、氷の結晶の紋章が現れ、冷気のオーラに包まれていた。

 頭上を越えた時にコアを移動されたら意味がない、ここでボスの注意を引き付ける!


「【反転 VIT】!スイカやろー!べろべろばー!【挑発】!」


 つぶらな目はこちらをキッと睨みつけていて、飛び上がっている三影さんからは注意が逸れているようだ。そのまま彼はフレイムグラットの頭上を越え、移動することのなかったコアの前で体を半転させる。


「【ダブルアタック】!」


 1本目の剣がフレイムグラットの粘状の肉体を凍らせながら貫き、黒いコアに突き刺さると、鋭い音とともに亀裂が走った。


 パキン――。


 ひび割れたコアから赤黒いポリゴンが溢れ出し、2本目の剣が割れ目に突き刺さる。


 パリン――。



「グギョウウウウウウゥゥー!」


 砕け散ったコアとともに、灼熱の咆哮を響かせていたフレイムグラットの姿は、赤黒いポリゴンの残骸となって空気に舞い上がるように溶けていった。仲間で何かを成し遂げる、それがこんなにも心を震わせるなんて、初めて知った。


 心臓が脈打つ静寂の中、1つの通知音が響いた。



 ピコン。


 

 《ダンジョンボス:炎喰いのスライムロード【★★フレイムグラット】を討伐しました》

ボス討伐おめでとうー!のスタンプ、ブクマ、★をポチっとお待ちしております!

みんなの戦いっぷりへのコメントも募集中!


ちなみに、ここまで読んでいて予想はついてるかと思いますが、各キャラのちょっとした補足です。


三影さん:回避型双剣アサシン

まりんさん:半支援の殴りプリースト

ツバキ先輩:サポート型ダンサー

ジョンさん:バランス型バード

きの子:火力厨ウィザード

みぃ:製造型アルケミスト

ルーイ:タンク剣士

銀司:タンク兼火力パラディン

シオン:完全支援プリースト

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