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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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15羽目:なんの船だって?

 裏庭をあとにして3人で庁舎へ戻る。

 バンビーのあがり症も落ち着いて、よかったね、受付で見かけた時が懐かしいと、話していたそのとき——。


「あっ、バンビーくんごめん!用事思い出した!思い出させてくれてありがとう!また遊ぼうね!」


 そう言って、呆気に取られつつも、手を振ってくれるバンビーくんを置き去りにし、裏庭へダッシュで戻る。

 ガルさんまだ裏庭にいてよかった!探しに行くってなると大変だしね。


「ガルさん!あの……えーっと、登録窓口にいる受付の方、目……眼光がすごく鋭い方って、もしかして視力に問題があったりしますか?」


(目つきがコワイって言ったらよくないからね……)


「ほぉ……講習の時も思ったが、ルーイはよく周りを観察しているな。動体視力もすごいし、講習でダメージを流すために、少し後ろに引いたのはルーイとバンビーだけだったぞ。」


 聖人(まさと)さんの動画の話をしているときに、かなり動きについて言及していたから、バンビーくんも目がいいんだなぁ。講習の時は、煽り文句に気が向いちゃって動き見てなかったわ。


「ルーイの考えている通り、元は眼鏡をかけていて、最近壊れたらしいんだが特殊なものでな。遠くの町にいる職人にしか直せないんだ……しかも、あの頑固爺がなぁ」


 腕を組みながら、うーんと考え込むガルさん。


「でも君たちなら、案外気に入られるかもしれない。しかもその嬢ちゃんは錬金術師だろ?なら話は早い」


 そう言って、腰のポーチから小さい羊皮紙のメモを取り出し、さらさらと何かを書いて渡してくる。


「2人でこのメモを持って、お嬢の所に行って見せてやってくれ。」




 受付に行き、当人に声をかけると、肉食獣のような鋭い眼光がこちらを射抜く。


「ガルヴァンさんにこのメモを渡してと言われて……」


「……拝見いたします。小さいメモですね……」


 まるで、このメモが仇でもあるかのように睨みつける彼女に、そっとみぃから受け取った品を差し出す。


「あの、よかったらこれ使ってください」


「えっ!?これは……どうして私の目のことを?」


「最初に受付で説明を受けていた時、物をつかむときや、サインを指し示す位置とかがズレていたのと、時折眼鏡の位置を正すようなしぐさをしていたから、もしかして普段は眼鏡でもかけているのかなって」


「驚きました……まさかそこまで観察なさっていたとは」


「不便そうだったから、これくらいしか思いつかなくて。でも、みぃが用意してくれたから助かった!探すの大変だった?」


「講習もう終わったと思ったら『眼鏡探してほしい、代金は出世払いで!』なんて言うから何かと思ったけど、こういうことね。あれ、私が錬金術で作ったガラスだから、ほぼタダみたいなものよ。でも出世払いはしてね?」


 肩もみでもいいですか?あ、ダメですか……。

 あの十日で一里は辞めてください、じゃ一日一里?悪化してるやないかい!タダみたいなものじゃなかったのか!君は鬼畜の申し子かな?


 深々とお辞儀をして感謝する受付嬢。ふとアゴに手を当て、何かをぶつぶつとつぶやく。


「この方たちなら……もしかして、おじい様も認めるかもしれない……」


「ルーイ様、みぃ様。私、受付長のマリーと申します。突然で恐縮ですが、ファウストから西にある町『ブルンヴァルト』の錬金術工房で、この眼鏡の修理をお願いできませんでしょうか?」


 思い切った様子で頼み込むマリーさん。

 その言葉に、みぃが机に置かれた割れた眼鏡をじっと見つめる。


「この眼鏡、少し他と違うようね。私が作ったガラスとも異なるわ」


「はい。私は()()()()の影響で魔力のバランスが崩れ、右と左で視力に差があります。特殊な魔力を込めたガラスで視力を補正していたのですが……」


 なるほど、この世界では視力の補正も魔法に頼るのか。


「マリーさんが自分で行くことは難しいの?」


 素朴な疑問を投げかけると、彼女は申し訳なさそうに理由を説明してくれた。


「『ブルンヴァルト』までは徒歩で片道2日。往復で4日、修理も1週間ほどはかかるとみて、すべて含めると最低2週間は時間が必要になります。ですが今はギルドの人手が足りないので、長期で席を外すわけにもいかず……。でも新世界人のお二人なら、転送クリスタルをご利用いただけますので……」


 みぃ曰く、NPCはパーティーを組んでいても転送クリスタルを利用することができないようだ。

 かの戦い以降、魔力に傷がついているためクリスタルに拒まれるんだとか。ただし新世界人は戦いを経験していないため、穢れなき魂として神のクリスタルで転送できるんだって。

 そして、クリスタルは一度行って登録をしないと使えない為、行きは徒歩になるが帰りはすぐ帰ってこれるよとのこと。


「なるほどね、あそこは錬金素材が採れる森に囲まれた職人の町だし、錬金術と名がつくものはもちろん行くわよ!」


 ――《依頼クエスト:『マリーからのお使い』を開始しますか?》


 顔を見合わせた2人は、迷いなくYESを選択する。


「あ、それまではこの眼鏡で少しは見えやすくなると思うので、もう少しだけ辛抱してね!」


「お心遣い感謝いたします。こちら、工房までの地図と手紙になります。おじ……親方様にお渡しいただければ、きっとわかっていただけるかと。少し気難しい方ですが……。ルーイ様、みぃ様、よろしくお願いいたします」


 マリーさんから地図と手紙を受け取ると、マップにやじろべえのような印が刺さった。きっとやじろべえが目的の工房ということなのだろう。


「マリーさん、大船に乗ったつもりでまかせて!」


 ドン、と胸をこぶしで叩く。

 だが、それを見たみぃがぽつりと呟く。


「大船じゃなくて泥船の間違いじゃない?」


 そんなに脆くないやい!

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