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短編(両方あり)

オレオレ詐欺

作者: 裏道昇
掲載日:2024/11/25

思いついたので、勢いに任せて書きました。

あまり書かないタイプの作品ですが、よろしければ読んでみてください。

 今から二十年くらい前だったと思う。

 思い返せば、いわゆる『オレオレ詐欺』が流行した時期になる。


 ちょうど夏休みで、俺は婆ちゃんの家に来ていた。

 広い居間で俺が暇を持て余していると、不思議な電話が鳴ったんだ。


 みんな出掛けていたから、仕方なく俺が出た。

 えーと……アイツは何て言っていたっけ? 


 当時の俺は小賢しくて、どうにかして犯人の情報を引き出そうとしていた。

 そうだそうだ! あの頃は自分のことを『僕』って呼んでいたんだった。


「はい、山本です」

「あ! 山本!? 俺だよ、俺!」

「…………」

「あ、待って! 切らないで!? 本当だよ、本当に俺だよ」

「……お名前は?」

「あれ? 覚えてない? 俺だってば! 思い出してよ、寂しいなぁ……」

「んー……思い出せないですね」

「ほらほら! 誰か心当たりはないかな? 当ててみてよ!」

「特にないですね……あっ……そうだ、何かヒントは?」

「え!? ほ、ほら、お前、俺んちの犬のことが好きだろ?」

「犬ですか……犬の名前は?」

「シロって言うんだけど……ん? お前、何か書いてない? メモってる?」

「いえ、気にしないで下さい」

「本当に? すでに時間稼ぎを始めてない?」

「……僕の知り合いはそんな犬を飼ってないですよ」

「そんなぁ! ついこの間も近所の公園で……」

「僕はお婆ちゃんの家に来てるので、この近所の公園には行ったことが――」

「き、近所の公園で遠目に見かけたよ!」

「…………」

「婆ちゃん! そうそう、婆ちゃんだよ! 俺もお前の婆ちゃんを知ってるよ」

「………………」

「えーと、俺たちは婆ちゃんたちの……関係? で、知り合ったじゃんか」

「……………………お婆ちゃんは最近亡くなって」

「ああ、そうそう! 本当に残念だなぁ!」

「ごめんなさい、嘘です」

「ん、んー? 何か勘違いしてないか? 最近死んだのは俺の婆ちゃんだよ?」

「のらりくらりと……ッ!」

「何か言った?」

「……いえ」

「そんなことよりね? 嘘を吐いちゃダメだよ? 人を騙しちゃいけない」

「ど、どの口が……」

「もう良いだろう? そろそろ俺が誰か、分かってるんじゃないか?」

「分かりませんね。共通の友人や知り合いはいませんか?」

「え? えーと……な、渚ちゃん?」

「知らない人ですね……苗字は?」

「さ、佐々木?」

「……なるほど。苗字も知らないですね」

「あのさ、やっぱりメモってるよね?」

「どういう関係ですか?」

「あれ? 取り調べかな?」

「……どういう関係ですか?」

「渚ちゃんがお前のことを好きなんだよ! きっとそのうち告白される!」

「あの、誰なんですか? 渚ちゃん……」

「いやいや、良い娘だよ?」

「はぁ……もういいです。疲れました。これ以上は意味もないし、切りますよ」

「え!? せっかく俺が電話してるんだから、もう少し話そうぜ?」

「それじゃあ……」

「待って待って! 最後に一つだけ」

「…………」

「良いか? ちゃんとメモっとけよ」

「? ……何を」

「最近、俺の婆ちゃんが死んだと言ったな?」

「はぁ……もういい加減に……!」


「昨日だ。忘れるなよ?

 昨日、俺の婆ちゃんが死んだんだ」

 

 最後にそう言って、俺は受話器を置いた。

 思わず天井を見上げる。随分と傷んだ……婆ちゃんの家。


 まさか、本当に繋がるとは思わなかった。

 俺は古い固定電話から、この電話自体の番号に掛けたのだ。


 あの頃の会話を出来るだけ再現したつもりだけど、どこまで出来ただろう。

 ……俺の手には古く黄ばんだメモがある。

 

『犬の名前はシロ』


 数年後、うちで飼うことになる犬だ。

 名前は自然と決まっていた。


『お婆ちゃんの関係者』


 言うまでもないだろう。

 ……今も昔も孫だ。


『佐々木渚から告白される』


 高校で出会うことになる彼女だ。

 今も付き合っている。


 全て、俺自身のことだった。

 時間を掛けて、俺だけは気付けるように。

 

 これで良かったのだろうか?

 ……だが、こうする他にはない。


 この電話の後、俺は警察に通報する。

 そして……警察は強盗と鉢合わせるのだ。


 互いに気付いていなかっただけで、留守を狙った強盗に侵入されていた。

 今の電話をしている頃、ちょうど強盗は二階を物色していたはずだ。


 強盗は刃物も持っていて、俺が自分で通報しなければ危険だっただろう。

 この電話がなければ、死んでいたかもしれない。


 理屈は分からない。

 今も不思議で仕方がない。


 だが、間違いないことは。

 未来の『俺』が過去の『僕』を助けるための電話だったのだ。


 まさに『オレ』が電話を掛けていたのだ。


読んで頂きありがとうございます!

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