第二話 ガラスの国
アルが向かったのは母が行ったことがあると言っていたガラスの国「ビリア」だった。
この国、「ビリア」が、ガラスの国と呼ばれる理由はガラス産業が盛んだから、と言うのもあるが一番は…
「た、建物がガラスで出来てる!」
と言うことだ。
この国のガラスは少し特殊で、鉄と同じかそれ以上の硬度をしているのだ。
てっきりガラス産業が多いからガラスの国だと思っていたアルは放心状態になっていた。
そんなアルの元に一人の大柄な女性が近づいてきた。
「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。ちょっと帽子を取ってくれないかい?」
アルは、村で忌み嫌われていたので話し相手は母と妖精だけだった。
そのため人と話すのがとても苦手だったのだ。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?具合が悪いならウチで休んでくかい?」
「は、はぃ、」
アルは、返事でもうダメになったのか、白目を剥いていた
「さぁ、着いたよ。ここがうちの店、『ランセット工房』だ!」
その声でアルは目を覚ました。その目の前には白い屋根で青い壁に大きな文字で、lancet と書かれていた家があった。
「あ、あのぉ、あなたは誰?それと何で僕に声を?」
アルは恐る恐る彼女に尋ねてみた。
「あぁ、私の名前はミリアって言うんだ。声をかけた理由はアンタが星の子だから?かな、」
「あの、星の子ってなのなんですか?」
初めて聴く言葉に気になったアルが聞いてみると
「星の子っていうのはね、髪や目、肌が白くて夜空の一等星みたいな子だよ。お嬢ちゃんみたいな感じ、それで、星の子に会うと良いことがあるって言われてて、うちの旦那がいつか会ってみたいって言ってたんだ。」
「そうだったんだぁ、…よかった。」
白い人はこの国では良いものとして扱われていることにアルはホッとした。
「そういえば、お嬢ちゃんの名前、聞いてなかったね、なんて名前なんだい?」
「僕はアルって言います。それと、女の子じゃないんですけど…」
そう、さっきからアルはお嬢ちゃんと呼ばれていた。その事に少し不満があったようだ。
「お嬢ちゃんじゃないのかい!それは失礼したね、いやぁ悪かったよ。…話が変わるんだけど」
やっぱり、髪を切ったほうがいいかなぁ、アルはそう思いながら自分の髪をいじった。
「アルが良ければ、ウチで働いてくれないかい?旦那も喜ぶだろうから、」
アルは思ってもいなかったことを言われ、固まった。
「どうかな?それとも、アルは行く場所があるのかい?」
アルにはここに行きたい、と言う場所はなかった。なのでこの申し出は実にありがたかった。
「本当に、いいんですか?僕は役立たずですよ、」
「もちろん、いいよ!星の子は福を招くんだから、」
こうしてアルはランセット工房に住む事になった。