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ケツの崩壊途  作者: ピザピチ
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第一話 希望と悲劇の始まり


7月20日


セミと目覚まし時計がうるさく鳴り響き、カーテンの隙間から差し込む太陽の光で目が覚めた。


「やばっ、今何時!? 学校行かなきゃ!」

ベッドから飛び起き、慌てて時計を確認した。


「あ! 今日から夏休みだった」


ほっとした瞬間、腹部に落雷したかの如く激痛が走る。


稲妻の様な腹の音が鳴り響き、私はすぐさまトイレに向かった。


徐にズボンを下げ、何とか便座に座れた。


ふぅ、と一息付き思い切り臀部に力を入れたその時……



ナイフで切り刻まれたかの様な激痛が、肛門から脳まで全身に響き渡った。


「痛った!」


ああ……またこれか。


そう、私、便痔 切器(べんじ きき)はこの激痛に何度も悩まされている。


痔という一度収まっても、完治することはない病。


はぁ……なんで私ばっかりこんな痛みに耐えないといけないんだろう。


こんな世界間違ってるよ……滅んじゃえばいいのに。


と、ふと思った。










――その瞬間。



「じゃあ、その願い叶えてあげるプリ!」


トイレに一人で居たはずなのに、どこからか声が聞こえた。


「誰!?」

不安を呑み込み声を出すと、


いつの間にか知らない場所に居た。


どこだろう……。


辺りを見渡すと、私と同い年位の少女達が複数人、不安げな表情で怯えていた。


「これで全員集まったプリね」


ふざけた語尾の桃……?

いや、お尻だろうか……。


「ねえ、なにここ? あーし家でごろごろしてたんだけど。もしかして誘拐?」

「てか、尻が喋ってんだけど〜ウケる」


皆が疑問に思っていた事を、一人のギャルがお尻の様なマスコットに問いかけた。


「うるせぇプリな。今、説明しようとしてたとこプリ」

「あと、プリリンはケツじゃねぇプリ。プリンの妖精だプリ。野郎は黙って怯えとけプリ」



……プリンの妖精だった。


ことは置いといて、ここは大人しくプリリンとかいうマスコットの説明を聞こう。



「ここはプリルリランドプリ。おめぇら野郎どもにはここであるゲームをしてもらうプリ」


ゲーム……?あまり得意ではないから不安だな。


「安心するプリ。ここでのゲームはテレビゲームやボードゲームとは違うから、みんな初心者でうめぇも下手くそもないプリよ」


なんだ、それなら私もできそうかな?


「そう、ここでのゲームは生死を掛けた、デスゲームプリ」


デスゲーム……!?


そんな馬鹿な、ありえないそんな事……。


「ちょっと!どういう事!? マジ意味わかんないだけど!」


「そ、そうだよ〜!あたし家に帰りた〜い。うえーん」


みんな困惑してる。

無理もない。急にデスゲームをするだなんて言われるなんて……。


「あー、ほんとうるせぇプリな。ちゃんと最後まで聞くプリ」


なんなのこのお尻……!

困惑するのも無理ないのに……。


でも、取り乱しても何も変わらないのは事実だし、とりあえず話の続きを聞こう。


「ただ殺し合いをしろだなんて言ってないプリ。勝者にはちゃんとそれなりの賞品があるプリ。」


なんだろう……。

本当にそんな価値のある物なのだろうか……。


不安を感じながらも、きっとその品に縋るしか無いと心のどこかで分かっていた。


「なんと!勝者には皆が悩んでいる持病を完治させることができるプリ!」


「完治できないと諦めてた野郎ども……、ここに来れた事を感謝するプリ!」



……持病を、完治できる!?


それって、私の痔も再発しなくなるよう治すことができるってこと……。


もう、あの痛みに耐えなくていいんだ。


いやいや……!よく考えて!

その為には、このゲームに勝たなきゃいけない。

つまり、この人達を殺さないといけないってことだよね……。


私、人なんて殺したくない……。


でも痔は治したい……。



悩む時間はなく、お尻のようなマスコットの話は止まってはくれなかった。



「さあ、おめぇらヤる気になったプリか?」


「あ、そうそう忘れてたプリ。おめぇらが人を殺せるような力はない事はわかってるプリだから、特別に固有の能力を与えたプリ」


「使い方とか、どういう能力かわからないと思うから、今から説明書渡すプリね〜」


「これは誰にも見せちゃダメプリよ。見せようとした所で燃えるプリ。あと、読み終わっても燃えちまうから、ちゃんと読むプリ」


そうして配られた説明書をみんなはじっくりと見始めた。



私の能力……。



Suppository Gun



いや、読めないよ!!!


ガンってことは銃……?


えっと……さ、さぽーし……


読み方すら分からない私が、意味を理解できることもなく、諦めようとした時。


説明書を読み進めていると、座薬銃と書いてあることに気がついた。


何故英語で書いてあったのかは不明だが、変に格好つけないでほしい。


座薬銃はお世辞にも格好いいとは言えないが、理解することができて、少し気持ちが安らいだ。


とりあえず、まともに戦えそうな武器がきて良かったかな。


そう思いながら説明書を読み終えると、薔薇のように紅い炎が燃え盛った。


不思議と熱くはなく、まるで緊張と不安を和らげるかのような暖かさが心を包んだ。


「みんな説明書読み終わったみたいプリね」


「質問がある野郎は、今だけ聞くプリ〜」


優しいのか優しくないのか、よくわからないマスコットだ。


「ていうか〜、あたしらのこと野郎ってひど〜い!あたしたち女の子なのに〜。さいて〜!」


正直どうでもよかったけれど、直してくれるのなら直してもらいたい。


「おめぇほんと図々しいプリな。まあ勝手に連れてきたのはプリリンだし、そんくらいは許してやるプリ。しょうがないから女郎にしてやるプリ」


あまり変わっていない気もするけど、マスコットなりの気遣いなのかな。


「はーい!チームとか組んでもいいカンジ〜?」


ギャルが質問することは、毎回皆が気になっているであろう所をついてくる。


「いいプリだけど、情が湧くことを考えたらやめた方がいいプリね〜。」



「だって、結局は自分以外殺すプリだから」



やっぱり、殺さなくちゃいけないんだ。


現実から目を背けようとしても、これはただのゲームじゃない……。



「もし、誰も殺さずにいたらどうなるの?」


これまでなにも話さず、怯えた様子すら見せなかった一人の少女が問いかけた。


「それはプリね〜」









「世界が滅びるプリ」











――その瞬間、誰も殺さないという選択肢は消え去った。


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