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第十二膳 中間考査

 ついにこの日がやってきた。


「中間考査」

「うぉ、びっくりした。いきなり何だ?」

「いや、なんか言わなきゃいけない気がして」

「なんじゃそりゃ」


 中間考査当日、朝の教室は独特な緊張感に包まれていた。


 教科書と睨めっこする者、友人と問題を出し合うもの、絶望の表情を浮かべ必死に単語帳にかじりつく者。


 三者三様に直前勉強に勤しんでいる。


 そんな中、天使様はと言うと、友人と思われる女子と問題を出し合っていた。が、全部即答している。強い。


「梓人くん。自信のほどは?」

「今回は教えてもらう機会が多かったからな。流石に落とせない」


 高梨さんや北宮に教わった分を、無駄にするわけにはいかないからな。



「あぁああああああああ!」

「うるさいぞ蓮。いくら解答欄がズレてたからって泣くんじゃない」

「だってそのせいで英語だけ35点だぜ? これが泣かずにいられるか」

「ズレてなかったら60点だったのにな」

「言うなよぉ……」


 蓮、撃沈。英語で解答欄がズレてたせいで、30点近く落としている。一応赤点だが、あまりに不憫だったので、教師の温情により赤点補習は免除らしい。特別措置。


「それにしても梓人って普通に頭いいのな」

「今回はたまたま上手くハマっただけだ。次も上手くいくとは限らない」

「ストイックだねぇ」


 テスト結果で順位が張り出されており、今回の俺の学年での総合順位は十位。まぁ悪くはない。


 ちなみに高梨さんはと言うと。


「高梨さんすごいね! 学年一位取っちゃうなんて!」

「ほんとほんと。いつも頑張ってるもんね〜」

「はい。ありがとうございます」


 いつもの3割増しで生徒に囲まれていた。


 学年一位を取ったのだ。いつも以上に注目の的になっている。


「嗚呼、流石は僕の天使様! 今回は二位だったけど、次は勝って君を惚れさせてみせる!」


 天使様の前で跪いている金色野郎こと金崎は二位。相変わらず変な言動だが、意外と成績は良いらしい。


 喜ぶ者落ち込む者がいる中で、うちのクラスに一人の来訪者が。


「やっほー、れんれん! ついでに梓人くん!」

「ついでにってなんだよ」

「りんりんがこっち来るなんて珍しいじゃん」


 そう、蓮の彼女こと北宮花梨である。やかましいのが来た。


「二人のテスト結果が気になったから来ちゃいましたー!」


 来ちゃいましたー、じゃないんだよ。ほら色んな人がこっち見てるじゃねぇか目立ちすぎなんだよお前!


「んで、梓人くんとれんれんはテストどうだったの?」

「蓮は英語で解答欄がズレててめっちゃ落としてた」

「その話はもうやめてくれ……」

「あちゃー……でも他はそこそこ良かったんでしょ?」

「あぁ。おかげで数学は78点だった。俺の自慢の彼女のおかげだ!」

「もう、恥ずかしいからやめてよ〜」


 ちなみに北宮の数学の点数は92点である。


 この二人が生み出す独特の空間は、渦中にいる俺すら止めることは出来ず、収まるのを待つしかない。言わばゲリラ豪雨だ。


「さて、梓人くんの方なんだけど、まさか十位とはね。やるじゃん」

「北宮お前三位だろ。二年になるまでに絶対追い抜くからな」

「ふふーん。私は天才だから負けませ〜ん!」

「二人に負けてんだろ」

「う」


 蓮は、小さな声で「俺の彼女が俺といる時より生き生きしている」とか言ってメソメソしていた。


 なんで北宮が絡むと女々しくなるんだこいつは。



 その日、買い出しを済ませて家へ帰ると、お気に入りのクジラクッションを抱えた高梨さんが待ち構えていた。


「高梨さん?」

「……はい」


 あれ? なんだか高梨さんが不満げな顔で、心なしかムスッとしている。


 俺何かやらかしたか?


 ここ最近の記憶をまさぐるも、心当たりは無い。


「……梓人くん」

「へ?」

「梓人くんって、呼んでも良いですか?」

「ん? いや、え、きゅ、急にどうしたんだ?」

「昼間、隣のクラスの北宮さんが来て、あ、梓人くんのことを下の名前で読んでいたので、ちょっと羨ましくて……」


 え、まさかの嫉妬!? いや、嫉妬と言うには可愛すぎる。ダメだ、直視できん。


 そんな風に一人悶えていると、高梨さんが不安げな上目遣いでこちらを見ていた。


「その……ダメ、ですか?」

「いえいえ全然大丈夫ですむしろ梓人と呼んでください」

「やった! ありがとうございます、梓人くん!」

「ぐふっ」


 ま、眩しい。かわいいが具現化して飛んできた気さえする。


「じゃあ、俺もす、鈴音って呼んでもいいか?」

「……もう一回言って下さい」

「? 鈴音」

「……っ」


 もう一度名前で呼ぶと、照れてしまったのか両手で顔を覆ってしまった。しかし、見えている耳は真っ赤っかである。照れるくらいならリピートすんなって。


「じゃ、俺は飯作るから、鈴音はリビングで待っててくれ

「……っ、はい! 梓人くん」


 鈴の音と書いて鈴音。確かに、鈴の鳴るような声の彼女に、よく似合う名前だと思った。

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