表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々
9/214

第9話 手長エビ


うみねこが鳴いている



猫も近くで何匹か鳴いている。


ハルータ村は猫が多い。


バハラも猫が多いがこのハルータ村はもっと多い。


村民達は猫を大事にしている。


獲れた魚を良くあげているのを見かける。


猫が多いからかネズミ等見た事が無い。


猫達は野良だが地域猫でもある。


ウチのハンナは飼い猫だ。


ハンナには鈴付きの首輪が付いており、

動く度チリンチリンと心地良い音が鳴る。


子猫の頃から付けていたから鈴付き首輪を全く嫌がらない。


まぁとは言え最初に付けた時は、嫌がっていたが、

直ぐに慣れたもしくは諦めたとも言う。


おっ! 又獲れたそれとも釣れた?


今日は正に爆釣である

灯台の近くに小川が流れており

その小川には小さいながらも橋が架かっている。


ハルータ村は他に比べ川がやや多い。


村とバハラの間にある山々から綺麗な水が常に流れており川魚何かも種類は豊富だ。


他にもやや大き目の川もあり、

海魚、川魚、汽水魚と中々に漁業資源は豊富だ。


そして‥‥


おっおっ! 又釣れた。


本当に今日は調子が良いな。


昼飯食ってから暇だったので釣りに来た、

灯台での仕事は割りと暇な日が多い。


清掃こそ毎日行っているが

薪等の搬入やその他は毎日有る訳では無い。


まぁ、俺は管理責任者なので書類仕事もあるし、

微妙に仕事は多いのだが帝城に居た頃に比べれば仕事何てして無いに等しい。


つまり時間がある、暇と言っても過言では無い。


前任者もそうだが今迄居た管理者達はそこそこ忙しく、1日仕事になって居たようだ。


まぁ俺は腐っても特級官吏だからなぁ。


寧ろこの程度の仕事量では物足りなさ過ぎだ。


ここに赴任した当初は余りにも暇過ぎて他の仕事もついでにやったりしたがそれでも時間が余り倒した。


それを見かねてじい様連中が釣りにでも行ってこいって言い出した。


最初はそれってどうなん? と思っていたが

実際やる事が何も無いのだ。


その内暇さが過ぎてじい様連中の仕事を手伝ったりしてたが、ワシらの仕事が無くなると言って

やらせて貰えなくなった‥‥


最初は感謝してくれてたのになぁ。


まぁそんなこんなで仕事を終わらせたら自由時間になってしまった。



おっおっおっ! 又だ、又釣れた。


今日は手長エビを釣りにきた。


天気は曇り、曇りだが雨は降ってない。

手長エビ漁には絶好の日和だ。


何故か満潮でも無いのにバカみたいに釣れる、

橋は小さい、橋の下に入って釣るのは無理だが

横から橋の下辺りに糸を垂らす事は出来る。


あっ、又掛かった。


出掛けに取っ手付きのデカイ桶を持って出たのだが

クラインのじい様に笑われた。


曰く、そんなでっかい桶持ってってどうする?と。


今で三時間位釣ってるが100匹以上は釣れてる、余りにも釣れ過ぎて入れ物を追加で取りに行った位だ。


餌は干し肉とイカの切り身だが釣れ倒してる。


ま~た釣れた!


てか何で今日はこんなにも調子が良いんだ?

やっぱりアレか? 日頃の行いが良いからか?


あっ又来た!


桶には生活魔法で作った水を入れてある。

そして水もちょこちよこ入れて綺麗にしている。


桶に入れる時はクリーンを掛けて入れてるので

桶の中の水が綺麗だ、まぁ泥抜きも兼ねてるしな。


とは言え1日入れて泥抜きはしなくてはいけない。


俺は1日泥抜きしないとダメなんだ、

泥抜きはきっちりやらないと味に直結する。


楽しみだな、素揚げにして塩掛けて、

柑橘果汁掛けてもいいな。


考えたら堪らん! 酒に合うぞ~



ふと村とバハラを遮る山々が視界に入った。


あの山々に名前は無い、

ハルータの村民は山としか言わない。

もしくは灯台の山と言ったりしている。


灯台はこのハルータ村の灯台とバハラの大灯台の2つだけでは無い。


あの山々の海岸にやや近い山の山頂と、

ハルータとバハラの間の海岸沿いの灯台の計4つある。


山頂の灯台も海岸沿いの灯台も軍の管轄だ。


山頂の灯台は陸軍所属で、山灯台とか、山頂灯台と呼ばれている。


ハルータとバハラの中間にある灯台は、

海軍所属で海軍灯台と呼ばれている。


大灯台の篝火がだいたい150mの位置にあり、

バハラの大灯台は船の見張り台から見た場合、

約50キロ先から見える。


だが南方から向かう船等は主にだが、南方諸島からバハラに向かう船等はハルータの前にある山々によって遮られ大灯台が見えない。


だからこそ山頂灯台がある、

山頂灯台は約90キロ先位から見えると言われており

南方から来る船の道標となっている。


ならハルータの灯台、

そしてハルータとバハラの中間の海軍灯台は

意味が無いと思うがそんな事は無い。


南方から来る船や西方から来る船の航海士等は三角測量の要領で、山頂灯台、ハルータの灯台、

海軍灯台を見て自船の現在位置を割り出している。


それだけでは無く、

ハルータとバハラの海岸沿いは船の難所としても知られており、単純に海岸沿いの岩礁等に近寄らない為の目印ともなっている。


ハルータの灯台と海軍灯台は

海難事故等が起きた時に救助の役割を担っている。


じい様達が言うには救助活動は、

六年前にあったのが直近の救助活動だったらしい。


バハラの行政府でも事故の報告書は見た事がある。


救助活動には報償金が出る。


大した額では無いが漁師達は同じ船乗りとして

助けるのは当然だと言っている。


海の男のルールと言うやつだ。



海軍灯台は陸から行く事は出来ない、

正確に言えば非常に難しいと言える。


と言うのもあの山々の海岸沿い険しい地形であり、

ハルータから少し北に向かうと砂浜が無くなり、

岩が剥き出しになっている。


それはバハラ側も同じでバハラから南に少し行けば砂浜が無くなり、同じく岩が剥き出しの地形となる。


山の西側の海沿いは何故か険しい地形が続く。


その為、船を使わず海軍灯台に行くのは

北なり南なり険しい道を踏破しなければならない、

もしくは山越えルートもあるがこれも又、困難だ、

ならどうやって灯台を建設したかと言うと、


船で人や資材を運び時間を掛けてコツコツと作ったのだ。


海軍灯台は船着き場と海難救助用の船を留め置く

規模の小さな港もある。


海側の底を浚い岩を砕き削り、時間を掛け完成させた。


水に関しては山側から複数引いており、

水だけは不自由していない。


まぁ水源のある所を選び建設したから当たり前だが


海軍灯台の山側はその辺りだけ木々が生え、

緑も豊かで湧水が複数箇所湧いていた。

本当に小さいが滝迄ある。

施設を設置するのに絶好の場所だった。


山頂灯台も建設は時間が掛かった。

何せ道から作ったからだ。


それでも海軍灯台に比べればマシだった、

海軍灯台の建設がいかに困難を伴ったかは

帝城で報告書を見た事があるが中々にドラマチックで、面白い内容であったのを覚えている。


因みにその報告書を提出した上級官吏は後に、

大臣に迄出世していた。


いつの間にか日が落ち始めている。


持ってきた入れ物にびっしり入っている。

と言うか獲れ過ぎじゃないか?


何かちょっと怖くなってきた。


異常な位に獲れたぞ‥‥


どんだけいるんだよ?


「おーい守長、まだやっとるのか?日も落ち掛けとる、そろそろ帰って来たらどうだね?」


クラインのじい様がこっちに歩いて来た。


あっ‥‥

又掛かった‥‥



「なんじゃこりゃ~」


クラインのじい様が驚いている。


うん、そうだよなビビるよな。


て言うか俺自身が1番驚いている。


天変地異の前触れかって位に獲れたわ。


「守長、一体全体 何をしたらこんな獲れるんだ?」


「うん、俺が知りたいよ、天変地異の前触れかって位獲れたわ、本当何でだろう?」


「ひゃー えげつないなぁ どんだけいるんだ

初めて見たぞこんなに獲った奴」


「百以上はいると思う」


「いやいや、百で利かんじゃろ二百は居るんじゃ無いかコレ?」


感心したような、呆れた様な顔で、

じい様が桶を指差しながら首を左右に何度も振る。


色々考え事しながらやってたらいつの間にかこんなにも獲れたんだよぁ‥‥


「じい様お裾分けするけど要るよな?」


俺の言葉にじい様が困ったような顔をした。


「大丈夫かいのコレ? 呪われたりせんよな?」


おいおい、流石に呪われたりはしないだろ?

多分‥‥



夕日が地平線に沈み行く、美しい光景だ。



カモメが鳴いている。


今日も1日が終わりつつある。


明日の1日はどんな日になるのだろう?


ただ1つだけ分かっている事がある。


明日の食事は手長エビだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ