第81話 母の愛
カモメが鳴いている
朝の爽やかな風が吹き抜け 朝日が身体を包む
柔軟体操により身体にうっすら熱が帯びる。
うーん、朝のこの時間は本当に心地良い。
さてと、そろそろラジオ体操を始めよう。
あの独特の音楽が無いのは少し寂しいな、
まぁもう慣れはしたが、やはりあった方が気分が乗る、だが無い物は仕方無い。
実家でも今頃はやってるだろうな。
ラジオ体操は俺がやってるのを見て、家族や従業員もやり始めた。
最初はネイサンの朝の変な踊りと言われて居たが、何やかんやで皆やり出して、やり始めると調子が良くなると、結構好評になった。
この世界での、初めての熱い手のひら返しだったので良く覚えている。
家の家族は未だに、朝のネイサン踊りと言って居るが、あれは本当に止めて欲しい。
朝体操と言えば良いのに何で、朝のネイサン踊り何て言うんだろう?
因みにこの村でもやってる奴は多い。
最初は灯台守のじい様達が真似し出し、じい様達がやってるのをその家族が見てやり出して、徐々に村で広がって行った。
そしてあのロリババアも今頃やっているだろう。
最初は俺がやってるのを見て爆笑してやがったが、結局奴もやり出しやがった。
その点を突っ込んだら、
『存在そのものが罪のアンタがやって居たとしても体操に罪は無い、だが存在が卑猥なアンタがやってると体操も罪になるから止めて欲しい』
とか抜かしやがったから、奴がやってる最中に膝カックンしてやった。
当然奴はコケやがったが、あのババアは激怒して、本気で追い掛けて来た上、割と本気の殺意を持ち俺を追い掛け回しやがった。
まぁ当然逃げ切ったが、暫く奴は報復の膝カックンを俺に仕掛けて来て、かなりうっとうしかった覚えがある。
因みにこのハルータ村では、膝カックンは流行って無い。
あの忌まわしきカンチョー事件により、教えたら絶対に又ややこしくなると思ったからだ。
俺は学ぶ事が出来る人間だ、同じ過ちは繰り返さない。
それに膝カックンは結構危険でもある。
それで怪我でもしたらシャレにならない。
「守長は相変わらず身体が柔らかいな」
「ん、身体が固かったら怪我し易くなってしまうからな」
ジョージのじい様が感心したように言って居るが、武術をやってる人間にとって身体の柔軟性は基本中の基本だからな。
出来て当たり前の事であり、出来ないと話しにならんし、武人として成長出来ない。
まぁ子供の頃からやって居れば案外誰でも出来る、当然痛みを伴う訳だが。
俺も子供の頃は毎日泣きながらやってた。
子供は身体が柔らかいと言っても限度はある。
毎日 毎日、日々やり続ける事により身体の、関節の可動域は増えて行く。
そう、毎日激痛に耐え、泣きながらやれば誰だって出来る事だ。
俺を溺愛していた前世の母も、俺が泣こうが叫ぼうが、『お母さん嫌い』と俺に言われようが、決して容赦はしなかった。
俺の身体の柔軟性を広げる為なら、一切容赦無かった。
まぁ、嫌いと言われて悲しそうな顔をしていたが、それでも決して容赦はしなかった。
柔軟性がなければ怪我をするからであり、今ここで心を鬼にしなければ、将来余計危ない目に合う。
なので悲しそうな顔をしながらも、一切容赦は無かった。
俺が強くなればなるほど、それだけ俺の安全が増す、その為なら前世の母は鬼にも、悪魔にもなって俺を鍛え上げ続けた。
愛とは優しさだけで無く、厳しさも愛だと言う事なんだろう。
まぁそれでも武と言う意味でも、一番優しかったのはやはり母だった。
祖父母も叔父も一切容赦無かった。
特に叔父などは、地獄の鬼も裸足で逃げ出すのではないかと言う位厳しかったもんだ。
だが叔父はそんな事は無いと常に言って居たが、俺は嘘だ、信じないと言って居たが後にそれは本当だと知る事になる。
てか那由多流って何だよ、頭おかし過ぎだろ。
マジでイカレてる、そりゃ修羅揃いにもなるわ。
しかし何やかんやで祖父も大概だったな・・・
まぁそれを言い始めると祖母も何だが・・・
「イテテ‥‥」
「おいじい様あんま無理すんなよ、程々でも十分なんだからな」
「分かっとるよ守長、だが少しきつめにすると気持ち良いからなぁ‥‥」
「・・・」
もうジョージのじい様は‥‥
そんで後で痛いとか言うんだろう、何時ものパターンだよ。
てかラジオ体操は、そんな激しくやる物じゃ無いと何回も言ってるのに‥‥
まさかジョージのじい様もM気質何じゃ無いだろうな?
止めてくれよ、これ以上Mはいらんぞ。
「守長、あれから三日立ったが、軍人達はまだ帰れんのかの?」
「後四~五日は居るだろうーーーなっと」
「そうかーーヨイショっと まだまだ掛かるな」
「何か問題があったか?」
「いーーーやっと 何も無いなーーっと」
「そうかなら別に良いーーーか」
「守長、どんだけ身体が曲がるんじゃ‥‥」
幾らでも曲がるな、余裕 余裕、まぁじい様は軽く引いてるが、いい加減慣れろよな、もう何回も見てるだろうに。
「はぁ~ よっしゃ! 朝の体操も終わったし、飯 飯 飯、腹減った~」
「守長、何食うんじゃ?」
「ベーコンと卵とチーズだ、後パンだな」
ベーコンは薄切りを六枚と厚切りを一枚、薄切りは半分はカリカリに、もう半分はふっくら焼きで、厚切りはどうしようかな?
目玉焼きは‥‥
今日はじっくり焼きにしよう、三つ程焼くか。
パンはライ麦100%のしか今日は無いが、まぁ良いだろう、俺は前世から好きだったし、何より今日は焼き立てだ。
うん、楽しみだな、それにコーヒーで決まりだな、チーズは穴空き、前世で言うエメンタールチーズだが、これが又旨いんだよなぁ‥‥
まぁお値段がかなり高いのが難点ではあるが、俺は金に困って無いし全く問題無い。
しかしなぁ‥‥
チーズが高い理由が、作るのに仔牛の胃袋が要るからどうしても高くなるって話だが、確かにそれなら作る度に仔牛を潰す必要があるから仕方無いと思う。
てかそんな話、前世では聞いた事も無い。
この辺りは流石 異世界だ、そんな方法でチーズを作るんだから、それに加えて大量生産出来ないってのも高い理由なんだろう。
フレッシュチーズはまだ安いんだが、熟成させる必要のあるチーズはその様な理由で高いらしい。
そういやフレッシュチーズ最近作って無いな。
久々に作るか?
でもなぁ、自分で作ったのも不味くは無いが、自分で作るより買った物のほうが美味いんだよなぁ。
しかし何で熟成チーズは仔牛の胃袋が必要なんだろ?
本当不思議だ、前世とこの世界は違うから何とも言えないが、前世ではどうやって作ってたんだ?
前世では、この世界と同じ程度の文明の時ってどうやって作ってたか何て、気にした事なんて無かったが、転生した今になってその様な知識があれば良かったって思うよ。
そーすりゃ実家の商売の役に立ったんだがなぁ、後悔先に立たずだ。
今でも十分ではあるが、欲望に際限は無いって事なんだろうな。
「はぁ~ やれやれ、身体がすーっとするなぁ」
ジョージのじい様が気持ち良さそうに声を出すが、明らかにやり過ぎだし、後で痛いと言い出さないかやや不安になった。
本当にこのじい様は‥‥
「さっきも言ったが激しくやり過ぎだ、もう少しゆっくりやってくれ、倒れられたら大変だ」
「なんのなんのこれ位!」
「・・・」
もう‥‥
人数カツカツで灯台のローテーション回してるんだから、倒れられたら困るんだよ。
次代の育成しないといけないな‥‥
増員申請を出すか。
今の灯台守は皆年寄りだからな、何があるか分からん、じい様達が元気な今の内に次の世代を育てて行かなければ、灯台の事が分かっている奴が居る今の内に育てて行かなければ、ひよっこで回していく事になりかねん。
他から人を呼んでもこの灯台に慣れるまで時間が掛かる。
その現場で実際に働き、経験を積んだ奴は貴重だ。
経験は金で買える物じゃ無いし、経験を積むのも時間だって掛かるもんだ。
そうだな、今の内に準備しよう。
うん、俺が居る内にやっておこう、
まぁ又何時何処かに飛ばされるか分からんが、準備位は整えられるだろう。
まぁ、まずは朝飯を食ってからだな。
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