第63話 言語魔術師の暗躍と革命の木偶達
コーヒーが旨い
だが少し砂糖を入れ過ぎた
だがこれはこれで悪くない、たまにはいいだろう。
第二次カンチョー事件。
あれは間違いなく、あの襲撃失敗から始まった。
あれから何度か革命軍は襲撃し、そして全て失敗した。
当然アンナはきっちり報復した。
だが諦めず、奴等はアンナに同様の計画を立て、そして失敗を繰り返した。
子供達は当然の顔をして俺に相談しに来た。
なので俺は無言で執務室のドアを閉めた。
だが奴等は諦めが悪かった、ドアを叩き何度も俺を呼び、助けを求めて来やがった。
お前らは未来の猫型ロボットに助けを求めるメガネのポンコツ少年かと思ったが、突っ込んだら負けな気がして透明人間の刑に処した。
だが奴等、木偶共はしつこかった、余りにもしつこいのでガキ共を皆縛った。
縛っている間、俺は無言で縛る作業を進め、縛り終わると無言で村に連行した。
灯台から出る時、アレクサンドルのじい様と会ったが、じい様は俺の顔を見て何も言わずそのまますれ違った。
後で聞いた所によると、
『守長にこにこ笑いながら怒っとったから、こわーて何も言えんかった』
との事である。
俺は村に着くとアンナを探した。
アンナはジョンを泣かして居た、アンナは俺の顔を見ると『ヒッ』何て抜かして驚き、恐怖を浮かべていた。
失礼な奴だ、俺はにこやかに笑みを浮かべて居たと言うのに‥‥
『アンナ、コイツら好きにしろ、縄は後で返しに来い、分かったな?』
『あ あ あ わ 分かった・・・』
と言ったので奴等を引渡し、俺は灯台に帰った。
灯台守のじい様達に、ガキ共が来ても追い返す様に伝え俺は平穏と静けさを取り戻したが、あれ以来ガキ達は誰一人として来なかった。
アンナですら暫く来なかったぐらいだ。
俺が静寂と平穏を取り戻した頃、村ではアンナが度重なる襲撃に辟易として居たそうだ。
と言う様な事を後にアンナから聞いた。
アンナは木偶ごときに遅れを取る程ヤワでは無い。
しかし鬱陶しい物は鬱陶しい、なので結束し集団で来る奴等の分断を図った、いや謀った。
この辺りが奴等とアンナの違いである。
アンナは俺に聞かずともどうすれば良いのかちゃんと自分で考え、そして実行出来る頭を持って居る。
この辺りが無駄に頭が回ると言われる所以だ。
アンナはまず、木偶達が結束してる様で実はその結束に綻びが有るのを見抜き、そして利用した。
敵は分断して叩け、戦争の基本である。
まずそれぞれ固まって居た派閥と言える様な集団を上手い事言いくるめて互いに争わせ、更にそれぞれの派閥内を分断した。
これにより集団は二つに割れて、さらに互いに争わせて、そしてその二つの集団を更に分断し、烏合の衆にしてしまった。
正にアンナの言語魔術師としての面目躍如である。
そして分断から烏合の衆になった後は戦国時代、いや世紀末の世界へと変貌した。
子供達は今まではアンナにやられるただの村人でしかなかったが、今や立派な修羅へとなって居た。
村の此処彼処でカンチョーが繰り広げられる事となる。
一見すると子供達の元気な声が響き渡る活気のある光景だ、しかしその内容は酷いの一言である。
何せやってる事はカンチョーなのだから。
『カンチョー!』
そんなお馬鹿な声が村中で叫ばれているのだ。
アンナ等、新たな技を開発し絶対王者として君臨していた。
『高速カンチョー!!!!!』
『秘奥義! 流星カンチョー!』
本当にアホ丸出しである。
だが子供達は真剣だった、気を抜けば殺られる、カンチョーは決まると本当に痛い。
完璧に決まると悶絶する。
鍛えようが無い部分だから仕方無い。
そして殺られたく無かったら殺るしか無いのだ。
時に手を組み、時に裏切り、時に寝返りと、離合集散を繰り返し正に村は戦国時代の様相を呈して居た。
だがやってる事はカンチョーである。
そう、もう一度言う、ただのカンチョーだ。
だがそれを子供達は真剣にやって居た。
アホである、そう、ただのアホだ。
『カンチョー!』
そんな声が、デカイ声で響いて居るのだ。
軽い気持ちでアンナに教えた事がこんなバカ騒ぎになるとは・・・
だが俺は悪くない。
それは間違いなく言える。
空中窒素固定法は空気からパンを作り出したが反面火薬も作り出す。
正確にはアンモニアを作り出すが、化学肥料を作るか、火薬を作るかはそれを使う人間次第だ。
功罪色々あるが、それを発明した科学者が悪いと言えるのだろうか?
例えば鍛治師が鎌を作ったとする。
その鎌を使い草を刈るか、人を殺傷するかは使う人間次第だ。
そして人を殺傷した鎌を作った鍛治師が悪いと言えるのだろうか?
所詮はそれを使う人間次第なのだ。
俺は大層な事を言ってる自覚はある。
そして大層な例え話をしているが、話の元はカンチョーだと言う事を忘れてはいない。
大事な事なのでもう一回言う、この話の大元はカンチョーなのだ。
ガキんちょ達が、
『カンチョー!』
『七年殺し!』
『大カンチョー!!!』
等と村中で奇声を発して居るのは決して俺のせいでも、ましてや俺に責任等一切無いと言える。
俺は悪くない、だが人は事の発端は等と言い責め立てる。
俺が逆の立場なら間違いなく責める。
だがだからと言って、はいそうですね等と素直に罪を認める等と愚かな事はしない。
だって俺、悪くないもん、うん俺はカケラも悪くない、それに一応は逃げ道を作ってある。
官吏的保身の極みだが、ちゃんとその辺りは抜かり無い。
俺は村の中心部でハルータの村民達が大勢居る時にちゃんと種蒔きをしている。
『お前達そんなアホな事はヤメとけよ』
『お前等、下らない事はいい加減止めておけ』
『何時か大変な事になるぞ、俺は知らんからな』
『いい加減にしておけよ、俺は知らないぞ』
等々ときっちりと注意はしている。
コツは優しく言い聞かせる事だ。
決して怒鳴り声を上げてはいけない、但し村の大人達には聞こえる位のボリュームで主張、意見を述べる事だ。
どうせガキ達は怒ろうが怒鳴ろうが決して止めたりはしない。
俺は子供達に言い聞かせてるのでは無く、大人達に言って居るのだ。
これでもし何か合ったとしても、
『えっ? 俺言ったよね? 俺はちゃんと注意もしたし、止める様に言ったけど?』
と、言える事が出来る。
今の所、大人達の大多数が放置している。
だがもし何かあった場合、事の発端はと言う話しになる。
その時の為に前以て予防線を張っておいた。
これで俺を責め立てるのは難しいだろう。
寧ろ。
『お前達は放置しておいて、ちゃんと何度も注意した俺を責め立てるのは流石にお門違いではないか?』
『何度も注意した俺を責め立てる前に、自分の躾の不味さをまず反省するべきでは?』
『俺はちゃんと大人として何度も止める様に言ったが、その間お前達は何してたの? えっ? お前達も見てたよな? それともお前達の目は節穴か?』
と言う事が出来る、俺の考え過ぎと言われればそれまでだが、気のせいか、何となくだが後に騒ぎになりそうな気がするんだよな・・・
俺のこういう時の勘は当たる、特に悪い予感程良く当たるんだ、何もなければそれが一番なんだがさて、どうなるやら・・・
俺のそんな嫌な未来予想図等、関係なく、村では子供達による熾烈な争いが繰り広げられていた。
但しその争いの名はカンチョー争いである。
戦国時代も斯くやの醜い争いは続いていた。
離合集散、裏切り、手を組み、そして利用し合い決別し、又手を組み。
正に混沌、村は子供達にとって世紀末の様相を益々濃くし、日に日に争いは激化していった。
『カンチョー!』
そんなアホな声が連日響き渡り、日を増すごとにその声は増え、そして大きくなって行った。
俺はもしかしてギャグ漫画の世界に転生したのか? と思ったりもしたが深く考えない事にした。
考えたら負けだし、特級官吏として帝城で働いて居た時の事を考えると、とてもじゃ無いが笑えない様な事が多々あったからだ。
勿論笑える事も合ったが、洒落になら無い事が、笑い話に何か決してならない事が多かったと言うのもある。
そして俺にとっては今の村の状況は 出来の悪いギャグ漫画でしかないが、ガキ達にとっては真面目にカンチョーしているのだ。
だが終わりは何時か来る。
そう・・・
あの忌まわしきカンチョー争乱も・・・




