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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々
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第6話 ハンナとアンナと責任


カモメが鳴いている


我が愛猫ハンナに引っ掻かれ、

アンナがギャン泣きしている。


カモメが更に増えて鳴き声が凄い事になっている、

かなりうるさい。


昔見た鳥の大群が出てくるパニック映画みたいな光景を思い出した。


それ以上にうるさいのがアンナだ、

カモメの大群に負けない位声が大きい、

アンナは元々地声がデカイ、

常に腹式呼吸しているのか?

と言う位に声が大きい。


当然泣き声も大きい、肺活量も多いのだろう。


そういえばアンナは素潜りが得意だったな?


泳ぎも上手い、肺活量が多いのもその辺りに秘訣があるのかも知れない。


「ウワーン 引っ掻いた~

ハンナがハンナが引っ掻いた~

ハンナが、ハンナが引っ掻いた~」


何で二回言ったんだ? 大事な事だから二回言ったのだろうか?‥‥


いかんな現実逃避しても状況は変わらん。


アンナは右肩のやや下、二の腕辺りを引っ掻かれたようだ、引っ掻き傷は二ヶ所付いている。


傷の下辺りでクロスしていてやや歪なXになっているな‥‥


普通猫って利き手一本で、2~3回 叩きつけるように引っ掻くはずだが、ハンナのやつ両手使って綺麗にワンツー決めてたな‥‥


引っ掻き傷は薄皮が切れてうっすら血が出ている、

そこ迄深い傷では無い、まぁ顔じゃなくて良かった。


「アンナ見せて見ろ」


アンナの腕を取りじっくり見てみたが傷は浅い、

とは言えそのままにしておく事も出来ないな、回復魔法でも使えれば良いんだが、

生憎そんな都合のいい便利な魔法は無い、

お伽噺にはそんな物語もあるが現実には無い、とりあえず・・・


「アンナ 傷を綺麗にしてから水で流すから」

「水は染みるからヤダ!」


「水の方が治りは早いぞ」

「染みるから嫌!」


ハイハイさいですか、

まぁ俺としてはどっちも 掛かる手間は一緒だ。


クリーンを傷に掛けるついでにアンナの体全体にも掛ける。


傷口に二回、体全体に一回、合計三回掛けた。一回で十分なんだが魔力は売る程ある、三回掛けても魔力が減った感覚が一切無い。


うん、これならもし俺が攻撃魔法が使えたら

ワンマンアーミーが出来るな。

まぁ、攻撃魔法は一切使えないけど‥‥


アンナの奴クリーンを掛けたら

気持ち良さそうに「はひゅぅ」って 変な声だした。


アレ? これもう治ったんじゃないか?

傷口にやや熱めのお湯を掛ける。


「ハァ~」 アンナがおっさん臭い声を出す。

ん?‥‥ やっぱ治ったんじゃないか?


少なくとも痛みは引いたっぽいな‥‥


「アンナもしかしてもう痛くない?」


「いた~い こんな傷が付いたらもう、

お嫁に行けなーい、痛いよ~ 」


「・・・」


ホントか~? まぁ完全に痛みが引いた訳じゃ無いだろうけど、クリーンを掛けて、お湯で傷口洗ったら 痛みもかなり引いたんじゃ無いか?


「痛いよ~ こんな傷が付いたら

お嫁に行けないよ~」


「・・・」


この七歳児、傷と俺を交互にチラチラ見て来るんだが‥‥


「痛いよ~ 守長のハンナに! 傷、付けられた~」


「も り ち ょ う の ハンナに キ ズ

付けられた~ もうお嫁に行けない~

こんな傷があったらお嫁に行けな~い」


うん、コレもうそんなに痛くないよな。


「守長 ハンナは 守長の猫だよね?」

「うんそうだね」


「私、ハンナに引っ掻かれたよね?」

「うん引っ掻かれたね」


「痛かった‥‥」

「うん、痛いの痛いの~ 飛んでけー」


「女の子の体に傷付いちゃった‥‥」

「ちゃんと手当てするよ」


「女の子の体に傷付けちゃったら責任取らない

といけないんだよ」

「・・・」


ちっ‥‥ アンナの奴、今日は手強いな‥‥


何時もならとっくに怒ってるはずなのに・・・


「も~う 守長って鈍いな~ 責任取って

私をお嫁さんに貰って♪」

「あっ、無理今回はご縁が無かったとゆー事で」


「何で! ホントに痛かったんだよ

こんな変な傷だって付いちゃったし」


それは自業自得なのでは?

そう思ったが口には出さない。

言ったら絶対面倒な事になる。


「守長が私を傷物にしたんでしょ! ちゃんと、

守長が責任取ってよ! 」

「ちょっおま! ふざけんな! 誤解を招くような

事言うのを止めろや!」


コイツは何ちゅー事をほざきやがる!

只でさえアンナのせいで幼女趣味だなんて

一部で言われてんのに、

燃料投下すんのはマジでヤメろ。


村人の格好の噂になるだろうが!


守長が結婚もせず未だにあの年で独身なのは

幼女趣味のロリコンだからだとか。

少女趣味のロリコンだって

一部で面白おかしく言われてんだぞ!

コレ以上燃料投下して噂の拡大を図る、いや!

謀るのは止めて頂きたい。


俺が結婚して無いのもしなかったのも仕事が面白くて楽しくて、ずーっと仕事一筋だったからだ!


俺は帝都、いや帝城で、仕事と結婚した男だとか、仕事しか愛せない男だとか、女より仕事を愛する男とか、仕事と寝る変態って言われてたんだぞ!


最後のは単なる悪口なんだよな‥‥


でもなぁ‥‥ 本当に、仕事が楽しかったんだ。


仕事が楽しく、面白いと感じれるのは

幸せな事なんだよな‥‥

普通は生活の為日々の糧を得る為にやりたくもない、面白くもクソも無い仕事を嫌々やるもん何だからそう考えれば俺は幸せだったんだなって心から思える。


まぁ‥‥

そのせいでと言うべきか知らない内に

体も心も疲れきってたんだよな‥‥


完全な仕事中毒、ワーカホリック、いや‥‥


ワークエンゲージメントってのが正しいか。


とにかくまぁ仕事が楽しくって楽しくって

しょうがなかったからなぁ。


国の中枢に居て、

やればやる程結果が出るのは本当に面白かった


育成シミュレーションのゲーム何て目じゃ無かった、リアル育成シミュレーションだもんなぁ。


まぁ前世でも結構育成シミュレーションは好きだったし、それでだろうな。


「ねえ、ちゃんと責任取って、

私をお嫁さんにもらってね、約束だよ」

「・・・」


本当にこの七歳児は‥‥


「うっせーなぁ、じゃあアイスキャンディ

やるからそれでチャラにしろよ」

「・・・」


アンナが考え込んでいる、コイツは

アイスキャンディが大大大好物だからな。


俺が生活魔法を使えるのをハルータの村民達は皆知っている。


この季節は氷を欲しいと思っている村民も多いはずだ、だが誰も来ない、基本的にはだ。


こないだアンナが高熱出した時はソフィアばあさんが来たがあれは例外だ。


少しの熱ぐらいなら来ない、

ハルータの村民の暗黙の了解だろう。


どうも俺が居ない所で、多分村民会議か何かで決めたのだと思う。


何時もギャー ギャーうるさいアンナですら

俺に氷頂戴と言って来ない位である。

多分だが家で厳しく言われていると思われる。


まぁ、ある程度気軽な付き合いとは言え

俺は一応は官吏だ。


これでも一応はハルータ村の村長よりも立場は上の人間である。


実際法によって俺の立場は確立されている。


この村の村長はあくまで、ハルータの村民達が、

言い方は悪いが勝手に決めて勝手に言ってるだけとも取れる。


法によって村長の立場は認められている訳では無い。


とは言えそんな事言ったら誰が村を纏めるんだって話しになる。


なので慣習として官吏達もそれなりに扱う。


これは俺が前世の事があるから違和感があるだけで、この世界では寧ろ変に考えすぎだと言われてしまう。


実際問題として帝国は巨大だ。


周辺国を征する事で膨張して行った、異民族も征した。


新領土では反乱も何度も起きその度に鎮圧してきた歴史がある。


その為法によって村長の地位、権限を認めてしまうと反乱発生時における初期において反乱拡大を早める要因と思われたからと言われている。


まぁ、帝国から与えられた権限を使って武器や何かを集めて暴れられたら鎮圧するにも時間もコストも掛かるのは分かるがなぁ。


帝国は硬柔含めて行う国だ。


反乱も速やかに鎮圧するし手際も良い、

寧ろわざと反乱を起こさせて力を削ぐ位平気でやる国だ。


とは言え帝国が対外戦争、侵略を行ったのはもう70年も前だ。


それも国防上仕方無くやったに過ぎない。


まぁ侵略された国からしたらふざけんな!

って言われるだろうけど‥‥


防衛戦争ですら30年位前にやったのが最後だ、

帝国はとっくに膨張期を終わり安定期、

つまり政治の季節になっている。



「ねえ、守長! 又考え事してて

聞いてなかったんでしょ!」


アンナが又プリプリしながら怒ってる。

ここで『うん 聞いて無かった』何て言ったら

又々ややこしくなる、口は災いの元だ。


「いやいや カモメがうるさいなーって思って」


「それを聞いてないってゆーの!」


ちっ‥‥

誤魔化しきれなかったか‥‥


まぁ良い、

アンナめ、アイスキャンディに目がくらんだな?


「アイスキャンディで手を打ったんだろ?」

「‥‥ 2本」


「へっ?」

「だから2本で許してあげる」


「何で?」

何を言ってるんだコヤツは、何故2本なんだ?


「だって二回引っ掻かれたもん! だから2本!」

「・・・」


確かにそうだな‥‥

コイツ考えやがったな‥‥

納得の理由だ。


「分かった2本な」


俺の言葉にアンナが無茶苦茶嬉しそうに笑う。


「じゃぁね じゃあね あのね

レモンにはちみつたーくさん入れて~

お塩ちょっと入れたやつとー

夏りんごにー はちみつ入れて

干しいちじくきざんで

入れたやつ1本ずつがねイイの!」


リクエストが多いな‥‥

まぁたまには良いか、そんな日がたまには必要だろう。




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