第58話 時よ止まれ お前は美しい
星明かりの照らす中、目の前に縛られた女が居る
月の光を浴びて佇み縛られた女を見る
しかし酷い絵面だな・・・
何か最近 この様な場面が多いのだが‥‥
俺は転生して何をして居るのだろう?
うん、最近良く誰かを縛って居る気がするが、俺はこの様な事をする為に捕縛術を必死になって修行したのでは無いのだが・・・
前世の母が見たら何と言うだろうか?
『やーん 上手になったわよねー お母さん嬉しいわ、本当成長したわね~』
とでも言いそうだな・・・
うん、言うわ、間違い無く言うわ。
「はぁ・・・」
思わずため息が出た。
何なんだかなぁ‥‥
「ねえねえ守長、今から何するの?」
「・・・」
てか何でコイツは嬉しそうなんだ?
あー そうか、ドMだったわコイツ。
うん、だがまだ治療可能だ、コイツのドMは今ここで治す。
「おーい アマンダ、ついでにむっつりスケベ五人娘、そろそろ治療始めるから」
「ちよっと守長、何で私たち迄むっつりスケベになってんのよ!」
「そうだよ、むっつりでもスケベでも無いし!」
「酷い守長!」
「ジルは兎も角 私達は違うから」
「そうだよ、一緒にしないでよね」
何を抜かしてるんだコイツら、お前らもむっつりだよ、ついでに言うとスケベだ。
それを言うと五人娘達が ギャー ギャー言い出しやがった。
「お前ら静かにしないと縛るぞ」
うーん、見事に静かになったわ。
五人娘は皆お口にチャックし出した。
まぁ後ろ姿だからあくまで想像でしか無いのだが。
しかし・・・
アマンダは後ろ姿も絵になる、それに比べてむっつり五人娘ときたら・・・
ケツがデカイのが二人居るな。
「ねえ守長、皆の後ろ姿見ていきなり黙ったけど、どうしたの?」
「むっつり五人娘がいらん事 言わないか観察してた、後アマンダは後ろ姿も絵になるなと思って」
「守長私は?」
「縛られて喜んでる ド変態むっつりケツデカ貧乳スケベ娘」
「増えてるじゃない、何でよ!」
「いや、事実の羅列を述べただけだが?」
てかこの変態は何を期待してたんだ?
当たり前の事しか俺は言って無いんだが。
「何よ、アマンダ、アマンダって、アマンダを贔屓し過ぎじゃないの?」
「えっ? そうですが、それが何か?
だってアマンダは可愛いし、良い女だからな、少なくとも縛られて喜んでる変態や、むっつりスケベ五人娘より遥かに、いや、比べるのも烏滸がましい程 良い女だ」
「喜んで無いし、変態じゃ無い、誤解を招く様な事言わないで守長」
いやいやいや、おもっきり喜んでんだろうが。
何かもう手遅れの様な気もするが・・・
アマンダは 「守長ったらもう‥‥」 何て言ってる、可愛いやっちゃな。
むっつり五人娘は沈黙して居る、まぁ賢い選択だな、口を開けば縛られると思って居るのだろう。
うん、口を開いていらん事言ったら、俺はマジで縛るからな、沈黙は正しい。
「おい、既にやや手遅れ気味の変態、今からお前を治療する、とりあえず黙れ、ちなみに事の発端はお前らが覗き何かしたからだからな、それを忘れるな」
「ちょっと気になったから見てただけだよ、それとも見られてマズイ事してたの~?」
「・・・」
どうしよう・・・
猿轡噛ましたらコイツ喜びそうだよなぁ‥‥
まぁ良いだろう、すぐ終わるちょっとの辛抱だ。
「おいジル、俺の人差し指の先を見ろ」
着火の魔法を使い右手の人差し指の先に小さな炎を灯す、イメージは100円ライターの中火位だ。
それを左右にゆっくり揺らす、ゆっくり、ゆっくりと、ジルの視線がその動きに合わせて左右に動く。
左手で灯りを、懐中電灯をイメージし やや弱い光を付けたり、消したり、点滅させる。
「ねえ守長眩しいんだけど」
「そうだな、眩しいな」
もう少し光を弱めるか、規則的に、不規則に光を点滅させる、何度も何度も。
「ジル、覗きはヤメような、ダメだぞ」
「うーん、うん」
よしよし、順調だ。
点滅を早める、規則的に、そして時に不規則に。
右手に灯した炎を消してと、ジルの奴 少し眠気が出てきたな、そろそろか。
タイミングが大事だ、もう少し、後ちょっと‥‥
ジルの目がトロンとして来た、眠気が強まったかな? そろそろやるか。
ジルに猫だましをかます。
パァンと快音が辺りに響く。
俺の身体全体から光を、魔力を込めほんの一瞬だけ光輝かせる。
強い光だ、一瞬だがこの辺りが真昼の様に輝いた。
ジルを見ると呆然として居る。
「ジル今夜の事は夢だ、夢なんだ、起きたら全てが夢で忘れてる、ジルは忘れてる、夢は夢‥‥」
頸動脈を軽く圧迫する、素人がやれば危険極まりないが、俺は何度も前世でやったし、道場でやられた。
優しく、優しく落とす。
フッとジルの力が抜けた、落ちたんだろう。
渇を入れ、気絶したジルを戻すとボーっとしながら辺りをキョロキョロと見回した。
「アレ? 私何でここに居るの?」
「ん? 外の空気を吸いに来て立ち眩みしたみたいだな、少し座ってろ」
さて、五人組に言い聞かせておかねば、五人組はまだ後ろを向いていた。
ちゃんと言い付けを守って居る様だ、エライぞ。
「おい、ジルを連れて中に入れ、分かってると思うがいらん事を言うなよ、お前らは外の空気を吸いに来た、だがジルが立ち眩みを起こした、もう一度言う いらん事を言うなよ」
俺の問いかけに五人組が無言で頷く。
首が取れそうな高速頷きだな、まぁ良いだろうこれでジルの変態への道は途絶えた。
そう、被虐趣味の道は無くなったのだ。
但し貧乳とケツデカは現状維持である。
残念だがそちらは手遅れだ、俺では手の施し様は無い、不治の病だ、強く生きるしかない。
まぁ縛られて喜ぶ貧乳は居なかったんだ。
居るのは只の貧乳だけだ。
「さっ君達、ジルを連れて中に入りたまえ、俺はアマンダと楽しくお喋りに興じるのでな」
悪は滅び平和が訪れた。
悪は巣穴へと帰り、美しい星空は汚される事無く在り続けている。
「守長何をやったの? 変な魔法使ったの?」
「そんな訳無いだろ、大体そんな都合の良い魔法何て無いよ、ほんのちょっとお話しをして分かって貰っただけだ」
「本当~?」
本当の事です、そしてアマンダのジト目 とっても可愛いです。
「本当だ、お伽噺じゃあるまいし そんな都合の良い魔法何かある訳無い、大体だ あのまま行けばジルの奴、縛られて喜ぶ変態、しかも被虐趣味に目覚めた訳だが、完全に目覚めた方が良かったのか?」
「それは‥‥ うーん、そうよね、アレはちょっと どうかと思う」
「だろ? てか引いたわ、何でアイツ縛られて嬉しそうにしてるんだよ、しかも罵られてちょっと喜んでたじゃないか、アレは駄目だって」
貧乳ジルはドM、これは決して忘れてはいけない。
とりあえずあの貧乳とは距離を置こう、俺はそう心に誓った。
色んな意味で狙われたらたまらん。
あの七歳児だけでも手一杯なのに変態まで加わるとか混沌以外の何物でも無いからな。
君子危うきに近寄らず、逃げるが勝ちである。
「守長もしかして怒ってる?」
「というと?」
「いやほら、私とのお喋り邪魔されて‥‥
色々と言ってたじゃない」
「確かに俺は色々言ってたな、だが今日を逃すと次は何時又アマンダとこうしてゆっくり色々と話せるか分から無いんだ、そりゃ怒るだろ? それをあのむっつりスケベ共が邪魔しくさるから」
それから少しの間 沈黙が流れた。
だが嫌な沈黙じゃ無い、寧ろ心地良い沈黙だ。
二人で暫く夜空を見上げてた、その間幾つか流れ星が見えたが何時もより美しく感じたのは気のせいでは無いだろう。
「この村は流れ星が良く見えるなアマンダ」
「そうね、でも冬になったらもっと見えるわよ」
「うん、去年もそうだったな、流れ星は流星とも言うが俺は流星と言う呼び方の方が好きだな」
「素敵ね、流星って呼び方も」
又再び沈黙が流れた、チラッとアマンダの横顔を見たがやはり美しかった。
何時までも見続けられる。
見飽きる事等想像も付かない、ふとそんな声を思った。
「どうしたの守長、私の顔を見つめてたけど?」
「美しいと思ってたんだ、アマンダの顔は見飽きないな、そう思ってな」
「もう‥‥ 又そんな事を‥‥ 私‥‥ 本気にしちゃうよ?」
「本気にしてくれて構わないよ、おれは嘘偽り無く本気で言ってるからな、アマンダは美しい」
そんな困った顔すんなよアマンダ、くっさいセリフを言ったと自分でも思ってるんだから。
何か急に恥ずかしくなって来たわ。
「ねえ、何で守長が照れてるの?」
「いや‥‥ 本気で言ったが、くっさいセリフを恥ずかしげも無く言ったと思ったら急に恥ずかしくなって来た」
「「・・・」」
お互い笑い合った。
子供みたいに裏表無く、ただただ、二人共無邪気に笑い合った。
心地良い時間が流れて行く。
時間が止まれば良いのに、そんなベタなセリフを思い出した。
陳腐だが時間が止まれば、心からそう思った。
『時よ止まれ お前は美しい』
とある戯曲のセリフを思い出した。
今の気持ちを言い表すとしたら正に そのセリフが一番しっくり来るだろう。




