第55話 ドラ猫大佐
夜風が頬を優しく撫でた
夜空には星が輝き
目の前には美しい人が居る
素晴らしい光景だ、正に人生は斯くも美しい
そんな素晴らしい人生の瞬間を邪魔する無粋な乱入者、いや、闖入者どもが居る。
このドラ猫どもが‥‥
まさか俺が気付いて居ないとでも思って居るんだろうか?
うん、間違いなくそう思って居やがるだろうな。
バカめ! この程度の気配を察知するなぞ造作も無いわ、侮りおってからに‥‥
てかコイツら暇人か?
「守長どうしたの? 何だか怒って居る様な気がするんだけど?」
「そうじゃ無いよ、なぁアマンダ、この村は猫が多いよな?」
「うん、多いね、でもどうしたの突然?」
「いやな~に どうもさっきからドラ猫どもが居るみたいでな、躾が悪いみたいだから少しお仕置きしてやろうかと思ってな」
「?」
うん、アマンダが不思議そうな顔してる。
そうだよな、いきなりこんな事言われても訳分からないよな。
さて、ドラ猫改め好奇心旺盛な盛りの付いたメス猫どもに一つ教育してやろうではないか。
「アマンダ、俺が合図したら後ろを向いて目を閉じるんだ」
「どうしたのいきなり?」
俺が小声で伝えたからかアマンダも小声で聞いて来た、空気を読まない奴はこの場面で普通にデカイ声で聞き返して来る。
うん、ちゃんと小声で聞き返して偉いぞアマンダ。
「今から躾の悪い盛りの付いたドラ猫に教育してやるんだ、だから合図したらさっき言った通りにしてくれ」
「うーん分かったわ」
イマイチ納得して無いが素直に聞いてくれる様だ。
さて、お仕置きの時間だ、覚悟しろよ。
「おいドラ猫どもさっさと出て来い! 大豆の所とその建物の角からこっちを見ているだろ! 分かってるんだ」
・・・・・・・・・・・・
ほう・・・
俺の優しい思いやりのある呼び掛けをシカトとは中々どうして、根性があるじゃないか。
「それとも俺の勘違いか? もしかして只の猫、本物の猫だったりするのか?」
まぁそんな事は無いんだがな。
間違い無く人だ、上手い事 気配を消して居るが残念ながらまだまだだな、この未熟者どもが。
「ちょっと、守長にバレてるよ」
「しっ! ハッタリかも知れないし、静かに」
「逃げよう、そっと逃げたら大丈夫だよ」
コイツら・・・
小さな声なら俺に聞こえ無いと思って居るのか?
残念ながバッチリ聞こえている、大豆を植えて居る方からな。
「ちょっ‥‥ どうする! 猫の振りした方が良いかな? 何とか誤魔化せるんじゃ無いかな?」
「私鳴き真似上手いからやってみようか?」
これは建物の角だな。
てか鳴き声をマネしたら笑わない自信は無いぞ。
まさかと思うが本当にやらないよな?
しかしおかしいな‥‥
大豆を植えてる所に三人居るのは確実だ。
だが建物の角から覗き見て居る奴は二人だけでは無いはずだ、一人 声を発せず完全に気配を消そうとしてる奴も居るな‥‥
うん、建物側にも三人居る、計六人か‥‥
「ねえ守長、誰か居るの?」
「ああ、躾の悪いドラ猫が居るな、もしくは盛りの付いたメス猫かな?」
俺がアマンダに返事をした時だった。
「に にゃ~お」
奴等はまさかそんな、流石にそれはやらんだろうと思って居た事を、お前マジか! と言う様な事をやりやがった。
「「・・・」」
アマンダと二人思わず顔を見合わせた。
アマンダもマジかよって顔してるぞ。
うん、俺もびっくりだわ。
てか笑うよりもビックリの方が大きいわ。
マジかよ・・・
マジで猫の鳴き真似しやがったぞ・・・
これは建物の角に居る奴等だな。
正気か? マジでやるか? ベタ何てもんじゃ無いぞ、アホ過ぎだろう。
てか逆に怖いわ、笑えねーよ。
とは言え怖いからとこのまま見過ごせない、で無いとこれから又、同じ事をやられる可能性がある。
俺の癒しを邪魔されてはたまらない、なのできっちり わからせておかないといけない。
「さて、今から10数える内に出て来い、出て来ないと分かってるな? この盛り付いたドラ猫どもが、さてアマンダ、さっき言った通りにしてくれ」
多分だがこれで出て来ない気がする。
まぁ別に良い、何故ならお仕置きするのがメインなんだから。
「ちょっと不味いよ」
「でも出て行ってもマズいよ」
「逃げられないかな? どうしよ」
大豆組めが‥‥
逃げられるとは思うなよ。
「猫の鳴き真似もう一回してみようよ」
「いやもう無理だよ、でもどうしよう逃げられそうに無いんだけど‥‥」
「・・・」
建物組もか‥‥
逃がすかよ! まぁお仕置き決定は覆らないがな。
「10 9 8」
「ちょっと、どうする?」
「ヤバイよヤバイよ、どうしよう」
「・・・」
バカめ今更もう遅い。
「7 1 0」
「えっ いきなり0になった!」
ハイ、10数え終わったから刑執行。
密かに込めて居た魔力を解放する。
灯りの魔法を、辺り一帯を照らす様に。
「「「「「「ギャー! 目が目が~」」」」」」
「ハ~イ、10数えても出て来なかったからとりあえず灯りを発動させて辺りを照らしてみましたー」
うん、一応は手加減したから目は潰れては無い、だが眩しかっただろうなぁ。
前世のフラッシュバン、まぁスタングレネードをイメージして魔法を発動させたからな。
さぞや眩しかっただろう。
「アマンダ もう目を開けてこっち見ても大丈夫だぞ、目は大丈夫だよな?」
「私は大丈夫だけど、皆は大丈夫なの守長?」
「うん、大丈夫 大丈夫 いけるいける」
まぁ覗き見かましてたコイツらは、今も目を押さえて転がり回ってるけど 多分大丈夫だろう、多分な。
「ねえ守長、私には大丈夫には見えないんだけど‥‥」
「一応は手加減したからその内回復するさ、いけるいける、大丈夫大丈夫 問題無い」
「・・・」
アマンダが呆れた様に俺を見て居る。
まぁちょっと眩しかっただけだし、そんなに心配する程でも無いんだが‥‥
コイツらが転げ回って「目が~」何て言ってるからそう見えるだけなんだがなぁ‥‥
まぁ暫くしたら回復するさ。
しかしコイツらうるせーな‥‥
お前らは何処ぞの大佐かよ、まぁ悪は滅びると言う事なんだろうな。
「もう本当に‥‥ 後ろを向いて目を瞑れ何て言うから何事かと思ったら魔法を使ってこんな事するなんて‥‥」
「覗きをする様な奴が悪い、な、言っただろ、盛りの付いたメスドラ猫って、てかコイツら暇人かよ おいジルお前当番のはずだがまさかサボりか?」
コイツらまだ目を押さえて「目が~」って言ってやがる。
俺そんなに強く光を当てて無いんだけど?
あーそうか、ずっと暗い所に居て目が明るさに慣れて無くっていきなり強い光を浴びたからか。
それにこの世界の住人は前世の人間と違って、照明の灯りや光が弱いから尚更だな。
そうだった そうだった、まぁ別にどうでも良いなうん、しかしこの世界の人間には灯り魔法は効くな。
本当、効果覿面、効果絶大ナリだよ。
「う~ 目が~ 見えてるよね? 守長酷いよー いきなり0になるし、魔法使う何て~ 目が潰れたかと思ったよ」
「アホか! 覗きをする様な奴が悪い、このむっつりスケベがよ、このむっつり娘が!」
「だ だ だ誰がむっつりスケベよ、人聞き わ 悪い事言わないで!」
「うっせー むっつりジル・スケベが! お前は今日から むっつりジル・スケベに改名しろ」
「嫌だよそんなの! 私むっつりじゃ無いもん」
何がもんだよ、もんじゃねーよ、コイツ・・・
「お前なぁ、今の時間はお前、夜番の当番時間だったよな? 仕事ほっぽり出してサボって覗きする様な奴はむっつりスケベなんだよ! いや違うな‥‥ むっつりじゃ無く只のスケベか‥‥」
「ちょっと! 嫁入り前の娘に変なあだ名付けないでよね! 私むっつりでもスケベでも無いもん、うら若き乙女に変なあだ名付けないでよね!」
「ふっ・・・」
「あー! 守長が鼻で笑った、酷~い」
アホか鼻で笑うわ、何がうら若き乙女だよ、言葉の意味分かって抜かしてんのか?
「そうかそうか、うら若きむっつり乙女か、なるほどなるほど、言い得て妙ってやつだわ」
「ちょっと守長! これ以上変なあだ名付けないでよね! ふーひよう被害だよ!」
何がふーひよう被害だ、それを言うなら風評被害だろうが、大体意味も違うわ! てか事実だろうが。
「ちょっと守長、又鼻で笑った! 大体ね私サボって無いからね! ちゃんと順番変わって貰ってから来たからサボりじゃ無いし」
「胸張って言う事かよ、てか尚の事タチ悪いわ! このむっつり娘が」
コイツは‥‥
ギャー ギャーうるせーな‥‥
どうしてくれようか?




