第50話 地引き網
日差しが照りつけて来る
海に反射した日差しが少し眩しい
浜にはハルータの村民と軍人と官吏達が居る
朝飯の後 軍人、小物君にマーラに言った俺の案を伝えると大賛成してくれた。
どうも軍人達も携行糧食以外の物を食いたいと思って居た様だ。
そして軍人達も、救助者や船の残骸も欠片も見付からない為、士気が少し落ち始めて居たらしい。
そして小物君 事、アーサー・ウェリントンは嬉しそうだ、てか君の笑顔初めて見たんだが。
今までどんだけ緊張してたんだよ。
まぁファーストコンタクトがあれでは緊張もするか、だが君の自業自得だから仕方無いね。
「隊長殿は初めてですか?」
「はい、自分はバハラの出身で釣りなどはよくしていましたが地引き網は初めてです!」
そう、俺たちは地引き網、まぁ地曵網とも言うが、とりあえず食材の確保と気分転換の為に浜に集まり準備が終わるまで待機中である。
この浜、まぁ、ガジラが発見されたこの浜は地引き網に適した場所なのだ。
遠浅で海底に岩が無いので網も引っ掛かり破れる事も無いので非常にやりやすい。
このハルータ村はこの様な遠浅の地点もあれば、海底に岩が多数、まぁ岩だらけで牡蠣やアワビ、それにウニ等が居る場所もある、漁場としてはとても恵まれた素晴らしい所なのだ。
ハルータの豊かな海を支える非常に大事な場所でもあるし、何と言うかハルータはとても恵まれた漁村だ。
そしてこの地引き網だが、元々はこの世界には無かった。
10年程前に、俺がバハラ赴任を終え帝都に帰還した頃に、先帝陛下に気に入られて居た俺がお呼ばれされて、四方山話をして居た時に先帝陛下が大層興味を示され、やってみたいと仰られたのだ。
先帝陛下は地引き網を大層気に入られ、良く行きたいと仰られて居た。
だが残念ながら陛下は忙しい身で在られる、
残念ながらそこまで暇がある訳では無いなので、中々行けずよく俺に愚痴を仰っておられた。
あれから10年、地引き網は帝国中に爆発的に広まった、何せ広告塔が陛下なのだ。
それこそ貴族から平民に迄、あっと言う間に広まった、帝都の近くにある港町の周辺の漁村何かにはツアーが組まれ、連日観光客で大にぎわいになった。
それらの漁村では宿が数多く新しく出来て、観光客が落とす金で大変潤った。
今でも人気の観光旅行で、帝都周辺で地引き網に適した漁村等は中々に景気が良い様だ。
因みにこのハルータ村には宿が無い。
理由はバハラから遠いからだ。
バハラの住民は、バハラの北にある、近くの漁村に行っている。
街道が整備されても馬車なら半日は掛かるからなぁ、ちょっと遠い分、仕方無い部分がある。
とは言え船着き場を新たに整備すれば、ここにも観光客は来るとは思うが新たに造るとなると結構な金が掛かるから難しい。
今ある船着き場は民間用で無く、官用の為の物だから使え無い、なので新しく造らなければいけない。
まぁ申請すれば使えるが、申請と手続きは複雑な上に時間も掛かる。
そして観光用での使用はおそらく認められない可能性が高い。
しかしなぁ・・・
観光客がこの村に来れば潤うんだがなぁ・・・
まぁ今迄の生活とはガラリと変わるから、そんな物要らないと言う村民も居るだろうがな。
しかし本当、たった10年で爆発的に広まったよな、帝国の漁村では殆んどの村にある。
無い漁村を探す方が難しい位に広まった。
今では帝国以外の国にも広まりつつある。
今にして思えば、20年位前に実家の商会で部門を新たに立ち上げ、一括で取り扱っても良かったとたまに思う。
まさかこんなにも大ブームが来る何て思わなかった、まぁ現在実家の商会で取り扱っているのは、俺が前世の知識で作らせた逸品で お貴族様や富豪向けの品だ、地引き網の考案者である俺のアイデアで作られた逸品であるから、良いお値段にも関わらず結構売れている。
因みに先帝陛下にも献上したが。
『サリバンよ、コレを使ってみたい、何とか時間を作り余が行けるようにせい』
何て無茶振りされたっけなぁ・・・
『流石にそこまでの権限は無いですし、方々にお叱りを受けますので・・・』
って言ったけど、駄々っ子みたいに行きたい行きたいって仰られてたなぁ‥‥
陛下が行くとなると、それは御行幸となり、
準備や道中の警備、その他諸々で大事になるから中々気軽に行けないんだ。
大体陛下は暇じゃ無い、執務がそれこそ分刻みで詰まって居る。
まぁとは言え、たまにやる気が無くなって四方山話に付き合わされて居たが・・・
しかし陛下は何故あんなにも嵌まられたんだろう?
しかも自ら、楽しそうに引かれてたからなぁ‥‥
『サリバンよ、違う掛け声は無いのか?』
そういやあったな、そんな事が・・・
俺も悪ノリして‥‥
『されば、陛下のた~めな~ら エンヤコラ は如何でありましょうか?』
『フム・・・ 面白いな、良しその掛け声でやろうではないか』
うん・・・
陛下もあの時テンションが可笑しかったからか、あの掛け声でやったな‥‥
てかあの時、陛下だけで無く、大貴族と言われる方達も面白いって言ってあの掛け声でやったが、大盛り上がりになったんだった。
そうだ、陛下や貴族だけで無く、閣僚の一部や軍人、官吏が皆テンションが可笑しかった。
童心に帰ったんだったな。
『サリバンよ、他に掛け声は無いのか?』
『されば下々の者の掛け声は如何でしょうか?』
『ほう‥‥ 言ってみよ』
『はっ! されば、 かーちゃんのたーめなーらエンヤコラ! かーちゃんのためな~ら ソーリャソリャ は如何でありましょう』
『うむ! それで行こうではないか』
うん、本当にそれでやったからなぁ。
しかも陛下を始め皆がだ。
普段そんな事を決してやらない様な人までが嬉々としてやって。
何時もムスッとした顔してるのにあの時は本当に楽しそうに、嬉しそうに引いて、子供みたいに笑って楽しんで、思わず二度見したわ。
だがまぁ実際楽しかったな・・・
獲れた魚も美味かった。
陛下が一番先に選ばれたが、イワシを選ばれたのはびっくりしたよ。
『何を言う、イワシは新鮮で無いと口には出来ぬのだぞ、塩漬けにした物で無く、この様に新鮮なイワシ等ここで無ければ口には出来ぬ、ならばイワシを選ぶであろう、他の物は大概は口に出来てもコレは皇帝である余でもここでしか食せぬのだ、余はイワシが良い』
まぁ確かにそうなんだよなぁ。
氷がたっぷりあれば、塩漬けでは無く生のまま帝都まで運べるが、生きてる活きの良いイワシはあそこでしか食え無い。
イワシの塩焼きやカルパッチョにマリネ、フライや、つみれスープを美味しそうに食べて居られた。
まぁ俺が思いっきり魔力を込めて、魔法で除虫したりクリーンを掛けたりしたから陛下は口に出来たが、そうでなければ生のイワシ何か口には出来なかった。
まぁ周りから生食は反対されまくってたが、
陛下が『サリバンの魔法であれば大丈夫だ!』
って、強引に認めさせたんだ。
俺の事を信じて頂けたのは嬉しかったが、責任重大過ぎて、何十回と魔法を掛けて陛下に叱られたなぁ‥‥
『サリバン、やり過ぎであるぞ! もう良いそれだけ掛ければ十分だ、早く持って参れ』
って、直接足を運ばれて言われたなぁ‥‥
まぁ確かに自分でもやり過ぎだとは思ったが、万が一の事を考えたら ついついやってしまったんだ。
『サリバンよ、そちはどれだけ魔力があるのだ、ほんに底無しであるな‥‥ まぁ良い、早く持って参れ 余ははよう食べたいのじゃ』
陛下は本当に美味しそうに、嬉しそうに口にされて、ご機嫌だった。
ペロッと全部食べて、おかわり迄して、
『うむ! 余は満足じゃ』
って仰られた時は思わず笑いかけたよ。
まぁ不敬になるから唇を噛み締めて我慢したが、そのネタは誰にも分からないし、そうであったとしても笑う何て不敬にあたるからな。
「あの~ サリバン卿、如何されましたか?」
「いえ、先帝陛下と地引き網を行った時の事を思い出しまして」
「先帝陛下ですか?」
小物君がびっくりしている、まぁ皇帝陛下と地引き網をした何て聞いたら、そりゃびっくりもするか。
「ええ、先帝陛下は地引き網を大変好まれて居られましたから、よくお供として」
「それは‥‥」
まぁ絶句と言うか、言葉にならんよな。
だが嘘でもハッタリでも無い、事実だからな。
楽しい思い出だよ、何やかんやで本当に楽しかった。
陛下には色々振り回されたりもしたけれど、
それでも今では楽しかった思い出だ。
出来ればもっと長生きして頂きたかった。
あれだけお元気だったのに、
まさかお隠れになられるとはな・・・
「サリバン卿?」
「ああ失礼、隊長殿そろそろ準備が終わりそうですよ、我々も頑張って引きましょう、おかずの追加の為にね」
「はっ! 気合いを入れて引きます!」
ん、元気があって宜しい。
さてと、
「よし! 皆、気合い入れて引くぞ」
「「「「「「「「「おう」」」」」」」」」
さて美味い魚の為に一丁頑張りますか。
何時もお読み頂きありがとうございます
面白かったらブックマークをお願いします
それと下にある評価もよろしくお願いします。
続きが気になると思っていただけましたら
ブックマークや評価をぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある
【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。




