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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々

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第43話 その官吏の名は轟く


サリバン卿がこの場から去り


この若者と二人、暫し沈黙が流れた


助かったのはめでたいが、この若者からすれば

1人助かってしまった、仲間の事を思えば‥‥

そんな所か。


いかんな、このままでは‥‥


『あー 君の事はガジラと呼んでも良いかな?』


『構わないよ』


『ガジラ、君はサリバン卿とやけに気安い関係に見えたが、もしかして前々からの知り合いなのかな?』


『いや、ここに来て初めて知り合ったが‥‥

何でなんだ? アンタあの人のダチか何かか?』


あー 気安かったのはサリバン卿が、多分この若いのに変に気を使わせ無いようにしたのかな?


とは言え‥‥ 一応は言っておいた方が良いな、

多分この若いのは分かって無いだろうからな。


『あー ガジラ、君はサリバン卿がどの様な方か分かって無かったりするのかな?』


『官吏でここの灯台の責任者で‥‥ 灯台守長をして居るんだよな?』


なるほど、やはりその程度の認識か。


『サリバン卿は確かに官吏だが、只の官吏では無い、特級官吏なんだ、通常は帝都サザビー、それも帝城勤めか、地方に行けば知事をしている位の官職にあるお人だ、それこそ大袈裟でも何でも無く、バハラの知事をしていてもおかしく無い位のお人なんだよ、確かに若いがあのお人は15歳の時に特級官吏試験に合格して13年‥‥ いや、14年目か? まぁバハラの知事でもおかしくは無いな、それだけの実績もある』


私の言葉にガジラ青年がポカンとしているが、

これは全く分かって無かったし、気づいても居なかったな。


『特級官吏って‥‥ 俺でも分かる位だぞ、何でそんな人間がこんなトコに居るんだ? 間違いじゃ無いのか? ただの下級官吏じゃ無いのかよ、てか何でアンタそんな詳しいんだ?』


『うん、サリバン卿は有名だからね、一応聞くが役人呼びはして無いだろうね?』


『する訳無いだろ、帝国の官吏に役人呼びはケンカ売ってる様なもんだからな、それ位は俺でも知ってるさ、で? アンタの話は本当か? 俺を(かつ)いでるんじゃ無いのか? もし本当ならば何でそんな偉い官吏がこんな所に、しかも灯台守何かしてるんだ?』


まぁ普通はそう思うだろうな、その辺りも少しは説明しておいた方が良いだろうな。


『一昨年、正確には去年迄あった派閥争いの影響だね、私が聞いたのは派閥争いに巻き込まれたらしい、まぁ実際は‥‥』


『おい、言い掛けて何で止めるんだよ、何かあんのか?』


『帝国にも色々あるんだよ、まぁその辺りは知る必要の無い事だね、兎に角失礼が無かったなら別に良い、気安い関係もサリバン卿が何も言わないなら私がとやかく言う事も無いしね』


『なぁ、さっきからサリバン卿って言ってるけどもしかしてあの人はお貴族様なのか?』


おや? 帝国の官吏制度に多少は詳しいかと思っていたがそうでも無いらしいな。


『あの方は帝国騎士だよ、帝国の特級官吏は任官する時、正確には地方行政を学ぶ為に三年間の地方赴任後に騎士爵位を与えられるんだ、それも皇帝陛下から直々にね、つまりそう言う事だよ、まぁ簡単に言えば雲の上の人だね』


『えっ? そうなのか? マジかよ‥‥ 爵位持ちかよ‥‥ 俺‥‥ 随分軽口叩いちまったよ‥‥』


『まぁ何だ、サリバン卿は全く気にして居なかった様に私は感じた、だからまぁ余り気にしないでもいいと思うよ、気になるなら聞いてみたらどうだね?』


『いやまぁなぁ‥‥ 俺もそう思うが今更感が無いか? 確かにあの人は全く気にしてなかったとは思うが、まぁ一応は一言知らなかったって言っとくよ』


サリバン卿は怒ってないし、気にもして無いだろうから、言われても笑って終わりの様な気もするがね。


まぁこの若いのが納得出来るならそれで良いさ。


『所でガジラ、体調は問題無いかね? 見た所

元気そうだが、どうだね?』


『ん? 悪くは無いな、ただ身体が少しダルいな、長い事海に浸かってたからか疲れはまだあるな、本調子では無いかな』


それは多少仕方無い部分もある、私がバハラで見た救助者に比べれば状態は遥かに良い。

回復力の早さは若さ故なのだろう、羨ましい事だ。


『移動に問題が無いのならもう暫くしたらバハラに行く事になる、短い間だが世話になった人も居るだろう? 挨拶は今の内に済ませておいた方が良いね』


『随分と早いな、まぁ挨拶と言ってもなぁ‥‥ ここに居る婆さん達とこの部屋に居る奴位しか居ないんだが‥‥ 後はあの人位だな、あの人には何やかんやで大分世話になったからな、これ見てくれよ、エピリ語と帝国語の必要な単語を色々書いてくれたんだ』


日常会話と医者の問診用か、サリバン卿が作ったんだろうな、正直我が国エピリ共和国はあまり名が知られて居る訳では無い、当然エピリ語を言語として理解して居る者も少ないのだが‥‥


会話も訛りが一切無かったし、この会話用の単語表にも文法の間違い等一切無い。


完全にエピリの言語を理解して居るのだな。

サリバン卿は‥‥


確か帝国と関わりのある国の言語は全て完璧にマスターしているんだったか。


帝国の特級官吏になる人は常人と頭の作りが違うと言うが サリバン卿は又特別だ。


私達ですら知っている様な逸話が幾つもあるお人だからな、組合からも知己を得ておけと言われているが、個人的にも出来ればこれを機に是非お知り合いになりたい所だが‥‥


『なぁどうしたんだいきなり黙り込んで?』


『すまないねちと考え事をしていた、さて、それでは準備をしようか、と言っても身の回り品は無い様だね、それなら挨拶を済ませてしまおう』





ガジラの奴がバハラに移送される事になった。


騒がしい奴だったが、これで居なくなると思うと寂しく‥‥


はなら無いな、まぁ清々するとは言わんが、特に思う所は無い。


愉快な奴ではあったがな。


後もう少し芸を磨けば光るものがあるだろうが

芸人としてはまだまだ未熟だな、今後に期待だ。



とは言え来た理由はどうあれ折角このハルータに来たんだ、せめて気持ち良く送り出してやらねばならない。


運良く助かった祝いの意味も含めて、ついでに

アマンダに今後いらんちょっかいを出さないように、可能性は低いがガジラの奴アマンダにえらい御執心だったからな、一応念の為だ。


さてと、準備をしなければな。




ガジラは着の身着のままここへ来た、なので身軽だ、準備なんて必要無い、端的に言えば時間がある。


その時間を使いあのアホは、アマンダにちょっかい掛けてスルー されていた。


挙げ句の果てに、俺に通訳を頼んで来やがった


出て行く時までこれかよ‥‥


まぁ良いだろう、ガジラが帰る時が楽しみだ。


因みに俺が特級官吏だと分からなかった様で、失礼な口を聞いたかも知れないがすまなかったと言ってきた。


まぁその件は別に良い、失礼な口を聞かれた訳では無いのだから、ただし、いらん事はするなと言った事を忘れたのは許さない。


ふっふっふ‥‥


奴が帰る時が楽しみだ。






『あー 何だ、世話になったな 助けてくれてありがとう、本当に命の恩人だ、村の人等にも伝えて欲しい』


俺が伝えると村民達が口々に

「助かって良かった」

「元気で暮らせよ」

「身体を労れよ」

「達者でな」


何て言ってガジラに別れを告げている、

それだけ見れば美しい光景だろう。


そして当然これで終わりでは無い。


ガジラはもっと周りを見るべきだな、ついでに言うとガジラの介護、世話をした婆さん連中が何故誰1人として近くに居ないのかを疑問に思うべきだ。


『ガジラ、折角助かった命だ、大事にしろよ』


『ああ分かってるさ、アンタには本当に世話になったよ、ありがとう』


うん、ちゃんとお礼を言えて偉いぞ。


さて‥‥


お見送りの本命の時間だ。


『所でガジラ、俺はいらん(・・・)事をするなとお前に言ったが覚えて居るか?』


『・・・ ああ‥‥ 覚えて居るさ、てかいきなりどうしたんだ?』


『そうか‥‥ 覚えて居たか、それなのにお前は何度もやらかしてくれたな?』


『・・・』


俺はにっこりと笑い ガジラに伝えると何故か顔をひきつらせ、急に黙り込んだ。


馬鹿め、もう遅いわ!


『ガジラ君はどうも女の子が好きが好きみたいだな? そんな君に最後に良いプレゼントをあげようじゃ無いか』


『いや‥‥ 助けてもらった上、そんな気を使わせるのも悪いよ‥‥』


コイツ気が付きやがったか? だが何をやるかは分かって無いみたいだな。


『さて問題だ、お前を世話した婆さん連中がここに居ないのは何故だろうな? お前はどう思う?』


『な 何でだろうな‥‥ ハハ‥‥』


『俺は優しいから答えが分からないそんなお前に答えを教えてやろう』


あれあれあれ、ガジラの奴すごく汗が出てるな、何でだろうな?


『なぁ、アンタが微笑むとろくな事が無い様な気がすんだが‥‥』


『大丈夫だ、お見送りするだけだ、お前との別れを惜しむ奴が‥‥ 女が居てな』


「おいアマンダこっちに来てくれ」


俺の呼び掛けにアマンダがこちらに歩いて来るとガジラが嬉しそうに笑う、今は幸せ満開なんだろうな、今はな。


『おいおいおい アンタ本当に気が利くな』


そうだろう、俺は気が利く人間なんだ。


「ガジラ坊やを世話した婆さん達来てくれ、ガジラ坊やに最後の別れを! 打ち合わせ通りにな!」


『えっ‥‥ あの婆さん達どこから出て来たんだ! ちょっと待て! アンタさっき何て言ったんだ? てかアマンダより先に何故婆さん連中が来てる?』


何故? そんなの決まってるさ。


「坊や元気でな、身体を大事にするんだよ」

「ヒェッヒェッヒェッ、すっかり良くなって、元気で生きるんだよ」

「ガジラ坊、寂しくなったら会いにおいでよ」

「生き残った事を女神様と精霊様に感謝しなよ」



ガジラの世話をした10人程の婆さん達がガジラに抱きつき、口づけをしたりしてガジラとの別れを惜しんで居る。


何て美しい光景なんだろう、正に感動的な光景だ。


ガジラの奴『ギャーーー!』何て言って喜んでいる、うん、幸せそうで何よりだ。


婆さん達の別れの挨拶とスキンシップで揉みくちゃになったガジラが何故か俺に抗議してくる。


何でだろう?


『どうした?嬉しすぎて頭がイッちゃったか? 』


『ふざけんな! アンタ何してくれてんだ!』


『俺は何もしてないぞ、婆さん連中がお前に別れの挨拶がしたいと言うからセッティングしただけだぞ、良かったなガジラ、大好きな女の子(・・・)に別れを惜しんで貰えて』


ガジラの奴は何で愕然と、いや呆然としているのかな? あー そうか嬉し過ぎてか、照れ屋さんだなコイツ。


『それからなガジラ、お前が御執心のアマンダは俺の女だからいらん事は今後するなよ、分かったか? まぁ‥‥ 遠く離れた国にお前は帰るから関係無いんだろうが バハラに立ち寄った時にアマンダに会いに来ても無駄だから止めとけ』


『・・・』


うん、まぁ嘘も方便ってやつだ。


多分これでいらん事はやらないだろう、うん、君は若いんだ、その内良い人でも現れるさ 多分な。


さて、もうひと押しだな。


「ホレ婆さん達よ、ガジラ坊やに熱い別れの挨拶をしてやってくれ、坊やも期待して待ってるぞ」



俺の言葉に離れていた婆さん達が再び、ガジラに別れの抱擁と口づけを交わしに行った。


うん、別れは何時でも悲しいものよな。


『ギャー 助けてくれ~ もうアンタの女にちょっかい出したりしないから! ひゃー ヤメてくれ~ と 止めてくれ~』


こうしてガジラとの別れは終わった。


ガジラの歓喜の絶叫と共に。


さようならガジラ、

君の事は多分明日ぐらいまでは忘れない。


これからも元気で暮らしてくれ。



ガジラよさらばだ!


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