第25話 帝国製ライフジャケット
男衆の声がする
まだ少し風雨が強いが強弱もあり 弱い時もある
そんな中 男衆が異国人らしき男を運び込んで来た。
日に焼けたにしては少々浅黒く、この辺りの者とは少し違う風貌だ。
風貌は南方諸島の人間に見える、
そして何より 首に身元札を掛けて無いし、
服にも個人の身元や個人情報が分かる物が縫い付けて無い、これが帝国人なら 必ずある、
それらを身に付けて無いと言う事を加味すると
南方諸島の人間の可能性が非常に大きい、
それに衣服も南方諸島の人間がよく着ている服だし
まぁ間違い無く南方諸島の者だろう。
「おいちょっと待ってくれ」
「何言ってんだ守長 早く奥に運び込まないと!」
俺の言葉に若い衆が抗議する、確かにその通りだ、
だがその前にやらないと いけない事がある。
「良いから待て 直ぐ済む」
コイツら焦って居るのは分かるが、このままの状態では絶対駄目だ、
厚手の布に載せて六人係りで運んでいるが、
誰も気が付かなかったのか?
「おい しっかり持ってろよ、驚いて落とすんじゃ無いぞ、行くぞ」
ちゃんとしっかり持ってるな、確認ヨシ。
まずクリーンを掛ける、そして乾燥も掛ける、
魔力を込め強めに掛けたから、物凄く綺麗になった
そして身体も完璧に乾いている、
強く掛けたから厚手の布も完璧に乾き、綺麗にもなってる。
若い衆がビックリしているがそれよりも、
濡れた身体のままでは、低体温症の場合まずい事になる、
さっさと乾かして温めなければいけない。
「ホレ さっさと行くぞ」
「わ 分かった おい皆行くぞ」
「「「「「おう」」」」」
「きつめの酒は飲ませたか?」
「ああ 言われた通り飲ませた、でも気を失ってたから そんなには・・・」
無理にでも飲ませて身体の中から温めた方が良いんだがな……
身体が冷えきってるな、気道を確保しつつ少しづつでも喉の奥に流し込んでみるか。
まず救難者用の部屋に運び込む前に、部屋全体を温めた部屋に運んで身体を温めないといかんな。
移動しながら聞いた方が良いな。
「身体が冷えきっている、暖炉に火を入れた部屋があるからまずそこに行くぞ、移動しながら話を聞く」
「分かった、そうしよう」
さて、先ずは1人目の救助者か、
後、何人来るか・・・
部屋の中が暑い、暖炉に火を入れてるし締め切っていたから熱気が籠っている。
部屋に到着する僅かな時間に聞いた所によると、
嵐も大分収まり 海岸に定期捜索に出ていた若い衆の1人が、砂浜に打ち上げられているのを発見したらしい。
発見した時は木製のライフジャケットを着ていたらしく、砂浜で波の押し引きにより微妙に身体を行ったり着たりと動かされていたようだ。
「その時も 息はあったんだな?」
「ああそうだ 気を失って居ただけだ」
今も息はしている、胸が上下に動いている。
よっぽど運が良かったんだな、
それとアレのお陰か・・・
帝国製の木製ライフジャケット、アレを身に付けていたからだな、まさに死命を決したと言う事だ
アレが無ければおそらく・・・
「守長 他には見つかって無いがもしかして岩場に引っ掛かってるかも知れない もう夜明けだ もう少し明るくなったら 捜索範囲を広げるよ」
「分かってると思うが気を付けるんだぞ」
「ああ 勿論だ 皆行くぞ」
頼むぞ 二重遭難は勘弁してくれよ。
さてと……
救助された男はまだ若い、二十歳前後位だ、
まぁそれはいい、だが葉っぱの匂いがしてるのは宜しく無いな。
俺はこの男にクリーンを掛けた、
だが掛けたのはガワだけだ、
身体の中には勿論掛けれない、だが口の中には掛けれる。
俺はさっき酒精の高いのを慎重に飲ませたが、
その時に微かに口から匂ってきたんだよなぁ……
帝国ではその手の物は御法度だ、
だが南方諸島では、合法の国が多い、
帝国内に持ち込まないが、船の中でヤル奴は割りといる。
そして時折 上陸後、まぁ帝国内で楽しむ為や、
小遣い稼ぎに持って上陸して来る愚か者が居るのだ
恐らくだが、コイツは船から投げ出される前に吸ってたってトコだろうな。
気がついたら一応は確認と、釘を刺すのを忘れないようにしようか、まぁ意識を取り戻したらだがな。
しかし暑いな、コイツの身体が温まったら水を飲ませた方が良いのだが、飲ませるのも大仕事だ、
この村には医者が居ない、そして看護師も居ない
まぁ看護師自体がこの世界には居ない訳じゃ無いが、前世の様な専門知識を持ってはいないんだよなぁ。
医者は、こんな村に居る事は滅多に無い、
その代わりに薬師が居る。
この村には三人の薬師が居るが、三人共ばぁさんだ
二年前にはじいさんの薬師も居たが、死んでしまったらしい。
薬師のばぁさんもここには今1人来てるが、
とりあえず意識の回復待ちとの事だ。
まぁとりあえずは、コイツの回復待ちだな。
雨風が又、強くなってきた、さっきまでは弱かったのに、雨風の強弱がやや激しいな。
緩い時と強い時の差が激しいが、じい様達は、
朝方には収まると言っているからもう少しの辛抱だ
女衆が慌てて窓を閉めている、
『暑いのにもう』何て言って怒ってるな、
追加で氷を出しとくか、しかし・・・
氷柱が有るから 窓は閉めてた方が冷気は抜けずに籠るから涼しいんだがな……
明るさの問題か?、とは言えまだ外は暗いんだが……
多分、窓を開けるのがクセになってるんだろうな
建物の中は、程よい喧騒と熱気に包まれている
村民にしたらこれも又、ちょっとしたイベントみたいなもんなんだろう。
灯台に行き、篝火の所にある回光・・・
暗刻連絡器を使い1人救助した事を伝えた、
引き続き捜索、救助を、そしてバハラから、
嵐が落ちつきしだい人を送るとの事だ
軍人や官吏、医者も来るだろう。
連絡はさっきので暫く、いや夜まで出来ないだろうな、
狼煙では大まかには連絡が取れるが細かい部分の連絡が出来ないから、やはり不便だ、しかし
ガラスの革新的な技術革命でも起こらないと
今のままでは望遠鏡は作れないからなぁ・・・
本当、不便な世界だ、魔法があるのに何でも出来る訳じゃ無いと言うのは、夢もくそも無いよ、
現実は厳しいと言う所だな。
愚痴って居ても仕方ない、ここは前世とは違うんだ
今ある物でやっていくしかない。
灯台横の施設に行くと、一気に喧騒が広がった
そして俺の視覚にあるものが飛び込んで来やがった
モリソン兄が壁に手をつき、
いわゆる壁ドンしながら女を口説いていた……
何してんだよアイツは……
つーかアイツ休憩の時間だろ?
さっさと仮眠取っとけよ、後で辛い思いするぞ。
と言うかアイツ、周りからクスクス笑われてんのに、まさか気が付いて無いのかよ、
あっ! 向こう脛 蹴られやがった。
「いった~ いった~ マジで痛いんだけど」
うん、確かにお前は痛いよ、かなり痛い奴だよ、
てかコイツこんな時に何やってるんだ?
何でコイツは普段しっかりしてんのに
駄目な時はとことんなんだ?
メリハリあり過ぎだろう、勿論 悪い意味でな。
「お前 何やってんだよ、休憩の時間だろ?
さっさと仮眠取っとけよ、後がキツいぞ」
「あっ守長、いやな 今日はイケそうだから行ってみたんだけど何故か駄目なんだ、おかしいな・・・
三人目も駄目だった 何でだ?」
いやコイツ何なの、マジかよ てかおかしいのはお前の頭だよ、しかも三人?
「お前まさか三人も口説いたのか?」
俺の問いかけに不思議そうな顔をしている、
つーか 俺はお前の頭の中が不思議だよ。
「いやだって 守長が みんな言っちゃえばとか言ってたから・・・」
おいおい、本当に皆 行くつもりだったのかよ!
ビックリだな、まさかまさか本当にやるとは思わなかったぞ コイツ真剣に頭わいてるのか?
「そうか、だが俺は今行けとは言って無いぞ」
「えー そうなのか?俺はてっきりそうかと・・・」
あっ! コイツはあれか、ホンマもんって奴か、
あー、そうかそうか 成る程、成る程。
「でも俺ならいけそうな気がしたんだけど、
なんでなんだろ? おかしいなぁ……」
うん、だから おかしいのはお前の頭だよ、
「今日は天気悪いからじゃないか?」
「あー そっか…… 天気悪いからかー、そうだな」
「うん そうだ、そうに違いない だから日を改めろ」
「そうだな 分かったそうするよ」
コイツ・・・
俺は再び、コイツとの付き合いを考えようと、
心に誓ったのは言うまでも無い
まぁ やる事やってくれたら俺は文句無い
だがプライベートで交わる事は、今後決して無いだろう
さらばだ! 外で会っても 他人のフリをしようと
改めて俺は、心に固く誓ったのであった




