第22話 アマンダ
夜が明け始めてきた
雨風が弱まり嵐とは言えない程度の風を吹き付け
地面を叩きつけていた雨は撫でる位に弱まっている
窓を開け佇み外を見ている女が居た。
その女はただ静かに佇んで居た。
絵になる女である、
少し影の有る何とも言えない美しさを持つ女だ。
女の名はアマンダ、現在は独り身、しかし結婚はしている。
それは何故か?
アマンダは8年前に海で行方不明になった夫の帰りを待っている。
8年前、沖に出て行方不明になった船が三隻ある。
三隻には計7人が乗っていた、
そしてその7人の中にアマンダの夫も居た。
急な時化、大きな雲が沖に近づいて居たらしく、
多分積乱雲だと思うが、それによる天候の急激な変化により沖に突然の嵐が発生したのだ。
しかも、目撃者によると竜巻も発生していたらしく
それ等に呑み込まれてしまったのだろうと言う話であった。
ある意味不運だったのは、その天候の急変による大荒れは僅かな時間で収まった上に、
狭い範囲での出来事であったのだ。
僅かな時間、その狭い範囲にアマンダの夫は居た、
まさに不運としか言いようが無い。
他の船は一切被害を受けておらず、
ハルータの漁船三隻、7人のみが被害を受けた。
ソレに巻き込まれた7人は誰も見つからなかった、
あの様な大荒れで船の残骸も見つからず、
ましてや遺体も見つから無い、生存は誰もが絶望的だと思った。
とは言え行方不明になった者の家族は生存を信じた
だが一週間経ち、二週間経ち、残された家族達は少しづつ家族の死を受け入れだした。
1ヶ月もするとアマンダ以外の皆はその死を受け入れて遺体の無い葬式を行った。
アマンダだけはその死を受け入れず、
生存を信じ待ち続けた。
だが葬式は行われていた。
夫の家族はその死を受け入れ、区切りの為にも、
何より、海に消えた家族の安らかな眠りを望んだのだ。
アマンダはその葬式には出席して居ない、
『ひょっこり帰って来そうだから』
そう言って葬式への出席を拒否した。
『あの人は生きて居る、必ず帰って来るから』
夫の家族の説得をアマンダは拒否し、
結局アマンダ抜きで葬式は行われた。
アマンダと夫の間には子供が居なかった、
16才で結婚した二人は、夫が海に消えたあの日迄、
5年、子が出来なかった、原因はどちらにあるのか分からない、だがアマンダは夫の家族に責められた。
子を孕めない不出来な女と責められたのだ。
不妊の原因など男にも女にもどちらにも原因の可能性はある。
だが夫の家族はアマンダに原因があると責めた、
別れるよう促したがアマンダもそして夫も拒否した。
二人は端から見ても仲睦まじい夫婦であったし、
心からお互い愛し合っていた。
子が出来ずとも二人は共にあった、
二人きりだがいつも笑いあっていた、
他の者に何を言われようとも決して離れ無かった。
死が二人を別つまで、
二人を例えるならその言葉以外見つからなかった。
だがあの日、二人を別つ事となる。
しかしアマンダは決して認めなかった、
『あの人は生きている』
『必ず帰ってくる』
『だって約束したから 私より先に死なないって』
『ひょっこり帰って来る』
『少し帰るのが遅れてるだけ』
アマンダの正気を疑う者も居た。
アマンダは気が触れたと思った者も居た。
だがアマンダは正気だったし気が触れた訳でも無かった。
アマンダは行方不明になった夫の事を話す時、一切取り乱したりはしなかった。
どれだけ周りが取り乱したりして居ても、アマンダだけは取り乱さなかった。
行方不明になったあの日、周りが取り乱し、
泣き叫ぼうがアマンダは冷静だった。
『あの人は私の元へ必ず帰ってくる』
『あの人が私を残して先に逝く訳が無い』
アマンダだけは無事夫が帰って来るのを信じて居た、そう信じて待って居たのだ。
あの日から半年、そして一年と過ぎた。
行方不明となった者の家族、友人、隣人、同じ村、
ハルータの村民達の中ではもう過去の事となり、
そして行方不明になった者は思い出の中の記憶となっていた。
そう、アマンダただ一人を除いて。
『もう無理だ諦めろ』
『奴らの事はもう思い出の中のただの過去の出来事だ、帰って来る訳が無い』
『いい加減過去の事は忘れて思い出に変えてしまえ』
そう言ってくる者に対してアマンダは、
『私はあの人の事を思い出にするつもりは無い、
これからも一緒に思い出を作って行く』
『あの人は必ず私の元へ帰って来る』
その様な事があの日から二年程続いたが、
その内皆決して帰って来ない等言わなくなった。
そしてあの日から三年の月日が経つ頃になると、
アマンダへ求婚する者が現れる様になった。
曰く、
『もういい加減に忘れろよ、俺と一緒になろう』
『死んだ奴の事何か忘れて俺と新しい暮らしをしよう、一緒に新しい家庭作ろう』
『もう良いだろう、これだけ待ったんだ、もう帰って来ない事は本当は分かってるんだろ?
俺が嫁に貰ってやるよ』
『俺なら奴の事を忘れさせてやれる、俺の妻になってくれ!』
『死んでなくても帰って来ないなら一緒だ 俺の嫁に来てくれ』
アマンダは何人もの男から求婚された、
だが誰にも首を縦に振らなかった。
『あの人は必ず私の元へ帰ってくる』
ハルータの村民がもう何度も聞いた台詞で、
求婚されるたび断り続けた。
「守長、アマンダを見てるの?
本当、男は皆アマンダが好きだねえ」
「マーラか、そりゃ見るだろ? アマンダは良い女だからな、それにああいう影の有る女‥‥ いや、影の有る男には女だって惹かれるだろ?」
俺の問いかけにマーラが豪快に笑い出した。
「そりゃそうだ、確かにその通りだねぇ守長」
まぁ実際アマンダは良い女だ。
足も細いしウェストもキュッと引き締まり、くびれも素晴らしい、ケツも小尻でキュッとして、胸も結構でかいし、服の上からでも分かるくらい美乳だ。
しかも美人だしな、そりゃ見るだろ。
まぁ口に出してそこまでは言えないんだが……
「守長さっき上に上がってたみたいだけど外はどんな感じだね?」
「大分マシにはなっては来てるな、でも雨風はまだまだ激しいな、そのせいで濡れたから魔法を使って綺麗にして乾かしたから、もう一回髪を撫でつけて香水ふり直してきたわ」
「マメなこって」
そう言うと又、マーラが笑い出した。
寝不足と深夜のテンションでおかしくなってるのかな?
「マーラも少しは仮眠するなりして少しは休めよ、じゃないと身体が持たんからな」
「あいよ、分かってるよもう少ししたら
昼寝…… 夜寝するさね」
夜寝って‥‥ いやある意味間違いでは無いけど、
夜寝は無いだろ‥‥ 仮眠って言えよ、仮眠って。
別にどうでもいいんだけど、
いかんな、俺もテンションおかしくなってんな、
気をつけないと。
「マーラ、聞いたかも知れないがな、じい様達が朝方にはこの嵐も収まると皆口を揃えて言ってるから、それまでに休んどいた方が良い」
「あー なら朝方から忙しくなるねー
それまでにちょっとだけ昼寝するよ」
結局昼寝って言うのかよ。
「あら守長こんばんは、マーラと何を話していたの?」
「おうアマンダか、いや何、アマンダが良い女だって話しをしてただけだよ」
「もう‥‥ 守長ったら上手なんだから」
アマンダがころころと笑っている、うんやっぱ美人だな、良い目の保養になる。
「そうか? 本当の事だぞ、こんな美人な良い女が嫁でアマンダの旦那が羨ましいよ」
「もう‥‥ 本当に相変わらず上手よね」
うん、こうやって笑って居ると影がある女には見えないんだよな、可愛らしいと言うか、美人さとか、可愛らしさが引き立つんだ、うん、本当良い目の保養になる、まさに眼福だな。
「で? 本当は何話してたのマーラ?」
「半分は本当だよ、アンタが良い女だって守長と話してたんだ、もう半分は朝方にはこの嵐も収まるって灯台守のじい様達が言ってたって話しさね」
アマンダが軽く驚いた顔をしている。
お世辞で良い女って言ってた訳じゃ無いんだ、
美人って言ったのお世辞じゃ無かったの?
って、そんな事を思っている顔だ。
「守長ったら‥‥ 私には夫が居るんだから、人妻にあんまりそんな事言っちゃダメよ」
「そうだな、旦那に怒られちまうな、以後気をつけよう多分な、だから大丈夫だぞ多分」
「もう、本当にもう、すぐからかうんだから」
アマンダが又ころころと笑い出した。
うん、だってアマンダと絡んでると楽しいから
又やると思います。
うーん、しかし良い時間だ癒されるなぁ‥‥
「守長おっはよー 朝起きてすぐ守長に逢えるなんて凄くイイ朝だよねー♪」
出たな7歳児!
俺の折角の癒しの時間を邪魔しに来やがったなー




