第213話 オールドガード
お久しぶりです。長い事放置してしまいました。
何と言いますか、全てにおいてやる気が全く起きず、一切書く気力が湧きませんでした。
書いてもちょこっとだけだったり、違う話や新しい話の概要だけ書きそれで終わったり、久々にやる気が出て書いたら消えたりと、そんなこんなでこんなに空けちゃいました。
とは言えこのままでは又、放置になるので、一話分だけですが投稿します。
本当は数話分纏めてと思っておりましたが、そうなるとやはり書かないと思い、一話だけですが投稿しました。
これからはピッピと書いて投稿しますと言えれば良いのですが、出来ると言えない不甲斐ないこの身です。
なのでなるべく投稿出来る様に、何とかモチベーションを上げて行きます。
ほぼ一年ぶりですが、どうかこれからも宜しくお願いします。
沈黙、猜疑、探りあい。部屋の空気が気のせいか重さを含んでいる様だ。何でなんだろうね? 不思議だなぁ。
「なぁ、そろそろ話を始めたいんだが? 何時までも見つめ合ってても話が進まん。そりゃこの中に想いを秘めてる奴が居るのかも知れないが、そう言うのは後でやってくれないか? なぁ謎の誰かさん?」
何をギョっとしてるんだお前ら? 今のお前達のリアクションは、自分がその謎の誰かさんってバレたみたいに思われるぞ。別にどうでも良いけど。
「ん、ん~ん……。俺達はそんなんじゃ無いが、確かに話も進まないし埒も明かない。とりあえずバハラの状態改善の話ってのを聞いてみようじゃないか。聞かなきゃ話も始まらない。みなどう思う?」
わざとらしく咳払い何かしやがって。てかローガンおじ様の方も見てやれや。可哀想に……。仲間外れにされた幼稚園児みたいなツラしてるじゃないか。別にどうでも良いけど。
「なら話を始めるぞ。椅子は…… やっぱ良いや、立ったまま話す。それとハゲ、弟をいい加減こっちの世界に引き戻せ。どうせ後から聞く事になるんだ、自分の世界に閉じ籠ってても仕方ない。それで良いなフルハウスのおじ様?」
「構わない、そうさせろ。悪いが海蛇の、オメーんトコの若い衆にやって貰って良いか? あのガキにやらせるとウチのが怪我しかねない」
「ああ構わんよ。ゲーブルやってやってくれ」
と言うかちゃんとローガンおじ様と目を合わせて言ってやれよ、フルハウスおじ様。
それと俺が弟を怪我させるだと? お前は俺を何だと思ってるんだ? 失礼な奴だよ。俺みたいな紳士に向かって何て事を言うんだ。
しかしコイツ徹底的に聞かないつもりなんだな。耳を強く押さえて聞いていないアピールが凄い。しかも後ろ向きになり、多分だが目も瞑ってるんだろうな。それに気のせいかコイツの気配が薄くなってるが、何らかの武術を修めているのだろうか?
「えっ? ゲーブルさん、ヤメて下さい手を放して下さい。嫌だ、聞きたくないし見たくないんです。お願いですから、お願いですから聞かせないで下さい」
「諦めろ。お前の気持ちは痛い程分かるが、お前の親父さんであるフルハウスさんがどうせ直接お前に命じる。と言うか既に命じられてるんだ、ちゃんと聞かせろとな。多分だがサリバン様がそうさせろとお前の親父さんに再度言うだろう。大丈夫だ、大人しくしておけば今までと変わらず過ごす事が出来る。俺を信じろ」
うーん、しぶしぶだがあのハゲの言う事は素直に聞くんだ。よっぽど信頼してるらしい。組織が違うのにソレとは、組織同士の繋がりもそうだが個人同士も良い意味で交流は活発らしいな。まぁ良いだろう、話を進めるか。
「で? お前はどんな改善案とやらがあるんだ?」
「偉そうな物言いだなフルハウスおじ様? まぁ良いだろう、今は許してやる、今はな。だが口は災いの元とも言うが、俺の気分は女心と一緒で変わりやすい。気を付けて発言し、俺に対する態度も考えるんだな。とは言えこのままでは話が進まないからな、今は不問にしてやる。大事な事だからもう一回言うが今はな。さて……。そうだな、俺の提言はだな………………」
そこまで難しい物では無い。夏にあった対応5の時に来たケレイブ・カーンや隊長殿に語った事だ。
俺が事細かく一通り話すと概要ではあるが、テーブルに偉そうに座るおじ様達がお互い意見を述べ、お互いの考えを言い合って自分なりに整理したらしい。そして。
Q
見せしめにと言うが、行政府がそこまで許すか?
A
現場レベルで口裏を合わせろ。とは言え限度もある。流石に奴ら小悪党の首を跳ね、その首を槍の穂先に掲げる様な事をしなければ、行政府もあまりうるさく言わん。本当はその位した方が効果的だが。
Q
俺らと今の行政府連絡官、いや、今のバハラの行政府自体との関係は良くないのだが? はたしてどの辺りまでなら許容範囲かいまいち分からん。
A
それこそ現場レベルで話し合い、口裏を合わせろ。それと俺が推薦したケレイブ・カーンとその辺りを擦り合わせておけ。官吏はケレイブ・カーン、衛兵や軍は俺が紹介してやるからそいつらと話し合ってみろ。お前らだけで無く、現場で実際に事にあたってる奴等もバハラの現状を憂いている。少なくとも話を聞く位には現状打破の手段を欲している。
Q
はたしてそう上手く行くか? 奴等は俺達の事を所詮は裏稼業の者と腹の中では思っているんだぞ。
A
目的は手段を浄化する。敵の敵は味方。言い方は色々あるだろうが、現状の大胆な改善の為には、多少の感情を飲み込み抑える程度の奴等にだけ話を通せ。その程度の事も出来ない奴には何を言おうが、何をやろうがどうせやらん。時間の無駄だ。どうせこのままなら何にも変わらん。ならぐだぐた言わず試してみろ。例え駄目だったとしても現状維持だ。上手く行けば儲け物程度に思っておけば良い。
バカだな。バハラの今のこの状況、そして現状を苦々しく思ってる奴は多いんだ。ならやってみるかって奴も絶対居る。やって損は無いんだ、なら試してダメなら別の方法を試せば良いだけ。
下級官吏と役職的に少々弱いが、ケレイブ・カーンに言えば真摯に対応するさ。
やり方及び、改善案のマニュアルは既に作成してある。時間だけは嫌になる程あるからな。それを俺がケレイブ・カーンに渡し、奴と話をすればバハラの行政府に提出する。もちろん作成者の名前は俺では無い別の奴になる。
俺がそれを提出し、そして提出者の名前が俺だった場合、感情から反対する奴も居るだろうしな。
今回の左遷で嫌になる程分かったよ。俺はどうやら自分で思ってたより、他の者に嫉妬されていたらしいと。
妬み嫉み。自分が思っていた以上に受けていたんだな。これは俺が悪い。あまりにも楽天的過ぎたよ。気を付けていたんだが……。俺もまだまだって事だな。
『宮廷は蜘蛛の巣の様に陰謀が張り巡らされている』
だったか? 前世で読んだ本のセリフだ。
官吏の世界も一緒だな。俺もその糸に絡み捕られていて、気付かなかったんだから。アホ丸出しだよ本当。嫌になるねえ。なので御礼にきっちり礼はさせて貰うがな。問題は命じた奴がアレだった場合か……。
「おい、お前がさっき言ってた、爺さん婆さんを使えって、役に立つのか?足手纏いなだけだと思うんだがよ」
「おい山猫。お前は俺の話をちゃんと聞いていたのか? 俺は何も爺さん婆さんに小悪党共を取っ捕まえさせろとは言っていないだろ? お前ちゃんと話を聞けや。大体だな、俺の大好きな猫ちゃんの名前を組織名にしやがって。お前マジで山犬に組織の名を改名させてやろうか。お前そんなんだから孫のポール君とミアちゃんが最近会ってくれないんじゃ無いか? 人の話を聞かない奴は避けられるんだぞ」
「クソが。二人共年頃になって友達と遊ぶのに時間を取られてるからだ。落ち着いたら又会う時間は増える」
「ふーん……。そうだったら良いな。テーラー君、キミ……。おじいちゃんお話ちゃんと聞いてくれないんだもの、だったっけ? 二人共そう言ってるらしいが、俺には関係無いから別にどうで良いや」
「なっ!」
何がなっだよ。気付いて無かったか。別にどうでも良いけど。
「そんな事よりお前んトコの一番下の息子、まだ官吏なんだろ? お前が息子に話を通せよ。と言うかお前、まさか息子と話しもしていないのか? つーか今の話を息子を通して官吏側に伝えろよ。下級官吏の縦と横の繋がりを使え。まさかと思うが、官吏になった息子と自分の職の事で遠慮でもしてんの? お前なぁ、使えるモノは何でも使えよ。何余裕かましてんだ? これはある意味チャンスだぞ。大事な大事な息子君が出世するチャンスでもあるんだからな。てか巻き込め」
官吏にとってもこの件を解決するなり、糸口でも見出だす事が出来れば出世するチャンスでもあるのに、それなのに何をしてんだよ?
多分だが、裏社会の自分との繋がりを気にして、息子との関係を悩んでるんだろうが、そんなもん実力と結果で黙らせたら良いんだ。官吏なんてのは実力重視なんだから。と言うか帝国自体が実力重視なんだぞ。
気持ちは分からんでもないが、せっかく繋がりがあるんだから上手い事利用し、息子ちゃんの利にもなる様にすれば良い物を……。
「クソが……」
「お前はさっきからそれしか言っていないが、漏れそうならさっさと便所に行ってこい。まぁ良い、お前が漏らそうが漏らすまいがそんな事はどうでも良いんだ。それより爺さん婆さん連中の使い方だったな」
答えは簡単だ。爺さん婆さん連中を見廻りに使う。そしてその年寄り達は、監視の目として使う。
一つの目より二つの目。監視の目は少しでも多い方が良い。それに数が増えればそれだけでも抑止力となるんだ。別に年寄り連中に捕縛させる必要等は全く無い。むしろ監視に徹させるべきである。
とは言え丸腰でやらせる訳にはいかん。見廻り巡回させる年寄り連中全員には、刺股やフレイルを装備させ、それと首から笛を掛けさせる。
で、悪事を働くアホを見つけたら、笛を吹き自警団を集める。ついでに衛兵や、治安維持の応援に来てる軍の奴等にも知らせる。
後は武器と言うか、杖代わりと言い張りフレイルも持たせる。刺又も捕縛道具だがあれとて使い方によっては打撃武器になるしな。そしてフレイルは麦等の穀物の脱穀に使う農具だが、アレは武器にもなる。実際農民の反乱に使われた歴史もある、由緒正しい武器なのだから。
我が帝国、いや、この世界には千歯扱きや足踏み脱穀機、それに唐箕があり、フレイルはあまり使わないが、それでも人手が余っている時等には、脱穀用の補助器具として使っているのでどの村にもある。数は決して多くはないがな。
そしてこの世界におけるフレイルは、獣用の護身武器にもなるし、不審者、これは盗賊やなんかの盗人用の備えでもある。
フレイルは日本で言うところの唐棹だが、世界が変わろうと、似た様な道具は開発されるらしい。
おかげでそれらを開発して儲ける事は出来なかったが、何であるんだろうな?
「おいクソガキ、お前な、フレイルは慣れていねえと自分や仲間が怪我するぞ。アレはただ振り回して良いってモンじゃ無い。お前は都生まれだから知らえねだろうが。こんな街中生まれの街中育ちの奴等に扱わさせたら、下手しなくても味方打ちになるぞ」
「海鷲一家のダンおじ様、物知りですわね。流石ド田舎出身だけありますわ。つーか穂先の所にロープで括り付けてる棒を短めにしたら良いんだよ。ついでにロープ自体も短くすれば良い、そうすれば大丈夫だ。それと刺股も装備させるんだ、ならある程度防げるよ」
「・・・」
このジジイ共めが……。何疑わしげな目で俺を見ている? やれよ。やって損は無いんだぞ。ならやってダメなら、その時は俺に文句でも言えば良いんだ。グダグタとコイツら……。
「おいお前ら。あーだこうだと理由をつけて何をウダウダ言ってんだ? お前らは告白出来なくってモジモジしてる乙女か何かか? なぁローガンおじ様」
「おいクソガキ、お前は何で俺に話を振る?」
「そりゃ……。あっ! 何でもない。そんな事よりだ、やんの? やらないの? 俺は別にどっちでも良いぞ。基本的にほぼ関係ないから。だが俺の知人や友人、大事に思ってる人達が困らない様にと思ったから言ってるだけだし。その人達も自身の身の安全を守る為に護衛が居るし、一応は大丈夫ではあると思うがな」
あーあヤダね~。年取ると新しい事を始めるのが億劫になるのか、ウダウダウダウダと……。
お前等はマジで恋する乙女かよ? 私、勇気が出ないの、か? 面倒臭い奴等だな本当。
それにしてもローガンおじ様はうるさいなぁ。何で俺に話を振っただと? 何度も同じ事をうっせーな。乙女って話が出たからに決まってるだろ。
「おい海蛇の。悪いが少し黙っててくれ。で? オメーは何で俺達に今のバハラのこの宜しくない状態をどうにかしようと、そう思った? 何度も同じ事を聞くのも言われんのも、オメーからしたら鬱陶しいと思うかも知れないが、だがなぁ、俺達としても気にはなるんだ。何でそこまでしてくれるかってな。そこんとこを腹割って話してくれなきゃよ、じゃねえと俺らも芯から頷けねえんだ」
チッ……。宵闇のジジイめが、何て疑り深いんだ。いや、それはこの場に居るジジイ共みんなと言うべきだな。あーヤダヤダ。人の善意や好意を疑う何て、お前は官吏か? ヤダねー本当。
とは言えこのままでは話が進まないのも事実。仕方ない腹割って話してやろうか。
「仕方ない。これは本当に俺の本心だ。信じろとしか言えないが、俺が何故お前達に態々こんな治安回復の為のマニュアルを作ってやったかと言うとだな……」
「おい、言葉を切るな。ちゃんと言え。それとも何か裏でもあんのか?」
「ねーよ、そんなモン。俺が態々お前達の為にこんな改善案とマニュアルを作ってやったかと言うとだな。ヒマだからだよ」
「「「「「ハァ~?」」」」」
うーん。皆さんお声が揃って仲良しさんですね。