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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
209/214

第209話 弟…… なのか……?


晴れ渡った美しい空。

風も無く、お日さまの暖かな光が気持ちの良い日。

今が冬で、冬の寒さが嘘みたいなそんな気分の良い今日。

つまりささやかな幸せを感じて居た日。


だった……。


「オラ、これが見えねえか? いちいち言わせんなよ、金出しな。有り金全部だぞ」


「・・・」


「おいおい、ビビんなって。何も殺そうってんじゃ無いんだ。有り金出したら無事逃がしてやるよ」


「俺達は紳士だからな。大人しく有り金渡しゃーよ、指一本触れないから安心しな」


「おう、コイツの言う通りだ。俺達は悪い奴じゃねーんだ。ちょっとばかし有り金恵んでくれたら何もしねーから安心しな。ただし逆らうってんなら……、分かってるだろ?」


「・・・」


「オラ、俺達も暇じゃ無いんでな、さっさと出しな。ビビって動けないなら勝手にまさぐるぞ。オメーも野郎に触られたくは無いだろ?」


「・・・」


「チッ……。おいダメだコイツ。ナイフにビビって動きが止まりやがった。仕方ねーなまさぐるか。おい、とっとと頂いてここから離れちまおう。最近は南方諸島のバカ共のせいで衛兵とか軍の奴が増えたからな」


「・・・」


「さてと……、アガッ。ウッ……」


「テメー何しやが……、ボファ、あっあっあ、腕が、腕が、腕がぁー!」


「テメー! グフッ、ガガガガガ……。あああーーーーー! ガヒッ……」


チッ……。このアホ共が。

相変わらずこの辺りは治安が良いな。


最近はおじ様達が治安の向上に努めてたから、大分マシになったとは聞いてたがコレか?

ましてや南方諸島の食い詰め者達が増えたから、衛兵だけで無く軍人達や、自警団の奴等の見廻りが増えてるのに、それなのにコレか?


本当に治安の良い所だよここは。

そう言や前におじ様達の会合に飛び入り参加した時も、ここを通ったな。


あん時は確か五回絡まれたんだったか?

いや、その内二回は会合の場の近くで警備してた、下の奴等に誰何(すいか)されたんだったか。

なら実質三回か? まぁ……、あの時は絡んでこられた五回共、昼寝させたから結果的にはあまり変わらないか。


しかし治安の良い所だよここは。

今も地面を寝床に、おねんねしてる奴等を心配そうに見ている奴等が多い事多い事。


そうだな、後は奴等に任せようか。

人情溢れる所だからなここらは。うん、俺が去れば奴等は喜んで介抱しに来るだろう。


そうだな……。奴等がこのアホ共を介抱しやすい様に、俺も少し協力しておくか。


「や、やべでぐれ……。アゴが割れでる……。で、でぼ折れでる……。ゆるじでぐれ……」


足は大丈夫そうだな。なら足をイッとくか。

コイツはこれで良し。後の二人は……。えい! やぁ! とお! ホレ! よーしオマケだ。それ!


うーん。ナイフをくれようとしてた御礼は、これ位かな? 俺は何て甘いんだろう。

自分自身の甘さにヘドが出るね。ナイフを俺の身体に直接くれ様としてた奴等をぶっ殺さず、この程度のお仕置きで済まそうとするなんて、本当、自分の甘さが嫌になるよ。


しかしまさか帝国人にカツアゲにあうとは。

おじ様達は何をやってるんだ? 治安の向上にもっと力を入れろよ。


いや待てよ。昔は三回だったから、一回に減ったと考えれば治安は向上したのか? そうだな、六割~七割減ったと考えれば良くはなってるとも考えられるか?


まぁ良いや、さっさと行こう。

おっと、ナイフは回収しておかなきゃ。


再利用されたら宜しく無いからな。川なり何なりに寄付しておくか。さっ行こ。



ん? おー! 流石人情の街だな。

この冬の日に、地面でお昼寝しているあの三人組を心配して、周りから人が集まって来たぞ。


おっ、三人組の体調だとか、身体の負担になるからか、懷の重い物を抜いてあげてるんだな。

ありゃ。なーんだトンカチまで持ってたんだ。

うん、トンカチも重いもんな。そんな重い物を持ってたら身体の負担が増すもんな。


うんうん、お金も重いもんな。小銭とてその重さは負担になる。邪魔だよね。


あれは……。財布か? そうだよな財布なんて重い物は、推定病人には負担になっちゃうよな。


おいおい、人情溢れすぎだろ。財布をどっちが持ってあげるかで揉めるなよ。

お前達良い人か? 善意の気持ちからしてる事なのに、どっちが善意があるかで張り合うなって。


ありゃりゃ。あれは……。服を着てると辛そうだからって、脱がしてあげてるのかな?

皆が三人の服を脱がせてあげるって、それはちょっと過保護過ぎないか? 甘やかし過ぎだと思うぞ俺は。


しかし……。あの三人組は暑いとか言ったのかな?

三人共あっと言う間に、マッパになったじゃないかよ。あー、パンツだけは履いてるか。

おやおや、一人(ふんどし)の奴が居るが、その褌君はもしかしてかなり暑いんだろうか? 褌を外されて完全にマッパになったな。


もしかしてその褌は、洗濯してあげようとしてるのかな? 急いで洗いに行っちゃったぞ。

正に電光石火、介抱? 介護? してた奴等が全員居なくなっちゃったね。君達は恥ずかしがり屋さんみたいだね、礼も言わさずあっと言う間にみな消えちゃったよ。


さてと、こんな人情溢れる所に居たら、また教育しなきゃならなくなる。俺はそこまでお人好しじゃ無いからな、 面倒だしとっとと行こうかね。


おいおい、俺を見つめるなよ。そんな目で見られちゃうと嬉しくなっちゃうじゃないか。

君達と遊んであげても良いけど、急いでるから雑な遊びになっちゃうぞ。


具体的には股間の蹴りあい遊び。但し先手は俺な。俺は子供だから、先にやりたがるんだ。

ありゃ、にっこり笑いかけたら、凄い勢いで逃げちゃった。傷つくなぁ……。

そんな顔をして逃げられると、なんだか仲間外れにされてるみたいだよ。

それとも恥ずかしがり屋さんだから逃げたのかな? そうだな、恥ずかしがり屋さんだったんだろう、そう思おう。


ん? また遊びたそうな目で、俺を見て来る奴等が居るな。仕方ないなぁ、ちょっとだけだぞ。

あらら、アレはさっきの親切な奴じゃないか。

三人組を介抱してたあの親切な奴め、俺と遊びたそうにしてた奴に何か言ってるね。


あっそうか! 自分の親切具合がみなにバレたら恥ずかしいから、だから止めてるんだな。

うーん、何故か顔色悪くして逃げちゃったよ。

にっこり笑顔で見返したのにな、逃げなくても良いのに。


おっ、自警団が居るじゃないか。少々顔付きが悪いと言うか、若干チンピラ顔だが自警団員か。


あれは夜遊び交流会の下の奴等かな? なら本職のチンピラか。一応腕章があるから自警団ではあるのだろうが人相が悪いなぁ。

だが我らのブライアンに比べたら、チンピラ度が足りんな。本職のくせ、素人にチンピラ度で負けるとはどう言う事だ?


もっと気合い入れてチンピラ道を突き進めよ。何で顔に傷があるのに、ブライアンよりチンピラ度が足りないんだろう?

ブライアンなんか顔に傷一つ無いのに、なのにお前らよりよっぽどチンピラ丸出しだぞ。


ブライアンを見習えお前達。気合いが足りんな、チンピラとしての心構えがなって無い。

チンピラが人相の悪さで負けてどうするんだ。


ん? 何かチンピラ自警団が増えて来たな。あっそうか、もう目的地付近だからか。あの角を曲がったらそうだな。

何かあっと言う間に到着したけど、途中で遊んだり、人情溢れる場面を見たりしたからか、退屈はしなかったからかも知れない。


しかしあの自警団達は一切声を掛けて来ないな。

これが一昔前なら、間違いなく声を掛けて来てたが、変わったって事か。


入り口はあそこだったな? まぁ良いやさっさと入ろう。


「おいちょっと待て。ここは立入禁止だ、場所間違ってないか?」


「間違って無い。ここだ」


「いやいや、ここは今日は、関係者以外立入禁止になってる。間違ってるぞ兄ちゃん。目的の場所言いな、教えてやるから」


あらら、この子俺より年下だよな? もしかして俺の事を自分より年下だと思ってないか?

まさか! コイツは俺の弟なのか? 父さんあんたまさか、まさか……。浮気してたのか?


何だと……。腹違いの弟が居たとは……。

母さんにバレたらヤバいぞ。


「兄ちゃん、別に取って食おうってんじゃ無い。そんなビビんなくても何もしねーよ。人には誰しも間違いはある。目的地を言ってくれたら教えてやるから」


「弟よ、間違いじゃ無いんだ。俺の目的地はここだ」


「弟? 兄ちゃん、オメー酔ってんのか?」


「素面だ、弟よ」


「いや、おい……。弟って……。オメーまさか葉っぱでもヤッてんのか? おい、この兄ちゃん衛兵の詰所まで連れてけ。どうも葉っぱでご機嫌な様だ」


失礼な弟だな。葉っぱなんてやってねーよ。

もしくはアレか? 我が父に捨てられてひねくれちゃったのかな? あり得るな、やさぐれちゃって、裏社会に飛び込んでしまったのか。


「苦労したな弟よ。これからは兄ちゃんが力になるぞ」


「いやもういいって。誰が弟だ。チッ、葉っぱやってる奴はこれだから……」


「いやお前弟だろ? だって俺の事を兄ちゃんって言ったじゃないか」


「いやだから……。あーもう! おいジョズ、コイツ早く連れてけ。衛兵には葉っぱでイッちまってるって、ちゃんと説明しろよ」


葉っぱどころか酒も一滴も飲んで無いわい。

まぁ良いや、遊んでないでさっさと入ってしまおう。


「ちょっと待てケント」


「ゲーブルさん、コイツ葉っぱでイッちまってるみたいなんです。今ジョズに、衛兵の詰所に連れて行かせようかとしてたんです」


おやおや、このハゲあの時のスキンヘッドか。ローガンおじちゃまんトコの奴だな。

大分老けたな。まぁあれから十年以上経ってるもんな、そら老けもするか。


「久しぶりだなハゲ。元気そうだな、お前中では無く、外担当ってもしかして下手打ちして降格したのか?」


「お久しぶりです……。自分が中では無く、外に居るのは、親父のボディーガードが変わったからです。今は自分の歳の事もあって、昔に比べたら動きも悪くなりました。なので違う若い奴が親父の()りについてます」


()りってのはお前達の専門用語だろ?

素人に言っても普通は通じないぞ。それよりもだ。


「あーそうか。まぁ良いや、奴等はみな中に居るんだろ? 入るぞ」


「待って下さい、今日来られるとは聞いてません。前以て許可の無い者……。方を中に入れる事が出来ないんです」


「アポ取れってか? いやだなぁ、俺と奴等の仲じゃないか。とりあえず喉乾いたから茶飲みたいし入るぞ」


何がアポイントだよ。それなら奴等が大好きな、サプライズにならないだろうが。

こう言うのはインパクトが大事だ。自分のペースに持って行くには、ちょっとした驚きは必要だからな。


「待って下さい。親父に、上に伺いを立てて、許可を取ってからでないと入れる事は出来ません。少し、少し待って下さい」


「面倒。無理ならどの道そのまま通るけど? 五十人位か? まぁ良いや、多少時間は掛かっても、お前達を全員昼寝させる事位出来るしな。中にも同じ位居るだろうが問題ない。今日は面倒だから魔法使うし、入るのにそんなに時間も掛からないだろうし」


「・・・」


そんな困った顔すんなや。お前の立場上、許可の無い奴を入れる事が出来ない何て、分かってんだよ。

仕方ない、サプライズは失敗か。なら譲歩してやるか。


「仕方ない、お前の顔を立ててやる。奴等に俺が来たと言ってこい。ゴネたり、拒否しやがったらこう言え。おじちゃま達に会いに来たのに酷いよ。そんな事言うならボク、無理やり入っちゃうぞってな。今日は魔法も使うから、あん時よりも早くお前達の居る所まで行けるとな」


「分かりました……。伝えて来ます。少々お待ち下さい」


「おう。それとボディチェックも免除で。拒否したら分かってるんだろうな? ともついでに伝えてこい」


「分かりました……。伝えます。おいお前達、この方に下らない事を言ったり、絡んだりするなよ! 客人に粗相をして、親父達に恥かかす様な真似はするなよ! では、伝えて来ますのでお待ち下さい」


「おう、行ってこい」


さて、久々だな。あのきったねーツラを拝むのも。

懐かしい再会まであと少しだな、おじ様達。

17時にも投稿します。

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