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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第195話 後ろ姿


「ネイサン、海老無いわね」


「そうだね、でもどこかで売ってるはずだけど、もしかして今日はあんま獲れ無かったのかな?」


まだ全部店を見た訳では無い。まだまだ一部だけだ。だが少し位は取り扱ってるはずだが、これだけ見ないと言う事は、今日は全体的にいまいち海老が獲れてないのかも知れないな。


何だろう、無いとなったら余計に食いたくなるこの現象は? しまったな、ブライアンの奴に聞けば良かった。

アマンダの店も見つからないし、本当広すぎだよなここって。


まぁ良いや、ぶらぶらしながら探したら良いか。

ばあちゃんは鯛の良さげな奴を二尾買ってた。

型も良く、結構大きな鯛だったが、何に料理するんだろ? 切り身にしてオーブンで香草と一緒に焼くのかな? それともスープかな? 何にせよ美味そうな鯛だったな。うん、夕飯が楽しみだ。


「ネイサン見て、あのイワシ美味しそうよ」


「本当だ、脂がのって美味そうだね。そっか、今丁度旬の時期だもんね」


フライにしたら美味そうだな。つみれも良いな。

待てよ、フライならアジも良いな。いや、アジなら塩焼きも良い。うん、アリだな。


「ちょっと買っちゃうわ。待っててね」


「うん、あっ!」


「どうしたのネイサン?」


「いや、ホラあそこ見てよばあちゃん。甘エビだ」


「あらぁ、美味しそうね。あれも買っちゃう?」


「うん、てか俺が買って来る。ばあちゃんはそっち頼むね」


おいおいおい、店いっぱいに山盛り売ってるじゃないかよ、正に大漁だな。

そう言えば今は甘エビも第二の旬か。と言っても年間通して獲れる訳だが。おっ、卵持ちと分けてるな、一部卵持ちと混ざってるが両方買えば良い。


卵持ちは素揚げにすると、卵が弾けるかな? 衣をつけて天麩羅か、片栗粉で唐揚げにしても良いな。

だが一番は生だな。うん、醤油もあるし、レモンを掛けたやつも良いな。塩を軽く振ってってのも良い。食べ方は無限大だ。



「ネイサン結構買ったわね」


「うん、卵持ちのやつと卵無しのと両方買った。悪いがマリア、持っててくれるか? そんなに重くないがちと嵩張るんだ」


「分かりました」


うーん、端から見たら年寄りに持たせるバカなボンボンみたいに見えるんだろうなぁ。

だが極力両手は空けておきたい。それに牡蠣を買うとなると、俺が持つ事になるだろうしな。それに魚醤の壺も持たなければならない。

どうせ帰りは俺が一番荷物を持つ事になるんだ、今は楽をさせて貰おうか。


それにミザリーの旦那のトムは、既に両手に持ってるし、これからも細々(こまごま)と荷物を持つだろうから仕方ない。うん、今は手ぶらでも仕方ない。


「久々に来ると、何やかんやでつい買っちゃうわね。五人で持てるかしら?」


「それは何とかなるよ。今の所と言うか、予定ではだけどね」


青空市って楽しいもんな。祭りの雰囲気があって、熱気ってのを感じられる。

それこそ、買わずに見てるだけでも楽しい。まぁ俺達は買うがな。


「ネイサン、さっきの子が言ってた店って、見つかりそう?」


「んー その内見つかるとは思うけど」


ブライアンが嘘をつく訳は無い。てか理由も無いしな。とは言えもう少し時間が掛かるかも知れないが。


それにしても……。気のせいか更に人が増えてないか? ちょっと混み具合が酷いぞ。


「みんなスリに気を付けて。こんな混み具合だ、奴等にとっては絶好の機会だからね」


「本当ねえ、気を付けないと。今の時間はお店が開いて直ぐだから、混み具合が凄いわね~」


衛兵が巡回してるが、やる奴は関係無しにやりやがるからな。まぁ…… 俺にやり腐ったら、指が回ってはいけない方向に向けてやるがな。

うん、へし折るだけで無く、骨を砕いて二度とお仕事が出来なくしてあげよう。ん?


「ばあちゃん、見つけたよ」


確かに魚市場側だが、海沿いの方か。

入り口から一番遠い場所だったんだな。あの場所はハズレになるのかな? でもあの辺りも人が多いし、あんまり関係無いのかな?


「ネイサン、もしかしてあそこかしら?」


「細かい場所を言って無いのに何で分かったの?」


「だってネイサンが言ってたでしょ? 凄い美人だって。本当に凄いわね~ ここから見ても美しさが分かるわよ」


なるほど確かにそうだ。アマンダの美しさって際立ってるよな。おっ、隣にはマーラと旦那が居るじゃないか。

店が隣同士なのは一緒に来て、一緒に申請したからかな? ん? 良くみると村の奴等があの辺りに固まってるな。


そりゃそうか、ある程度纏まって一緒にこっちに来てるんだ、同じ様な場所になるわな。

変態は…… 居ないな。良しよし、とりあえずは大丈夫そうだ。


「ネイサン、あの子が一夜干しの子よね?」


「そうだよ、言ったでしょ」


「若い子ねー。あんなに若いのに良い腕してるわね」


「アマンダは俺と同い年だよ」


「あらそうなの? そんな歳には見えないわね。ネイサンもそうだけど、あの子も凄く若く見えるわ」


だね、来年三十になる何て信じられないよね。

客が女ばっかだからか、アマンダは笑顔で接客してる。うん、まだ一週間も経ってないのに、何か一年ぶりみたいな気がする。

変なもんだよ、ほんの少し離れてるだけなのに、何でそんな事考えるんだろうな?


「あれ、守長どうしたんだ?」


「ん? 本当だ守長だ」


「どうしたの? 買いに来たの?」


コイツら、いっぺんに声を掛けても分かりにくいぞ。まぁ俺がここに居るのは、珍しいからなんだろうが。


「おう、買い物だ。バハラで世話になってる一家と一緒にな」


「そうなんだ、なら買ってってよ」


「海老があれば欲しいんだがな。それとマグロだな。後このばあちゃんが、アマンダが作ったイカの一夜干しが美味かったからって言ってな、買いに来たんだ」


「そうなの? 今日は村で海老が獲れた奴居ないんじゃないかな? マグロも揚がって無いと思う」


やっぱか。パッと見、海老もマグロも見当たらない。これは今日は海老もマグロもダメかもな。


「なら仕方ないな、今日はアマンダの店で一夜干しを買うだけにしとく。それとアイリーンばあさんのイカの完干しをだな・・・・・・」


~~~


「分かった、皆にも言っとくよ。アマンダはあの端に居るよ」


「ん、頼むぞ」


これでこれからは、ばあちゃん家の購入の件は終わりっと。

アマンダの開いてる店混んでるな、ついでにマーラの店も中々の盛況ぶりだ。やっぱアマンダの一夜干しは評判良いんだな。


「ネイサン、赴任してる村の人達と上手くやれてるみたいね」


「もう一年以上居るからね。基本的に村の奴等は気の良い奴も多いしね」


ばあちゃんてば、心配してくれるのはうれしいけど、俺は子供じゃないんだから。


「私もクランツもね、ネイサンが帝都から灯台に赴任する事になって、心配してたのよ。正直あまり良い赴任とは言い難かったでしょ? 落ち込んでるんじゃないか、それで村で上手く溶け込めないんじゃないかって。それに都会から田舎に行くと、色々違いがあるじゃない。でも実際見て安心したわ。上手く溶け込めてると分かって」


「前も言ったけど、今の灯台勤務も悪くないんだよ。毎日何やかんやで楽しく過ごしてるし」


若干問題はあるが、今の生活は悪くない。

そうだな、日々充実はしてる。


「安心したわ。後は相手をみつけて結婚してくれたら、言う事無いわね」


「・・・」


しませんよ。もう…… 家の親みたいな事言うんだから。だけどこの世界では、俺の歳で結婚せず独身ってのは、何か問題アリの人間って思われるから、ばあちゃんの言ってる事はある意味間違っては無いんだよなぁ。


しかしアマンダの店は盛況だな。人だかりが途切れるまで待つか。


「混んでるわね」


「評判良いんだろうね。それにこっちには滅多に来ないみたいだから、それでだと思う」


ん? マーラと目が合ったぞ。マーラのとこは今居る客で最後か? マーラに先に声を掛けるか。


「守長じゃないかね、どうしたのさ? 買い物かね?」


「そうだ。マーラ実はな・・・・・・・・・」


~~~


「なるほどねぇ、分かったよ、そこの奥さん達が来たらそうするよ。後はそうだねぇ、前以て言ってくれたら次の日か、その次の次の日に渡せる様にしとくよ」


「頼むぞ。しかしアマンダの店は混んでるな」


「アマンダもここに滅多に来ないからねぇ、評判が良いから勿体ないとは思うけど……。まぁ良いさね、で? うちでは買わないかね?」


「そうだな…… ばあちゃんどうする?」


「そうね……。あれ鱈よね? 美味しそうではあるけど、今日はもうメニューは決まっちゃったから、明日以降になっちゃうのよねえ。寒い時期だから一日位なら大丈夫とは思うけど、傷みやすいものね」


「そう言えば鱈って傷みやすかったね、でも痛むのが早いけど、今の時期なら大丈夫と思うよ。それに俺が氷を出すし、大丈夫じゃない?」


別に氷なんかいくらでも出せるし、冷蔵庫モドキに入れとけば全く問題ない。

マーラが持ってきた鱈は、ばあちゃんが言うように美味そうだ。フライにしたら最高だな。

うん、フイッシュアンドチップスにしたら酒が進みそうだ。


「そうね、じゃあ買っちゃおうかしら?」


「はい、まいど」


マーラの奴嬉しそうだな。しかしマーラの店もアマンダの店も、卵が結構あるな。空きスペースから見るに、卵はもう半分位は売れてるみたいだが、こんな早い時間にもう半分売れてんのか。

マーラのとこは、魚とかも四割近く売れてるし、商売繁盛だな。


アマンダは一夜干しがメインか。もう半分近く売れてるが、こんな端の所で良くこんなに売れるもんだな。固定客が居るのかな? 滅多に来ないのに凄いな。


「守長、タコはどうだ? 身が締まって美味いと思うぞ」


「タコなぁ……。ジャック、美味そうだが今日はいいや。海老かマグロがあれば、あるだけ買ったんだがな」


「今日は村でもそうだけど、全体的にあんま獲れて無いみたいだ。マグロも俺は見て無いな。マーラ、お前見たか?」


「アタシも見てないねぇ」


だよなぁ。マグロは魚市場の方に卸してんだろうな。しかし海老を見てないのはおかしいな? まだ全体を見てないから何とも言えないが、明らか少ない。海老系は、さっき買った甘エビしか見てないもんな。


ロブスターもそうだが、伊勢海老なんかは思いっきり時期なのにな。

こっちの世界では、海ザリガニ(ロブスター)棘鎧(伊勢海老)って言うが、世界が変わると言い方が変わる典型例だな。


うーん、まだアマンダの店、客が()けないな。あっ、アマンダと目があった。

今の表情から察するに、今俺の存在に気がついたな? まぁあんだけ客が居て、忙しかったら仕方ないか。


チラッと魚市場側を見ると、大灯台の先端が見えた。この位置から、しかもこの角度から見えるって、本当に大灯台は巨大な建造物だよなぁ。この世界では異常とも言える大きさだ。


後の世まで残ってたら、世界七不思議とか言われるのかも知れないな。オカルト系とかミステリー系の雑誌やネットで、どうやって造ったんだって言われたりするのかな?


それは無いか。文献だって残ってるし、書類系も資料も残ってるし。何なら本だって世に出回ってるしな。とは言え大灯台は軍事施設でもあるから、機密情報が世に出回ってはいないが。


「守長」


「おー、やっと客が捌けたか。アマンダ、実はだな、一緒に居るこの人は・・・・・・・・・」


~~~


「うん、分かったわ。私が来ない時は誰かに頼むね。村の誰かに言ってくれたら次からは用意しとくね」


「頼むよ。ばあちゃん達が美味しかったって言っててな、これからちょこちょこ頼む事になると思う」


「今日はもう三つしかないけど……、私ね、明日も来ようかなって思ってたから、何なら明日持って来るけど?」


「珍しいな、アマンダが連日こっちに来るなんて」


「うん…… 何となくね」


まぁそんな気分の時もあるか。しかし明日か。


「明日来るなら俺が取りに来るよ。ばあちゃん、明日俺がここに来るよ。どうせ休暇だし、時間はあるんだ。散歩がてらにね」


「散歩がてら? こんな寒い時期に……。散歩がてらって、歩いて行くの? 家からここまでまぁまぁ距離があるわよ」


ばあちゃんてば、心配そうにして……。俺は子供じゃないんだけどなぁ。てか来る時ばあちゃん家まで、歩いて行ったんだけど忘れてるのかな?


「多少距離があるのは分かってるよ。気分転換になるし、何より家でゴロゴロしてたら運動不足になるからね」


「うーん、ネイサンがそう言うなら。でも夕飯までに帰って来るのよ」


もう、ばあちゃんてば、本当に俺の事を子供だと思ってないか?


~~~


「・・・」


「アマンダ、どうしたのさ? 守長の後ろ姿を見つめて?」


「うん…… 何でも無いよ」


あーあ、アマンダは気付いてないのかねぇ。

こんなに連日ここに来る何て、今まで無かったじゃないのさ。


しかも明日も? アタシには明日は来ないって言ってたのに、まさか忘れてるのかねぇ。

違うね、多分咄嗟に言っちゃったんだろうね。


これは自分の胸の中の気持ちに、そうだねぇ、自分自身の心の奥深くの気持ちに、気付いて無いか、それか気付かないフリをしてるのか、判断が難しいとこだねぇ。


ここに来るのを嫌がってるのは、あまり来ないのは、しつこく言い寄る男が煩わしいからなのに。

だから必要最低限にしか来ないし、極力来ない様にしてるのに。それなのにねぇ……。


まぁ良いさね、こう言う事は積み重ねが大事だからね。一歩一歩進んで行けば良いんだよ。

今までその一歩すら、あれから歩んで来なかったからねぇ。そう考えると良い事さ。いずれ自覚するさ、なるようになるさね。

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