第190話 ポラポラ海洋王国の下魚達
コイツらあんな程度で戦意喪失とは情けないな。
俺の言葉がハッタリと思わなかったのか?
いや、違うな、先に倒した二人、あの二人がコイツらのリーダー格だったんだろう。
それと多分だが、あの二人は力自慢か何かで、リーダー格にしてケンカの強い奴、そんな奴等が一瞬で倒されたから、だから戦意喪失したのかも知れない。
『なぁ、助けてくれ…… ほんの出来心だったんだ』
『何が出来心だ? はなっからヤル気だっただろ? どうせ何回もこんな事やってたくせ。まぁ良い、お前ら頭が高い、控えろ』
コイツら何困惑してんだ? 頭が高いって意味が分かって無いのかな?
『どうした? 意味が分からんのか?』
『すまん! 俺達はどうしたら良いんだ? 頼む、アンタに従うから殺さないでくれ!』
『チッ……。まずその汚いナイフを右斜めに放れ、そして跪け。次に両手を頭に乗せろ。ナイフを俺に投げても良いぞ、運が良ければもしかして俺に刺さるかも知れないが、どうする?』
『分かった従う、ナイフもきっちり捨てる。だから、だから殺さないでくれ』
「・・・」
コイツら、いや、コイツは特に俺に対してビビってるが何でだ? てか殺さねーよ。そこまで教えてやらんがな。
『おい、ちゃんとアンタの言った通りにしたぞ、だから、だから殺さないでくれ』
『・・・おいお前、あそこでズブ濡れになってる奴を連れて来い、ちゃんと武器を捨てさせろよ、もし隠し持ってたら連帯責任だ。そうだな…… もし逆らったり、武器を隠し持ってたらお前の股の間にブラ下がってる汚いモノを潰そうじゃないか』
『分かった従う、従うから止めてくれ! 本当に頼む』
『ちなみにお前だけ逃げても良いが、その場合は股の汚いモノを切り取るからな』
『分かった、逃げねえから、逃げねえから、だから止めてくれ、逃げたりしない信じてくれ!』
さて、連れて来たら尋問開始だ、だがその前にやらなければならない事がある。
『なぁ、連れて来たぞ』
『おう、武器を隠し持ってたら』
『ちゃんとコイツを確認したから、だ、大丈夫だ』
『そうか……』
コイツ食い気味に答えやがったぞ。どんだけビビってんだよ? 尋問はしやすいから良いが。
『頭に両手を乗せたら良いのか?』
『さっき言った通りにしろ。コイツも同じ様にさせるんだ、分かったな?』
『分かった、やるから、やるから殺らないでくれ』
『足が痛くて跪くのが辛いんだ…… 勘弁してくれ』
『黙れ、自業自得ださっさとヤレ』
『分かった……』
しかしコイツら汚いなぁ……。しかも臭い! 仕方ない、足を挫いたこのアホだけで無く、他の奴にもやってやるか。その前にと。
『おい、今からお前らに近付くが、アホな事を考え反撃してくるならしろ。但し間違いなく失敗するがな。お前達が俺を掴む前に膝を鼻に叩き込んで潰す。もしくは喉を潰す。俺はやると言ったらやるからな』
『やらねえ、やらねえから、なっ、お前達』
うーん、四人共凄い勢いで頷き出したぞ。素直になったから良しとしとくか。
『良し、良い子だなお前達。なら先に済まそう』
まずは冷水をブッ掛けた奴に乾燥を掛けてと、次に四人全員にクリーンを掛けてと。
『えっ? 何で?』
『はぁ? 何でもクソも、あのままじゃお前凍え死んでたが? 凍え死にたいなら又冷水を掛けてやるがどうする?』
『いや、止めてくれ……』
だよな、街中で凍え死ぬなんてアホな死に方したくないよな。
『なぁ、もしかして俺達に清浄魔法を掛けたか?』
『ん? 掛けたが? てか今も掛けてるよ。理由はお前達が汚いし臭いから。大事な事だからもう一回言う。お前達がとてもとても臭いから掛けた』
うん。十回程掛けたがこれで大丈夫かな? 汚れも取れてるし、匂いも無くなった。
クリーンは一回で完全に綺麗になったが、こんな汚く臭い奴等の近くに居たく無いからな、気分的に嫌だったから十回掛けたが、コレは俺の潔癖症がさせた事だ。さてと、やっと尋問開始出来る。
『で? お前達普段からこんな事やってんのか?』
『『『・・・』』』
『沈黙は肯定とみなす。お前達が俺を狙った理由は? 正直に答えないとこの氷をお前達に乗せる』
『そんなの乗せられたら潰れ死んじまうよ! 分かったから、話すから』
一メーター四方の氷をコイツらの前に出したが、効果は絶大だな。真っ青な顔して答えたぞ。これなら何を聞いても、それこそ家族構成から初体験の事まで事細かくペラペラ喋りそうだな。
『で? 俺を獲物に選んだ理由は?』
『その…… アンタは周りをキョロキョロしてただろ? だから田舎から出て来た世間知らずのおのぼりかと思ったんだ、だから……』
『やっぱか。ちなみにアレはわざとだぞ、ああすればお前達が襲って来ると思ったからだがな』
『・・・』
コイツやっぱりかって顔に書いてあるぞ。分かっててもやったのは、人数が多いからイケると踏んだんだろうな。
『おいお前名前は?』
『えっ? ガジラだけど。いや、嘘じゃねー、本当だよ信じてくれ!』
『お前ガジラって…… 何でポラポラの奴がエピリ共和国風の名前なんだ? 正直に答えないと……』
『本当だ、信じてくれ。俺のじいさんがエピリの人間なんだよ。俺の名付け親がじいさんで、そんでエピリ風の名前なんだ、本当だ!』
コイツ又食い気味に……。しかしガジラ? ビックリするわ、まさか又あの名前を聞く事になるとは…… 何か縁のある名前だな。
エピリのガジラはどうしてるかな? 元気でやってるんだろうか?
『なぁ信じてくれ、嘘じゃ無いんだ』
『俺の知ってる奴と同じ名前でな。そうか…… で? お前達は何故帝国に来た? 強盗、追い剥ぎ、犯罪旅行か?』
『最初はそうじゃ無かったんだ。だけど仕事は見付からないし、金も底をついて…… それで……』
『有りがちな話だな。迷惑な話だ、うちの国が豊かだからって帝国に夢を見過ぎだ。おかげでバハラの治安は乱れまくりだぞ』
『それは……』
『チッ……。で? 何で国を出た? ポラポラはかなり乱れてるってのは聞いてるが』
『乱れてる? 違うね。もう何時崩壊してもおかしく無いさ。皆の不満が爆発寸前だよ。俺達が国を出た時も不満が燻ってた、だけど足をイッちまった奴、プタルって言うんだが、アイツは三ヶ月前に此方に来たんだが、何時爆発してもおかしく無いって、俺達平民が反乱を起こすのも時間の問題だって言ってるよ。クソ! 王も貴族共も俺達平民を奴隷以下、いや、下魚以下にしか思ってやがらない、クソ!』
多分ポラポラは革命が起きるだろうな。ポラポラの支配層はやり過ぎたんだ、秀吉みたいに農民は生かさず殺さず位でやれば良い物を…… まぁ他国の事だ、暗愚な王や貴族、アホな支配者達が居る国は大変だよな。
うん、他人事だし、俺は神でも何でも無いんだ、聖人君子でも無いし、ましてやどうこう出来る訳でも無い、気の毒だとしか言えない。
『そうか、だがそれはそれ、これはこれだ。気の毒だと思うが、お前達の被害に遭った奴等には全く関係ないよな? バハラにおける現在の治安の悪化原因は、主にお前達南方諸島からの食い詰めた奴等が引き起こしてる。お前達の国がクソみたいになってるからと言って、俺達に関係ないよな? 国がクソみたいになったから、だから帝国で悪さをしても良い何て、俺達が思うと思うか? 迷惑だな』
『・・・』
『だんまりか? まぁ良い、お前達が俺をつけてた時、スリらしきガキが俺を狙ってたが、お前達を見て止めたよな? お前達は横の繋がりがあるのか? それかあの辺りの小悪党共は組織化しつつあるか、どうなんだ?』
『・・・横の繋がりと言うか、あのガキは只の顔見知りだよ。組織化は俺らはしてない、してるトコもあるらしいけど詳しくは分からない』
嘘は付いて無い様ではある。だが一応カマしとくか。
『お前本当だろうな? もし嘘なら氷遊びさせるが? それか熱湯遊びが良いかな? 選ばせてやる、どっちがお好みだ?』
『嘘じゃない、本当だ』
『なら何であのスリらしきガキは、お前達の顔を見て止めた? 嘘偽り無く答えろよ、じゃないと分かってるな?』
『嘘じゃ無いんだ、あのガキは前にもやらかして、それでだよ』
『あのガキは何をやらかした?』
『ああ、あのガキだが、決まり事と言うか、暗黙の了解ってのが俺達にもあって、仕事の最中に他の奴が横槍を入れないってのがあるんだ。つまり今回の件は、俺達が先にアンタを獲物にして…… アンタから頂こうとしてただろ? 先にやってる最中に、邪魔しないってのが暗黙の了解であって、あのガキは前にそれを破ってやらかしやがったんだ、それでお仕置きして分からせてやった事があって、だからだよ。だから俺達の顔を見て気付いて止めたんだ』
暗黙の了解ねえ、分からんでもないが、それって緩やかに組織化が始まってる兆候だろ? ルールが決まりつつあり、それに従ってるって事は誰かが声を掛ければあっと言う間に組織が出来上がるぞ。不味いな…… 予想してたとは言え、思ったより事態は深刻なのかも知れない。
『お前さっき他の所では、組織化してるって言ってたが、組織化の話は良く聞くのか?』
『いや、良くは聞いてない。だけどしてるって話はチラホラ聞いたりしてるかな? だけど噂話程度で詳しくは分からないんだ』
『チッ……。おい、暗黙のルールってお前言ったよな? その暗黙のルールは他の奴等のトコにもあるのか?』
『それはドコでもあると思う。俺らは横槍入れないってのが暗黙のルールだけど、確か聞いた話じゃ獲物が被った時は話し合いとか、順番を予め決めとくとか…… アレ? 順番を予め決めとくのは暗黙のルールじゃ無かったかな?』
噂話か。だが間違いなくしつつあるし、雛型みたいなもんは出来つつあるんだろうな。コレこの先面倒な事になるぞ。
『おい、今バハラではお前達小悪党達に厳罰をって、言われてるが知ってるか?』
『噂話には聞いてる』
『もしそれが実行されるなら、そうならお前達はどうする? お仕事を控えるか?』
『控える事は無いと思う。俺達も食ってかなきゃ死んじまうし…… ただ、もし厳罰化されたら仕事はやりにくくなるとは思う。流石にその場で即、殺されたら堪らん。控えはしないけど躊躇いみたいな物は出て来るかな? いきなり首をはねられると思うとビビるよ……』
一定の抑止力にはなるか……。前世で言う所の火盜改めの様な物を創設する、あの案をケレイブ・カーンに伝え、バハラ限定法で作り出す、ならイケるかな?
先帝陛下がお隠れになられなければ、もしまだ御健在であったなら、帝都で誕生してたかも知れない組織だったんだがなぁ……。
この火盜改めの様な機動力と権限がある組織は、組織が腐敗した場合面倒な事になるから、慎重にって、そう思ってたら結局出来なかった。
作るにしても予め期間を決めておき、解散時期、もしくは目的を徹底させなければならない。常設は止めとくべきだな。
問題は、この案を今回派閥争いで勝利した側で知ってる奴が居たら、感情から反対されるかも知れない点か? そん時はそん時だ、バハラ限定法、バハラのみの限定法で対処するしかないな。とりあえず囮捜査は有効だ、コレは必ず採用させる。さて、まだ聞かないといけない事はあるな。
明日も投稿します