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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第188話 追跡者


「ネイサン、本当に馬車で帰らないのか?」


「少しブラブラしてから帰るからいらないよ。そのつもりで馬車に便乗したんだし」


「そうか、分かった。ネイサン、最近バハラも物騒になってきたから気を付けるんだぞ」


「分かってるよ。ホラ、入り口の前で立ち話してたらオークションハウスの警護の奴等が困るから、さっさと行きなよ」


「そうだな。ネイサン、今日も早く帰るつもりだから、お前さんも遅く迄ブラブラしないで早く帰って来るんだぞ。今日こそは飲むぞ」


「分かってるよ、ホラ行った行った」


じいさんがオークションハウスに入って行った。これで一安心だな、これからは俺の自由時間だ。


本当は俺もじいさんと一緒に行きたかったが、身バレ防止の徹底の為、泣く泣くオークションハウスの中への同行は諦めた。

中に入り、色んな話を聞いたり、オークションハウスの中を見て見たかったが、そんな事をしたら俺が出品者ってのがバレる可能性が出てくる。


今日の俺は、久々のバハラを満喫する為に、じいさんの馬車でここ迄乗せて来て貰っただけの、只の同乗者って事になってる。

だがそれは嘘では無いが、もっと大事なもう一つの役割がある。それは出品物の護衛である。


物が物だけに、念の為俺がここ迄護衛して来た。

じいさんが中に入ったので俺の護衛の任は終了だが、馬車でここ迄来るのに少しだけだが緊張感はあった。


じいさんも言って居たが、最近バハラは物騒だからな。小金目当ての強盗が出るんではないかと、そう思って警戒してたが、杞憂であった為少し拍子抜けしてしまった。

気を抜くより緊張感を、そう思って居たが、何事も無く終わり、今は謎の解放感がある。


しかしじいさんのあの格好……。物がデカイから荷物も大きくなってしまったが、端から見ると少し奇妙な出で立ちだったな。

貝殻に龍涎香そして真珠と、三つの内二つが大きいから、大きな背負子を背負い、手には厳重に梱包された謎の品物を持って居た為、事情を知らない奴から見たらかなり不審者の様に見えた事だろう。


それか行商人に見えたかも知れないな。まぁ、アレらを無事にオークションハウスの中に持って入った今では、笑い話ではあるが。


何だろう? さっき迄あの格好で真面目な顔してたのが、今ではおかしいって思ってしまうのは? 反動かな? まぁ良いや、自由時間を楽しむか。


~~~


しかし身形(みなり)の悪い奴が増えたな…… この一年でかなり増えてないか?


チッ…… ジロジロ見て来やがって。鬱陶しいな、まさかと思うが、俺の事を獲物だって思ってやがるのか? 思ってるんだろうなぁ……。

多分だが、懐かしさから俺がキョロキョロしてるから、田舎から出て来た世間知らずってでも思ってるのかも知れない。


こんな大通りで仕掛けて来るかな? 来るかも知れない。多分裏道にでも入れば間違い無くやるだろうな、コイツらは。

強盗? 追い剥ぎ? それともカツアゲか? スリでは無いか? 何にせよ小悪党どもが、小金目当てにいけないお仕事をしそうな雰囲気ではある。


うーん…… 誘ってみるか? 裏道、それも人が余り通らない裏道にでも入ってやろうかな? あんな素人丸出しのチンピラ未満、何人来ようと敵では無いし、この辺りの地理はバッチリ覚えて居る。


人気(ひとけ)が無いって事は、あの小悪党達にしてみれば絶好の仕事場かも知れないが、俺にとっても誰にも邪魔されず、お仕置き出来る場でもある。

てか衛兵や軍人、それに自警団の奴等は、囮捜査とかはして無いのかな? やればアホ共が大量に釣れると思うんだが? 囮捜査を提案してみるのも良いかも知れないな。


しかし視線が鬱陶しい、マジでやってやろうか? 人の休日を邪魔するかの様な事しやがってからに。久々のバハラなんだぞ、折角楽しい気分で居たのに、台無しじゃ無いかよ。


これ見よがしにキョロキョロしよう、驚いたフリをしてみよう。うん、あのアホ共め、完全に俺の事を獲物だって認識しやがったな。

何だろう、何か逆に楽しくなって来たぞ。コレ俺が人気の無い場所に行くのを待ってやがるな? 面白い、少しおちょくってみるか。


「バハラって都会って聞いてたけど、想像以上だなぁ…… 凄いなぁ」


うーん、後を着けて来てるアホ共もしかして帝国語は余り分からんかも知れないな。そうであるならさっきのは失敗だったか。

なら万国共通であるボディランゲージ、ジェスチャーでやってみるか。


とりあえず更にキョロキョロして…… そんでたまに立ち止まり、驚いて周りを見てっと……。


うーん…… さっきより更に目付きが血走って来てるぞ。もしかして、さっさと人気の無い裏道に行けとでも思ってるのかも知れないな。


ここで俺がダッシュでこの場から去って行ったら、どうなるんだろう? 慌てて追い掛けて来るかな? だが追い付けそうで追い付けない位で走った場合、奴等は何処まで追い掛ける事が出来るんだろうか? とりあえず少しダッシュしてみよう。


二十メーター程ダッシュして立ち止まった。

そして又キョロキョロしてみたが、奴等慌てて追い掛けて来やがったわ。あのアホ共の顔よ、かなりイライラしてやがる。


多分だが、あいつは何をしてんだ? 何故突然走り出した? 何なんだって思ってるんだろうなぁ。

うん、意味は無い。しいて言うならおちょくってるだけだ。ついでに言うと、最終確認でもある。


これであのアホ共は、俺を狙っているのが確定した。はい、有罪。後は人気の無い所に行けば完了だ。だがその前に少し人間観察をしてみよう、観察対象はあの小悪党達だ。


キョロキョロしつつ周りを見て、突然奴等の方を見る。さっと俺から目を反らし、かなり不自然に周りを見たりしてやがる。うん、お前ら挙動不審だぞ、怪しさ満開だよ。


突然方向転換し、奴等の方に歩き出す。そして又、何の脈絡も無く方向転換し、元の道に向け歩き出してみた。

奴等めギョッとした顔してやがったな。今頃後ろでは、無茶苦茶イライラしてる事だろう。


しかし奴等挙動不審だな、いやまぁ俺も端から見れば挙動不審だから、どっちもどっちだとは思う。

だがこれは必要な事だ、遊んでるだけでは無く、囮捜査に必要な事を知る為の行為であり、囮捜査におけるマニュアル制作の為にして居る。


やはり現場において、実地でやると色々な改善点と言うのが分かるからな。この様な事は、机に座って考えるだけでは、決して見えない点ってのがある。


実際に体験しないと分からない事ってのは、案外多かったりする。実際の現場での経験であるとか、体験でしか分からない事、それを知る為にやって居る訳で、俺は只単に遊んで居る訳では無いのだ。


それにしても…… おかしいな? 時間が朝だからか、衛兵どころか巡回の軍人達と一回も遭遇していない。


自警団は、道を挟んだ向こう側には居たりしたが、こちら側の道ではまだ一回もすれ違って無い。大通りなのに変だな? いや、大通りだからか。


多分だが、裏道や大通りから一本入った辺りを重点的に、巡回してるんだろう。朝の早い時間帯だからってのもあるんだろうが、根本的な問題としてバハラの街の規模に対し、自警団の数が足りて居ないのかも知れない。


身形の悪い奴等は確かに増えているが、流石に大通り、表道だから目立つ様な悪さは不味いって、思ってるのだろう。そう考えれば今俺を獲物と認識して、追跡して来ているあのアホ共は、余程追い詰められており、正に食うに困ってる奴等かも知れないな。そうなると無茶な事も平気でやりやがる奴等かな?


もう少し揺さぶってみるか。さて…… お誂え向きに細い道がある。さっとダッシュで細道に入り、又さっとその細道から出て、大通りを普通の顔して戻ってみた。


うーん、あの焦った顔よ、そして今の俺の不可思議な行動でイライラ度マックスになっただろうな。もしかして奴等、俺が葉っぱでも吸って頭がイカれてるとでも思ったかもな。


さぁどうしよう。人気の無い裏道はもう少し先にある。大通りから一本入り込んだ道で、更にそこから細道に行けば、奴等は大喜びするんだろうな。それにその辺りは元々治安があまり良く無いと言われている所でもある。


だが反面、気を付けないと巡回の衛兵や軍人、自警団が直ぐ来てしまう。本来であれば治安向上って意味では良い事なんだが、俺が今からやろうとしてる事を考えると気を付けないといけない。だがあの辺りであれば直ぐには来ないはずだ。大通りからも離れており、中に入り込んだ場所だからな。衛兵や軍人、自警団が来る迄に時間は十分にある。俺にとっては運が良く、奴等にとっては運の悪いそんな場所だ。


それにしても…… 推定スリらしき奴が居るが、全く俺に近寄って来ないな…… 多分だが、俺を追跡している小悪党共が目を光らせているからだろう。


もしかして、この小悪党共は横の繋がりが強いのかな? それか、この辺りを縄張りにでもしてるんだろうか? もしスリが今来たら、あの小悪党共は追跡を止めるかも知れない、それは少々興醒めだ。だが素人のスリ程度であれば、身体を捻り極自然にかわす事が出来る、問題無いな。


少し無駄に立ち止まってみようかな。おっ、あの追跡者共め、かなり不自然に周りを見たりしてるフリをしてやがる。演技力0かよ? ん? スリらしきガキがあの小悪党共を見て、俺に近寄ろうとしてたのをヤメやがったぞ。コレやっぱ横の繋がりみたいなのがあるな……。


て事は、緩やかながら組織化し始める兆候って事か。うん、尚の事囮捜査は有効的なやり方だ。いや、ちょっと待て、この場合は囮捜査ってより囮作戦って言うべきかな? うん、どっちでも良いか。本当、俺ってこんな下らん事を考えてしまうなぁ。


おっ、奴等イライラしまくってるな。良し、五歩程歩いて又立ち止まってみようか。奴等俺に呆れて諦めやがるかな? どうだろ? あー、諦めんな。そらそうか、この辺りは治安が悪い所に近い場所だもんな、昔からそう言われている、そんな場所だ。奴等からしたら後少し、後もう少しで、そう思ってるんだろうな。まさか自分達が誘い込まれてる何て思いもして無いはずだ。


獲物を追い込みつつある時が一番警戒し、周りに注意を払うが、獲物を追い込み、仕留めた時が最も油断し気が抜ける。漫画でもそんなシーンがあったな、確かハンター物だったはずだ? あの漫画どうなったんだろう? まぁもう続きは読む事が出来無いんだ、考えても仕方ない。てか考えたら、続きが気になって仕方ない。うん、考え無い様にしよう。


さて…… 奴等に残心って概念はあるのかな?


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