第185話 穏やかな午後を二人で
今回から書き方を変えます。
と言いましても内容では無く、単純に書き方の変更です。
今までスマホでの読みやすさを考えて書いてきましたが、あまり意味も無く、むしろマイナスしか無いので、書き方の変更をします。
それに正直あの書き方は、面倒臭くなったので、書き方はこれから本話の様な書き方にしていきます。
酒飲み共を馬車に乗せ帰し、今は優雅にばあちゃんと午後のお茶を堪能中である。
いや~ 良いね~ これだよこれ、近況報告と何気無い会話。本来お茶会と言うのはこう言う物だよ。本当に落ち着くし、癒される。
「ばあちゃん美味いねコレ」
「あらぁ、良かったわ。いっぱい焼いたから、お腹いっぱい食べてね。でも夕飯食べられ無くなっちゃうから程々にね」
「分かってるよ、夕飯はビーフシチューだからね、夕飯が楽しみだ」
「ふふっ、腕によりを掛けて作ったから、楽しみにしててね」
しかし美味いなこのクッキー。幾らでも食べれそうだ、食い過ぎに注意しないと夕飯があまり食べられなくなる。
「ねえ、ネイサン。アナタ秋頃に赴任してる村にマデリンちゃんが来たんでしょ? どうだったの?」
「どうだったのって言われても…… 色々話しをしただけだよ」
「ふ~ん、どんな話し?」
もう…… 嬉しそうに楽しそうに聞いて来て……
と言うかこの顔、興味本位では無く、何か知ってんな? マデリン嬢から何か聞いたか? うん、そうであっても可笑しくは無いな。元々ハイラー家と知り合ったのは、ポートマン家繋がりだ。
であれば、あの時にどの様な話し合いがあったか、マデリン嬢はばあちゃんに話した可能性がある。
マデリン嬢は他の人間に口軽くペラペラ言う人では無い。だがばあちゃんは別だ。生まれた時からの知り合いであるし、同じ女同士だからな。秋に村に来た時の件を話したかも知れない。
「ばあちゃん、最初に言っておくけど、俺はマデリン嬢とは結婚するつもりは無いよ。マデリン嬢は妹と思ってるし、それ以前の問題として、俺は誰とも結婚する気は無いから」
「あらぁ、誰か心に想ってる人は居ないの? 私はマデリンちゃんは良いと思うわよ。でもそうね、こればっかりはお互いの気持ちもそうだし、押し付ける事も出来ないものね。でもネイサン、アナタ昔から結婚するつもりは無いって言ってるけど、決めつけは良く無いわよ。もしかしてそう思える人に出会える事だってあるかも知れないし、無いって決めつけるのはあんまり良く無いと思うわ。押し付ける気は無いけど、出逢い何てね、案外簡単だし、突然なんだから。そして出会い、出逢う。人ってそんな物よ」
分かっては居るが、これが中々どうして。
出会える物なら出会ってみたいよ。そしてそれが出逢いに変わる物なら、そんな相手に出会ってみたい。
難しいな、今のままでは。こんな気持ちのままなら、そんな出会いは無いだろうと思う。
「ばあちゃんはアレだろ。じいさんと出会った事を惚気たいから、そんな事言ってるんでしょ」
「やーね、そんな事無いわよ。もしかしてネイサンは私とクランツの馴れ初めを聞きたいの?」
「もういいよ、何度も聞いたから。もう丸覚えしてるし、何なら諳んじれるから。勘弁してよ」
二人の事は何度も聞いて、ソラで言える。俺は一度聞いたら覚える事が出来るが、この夫婦の事は聞き過ぎて、二人より詳しくなった位だ。
マジで勘弁して欲しい。人の惚気はそう何度も聞きたく無いし、何よりこのクランツ夫妻の物語を書ける程聞かされて、もうお腹いっぱいだ。勘弁して下さい。
「年を取ると何度も同じ話をしちゃうから」
「・・・」
いやいや、昔からそうだったと思うが? だがこの夫婦に出会った時、既に二人共に老年期と迄は言わなくとも、おじいさん、おばあさんではあったがな。
だがばあちゃんはドワーフ族だからか、見た目は若く見える。
これはドワーフ族の特徴でもある。
男は立派な髭が生え、筋肉質で力強い。
女は若く見え、年を取っても他の種族に比べ若くあり続ける様に見え、力強い。
ドワーフ族の男女は共通して背が低いのも特徴だが、力が強いのも男女に共通している。
女の場合髭は生えないが、その為パッと見ドワーフだと分かり難い。それこそ只の幼い子にしか見えないのだが、力は間違い無く人族よりは強いので、ナメた事をしてエライ目に合う奴がたまに居る。
今でこそドワーフ族の事が知られたので、そんなアホは滅多に居ないらしいが、昔は結構居たと言うのを聞いた事がある。
だからドワーフ族は、魔族の国チェリッシュ以外の国だと、最初にドワーフだと言うのを相手に言う様になったと言うのを聞いた。
じいさんもばあちゃんも、気質的にドワーフ的な気質は薄いらしいが、本来ドワーフ族と言うのは、頑固で短気で気難しいと魔族の間でも思われて居るが、二人共話の分かるタイプだ。
頑固で短気で気難しいと思われるドワーフだが、ドワーフ達に言わせると確かに短気だが後腐れも無く、さっぱりとした気性の者が多いと思って居る。
だが他の魔族からしたら物凄く気難しく短気だと思われており、最初この二人に会った時は俺も少々身構えた。
だが二人共そんな事は無く、とても付き合い易い、気の良い二人だった。
基本的に魔族は国から出る事も無く、言い方は悪いが、引きこもり体質だから、事情があったにせよ国から出て帝国に来た訳だから、二人は元々柔軟な考えの持ち主なのだろう。
でなければ、帝国に来ず、チェリッシュで一生を終えたはずだ。うん、そう考えるとばあちゃんがさっき言った出会いってのは、ちょっとした運命と偶然なんだろうな。
「年寄りの話だから、ごめんねネイサン。アナタの人生だもの、余計なお節介よね」
「まぁ俺の事を心配しての事でしょ? 別に良いよ。でもばあちゃんは年寄りって言う程老けて無いじゃないか」
「あらぁ、ありがとう。ドワーフの女の良いところね、年を取っても見た目はそれなりに若く見えるって言うのは」
確かにそうだな。だがばあちゃんはロリババアと言う訳では無い。
若く見えるがそれなりに年を重ねてきたと言うのが分かる。
あくまで他の種族に比べればだ。それでも他の種族からしたら、羨ましがられる種族特性ではあるがな。
「だけど男は年を取れば厳つさが増すでしょ? じいさんはそうでも無いけど、他のドワーフの男はより厳つくなるよね?」
「そうね、でもドワーフの男は皆が皆って訳でも無いわよ。クランツみたいに、年を取っても穏やかな顔付きの人もたまに居るもの、人によるわね。でも確かに年を取れば厳つい顔付きになる人が、どちらかと言うと多いかな」
じいさんは海事法弁士だからな。厳つい顔だと仕事がやり難くなっただろうし、そう考えれば種族特性に寄らずに良かったんだろうな。
ん? ノックの音が。
「入って」
「奥様、旦那様が御帰宅されましたよ。今旦那様の馬車が帰って来た様です」
「あら、もうそんな時間? ネイサンと話してて、時間が過ぎるのが早かったわね」
二人で話してたら時間が過ぎるのが、あっという間だったな。とは言えまだ夕方前だ、こりゃじいさん急いで仕事を終わらせてきたんだな。
ん? この部屋に近付いてるな? ドスドスって音が近付いて来てる。そんな音が聞こえるってどんだけ力強く足を踏みしめて歩いてんだよ……
「ネイサン! 久しぶりだな」
「じいさん、強い強い、骨が折れる。加減してくれ」
「すまんすまん。嬉しさのあまりついな」
嬉しいからって力を入れ過ぎだよ。抱き締めるってより、鯖折りでもすんのかって位に力を入れるなよな。これでも加減したんだろうが、元々じいさんも力が強いんだから気を付けてもらわんと危ない。だがまぁ嬉しさのあまりって言われると怒れないな、仕方ないじいさんだよ。
「相変わらずだな、元気そうじゃないかじいさん」
「ああ、そうだろ。だが最近は身体の疲れが抜けにくくなってきた。年を取ったって思い知らされて来始めたよ」
「ここ一年で?」
「そうだな、ここ一年で急激に感じ始めてる」
年齢ってのもあるから仕方ないんだろうけど、本人からしたら歯痒い気持ちもあるのかな? 言い方が少し悔しそうだ。
普通に考えたら、そろそろ引退をって考えても可笑しくは無いんだろうが、じいさんはまだまだ引退するつもりは無いんだろうな。
生涯現役。多分そう思ってるんだろうなぁ。
「クランツお帰りなさい」
「テレーゼただいま」
「クランツ、話は幾らでも出来るから、まずは着替えてらっしゃいよ」
「そうだな…… なぁネイサン、今日は飲むぞ!」
「分かってるよ、だけど先ずは着替えてからな」
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「ビーフシチュー美味かったなぁ」
「テレーゼの作るビーフシチューは絶品だろ?」
使用人も居るのに、わざわざばあちゃんが作ってくれたんだ、ありがたい事だよ。いや~ 本当に美味かった。
それにしてもじいさん……
「また惚気か? 勘弁してくれよ」
相変わらず仲の良い夫婦だよ、羨ましい事だ。
「ネイサン、さっきも言ったがお前さん本当に顔色が良くなったな。お前さんにとってはこっちに左遷された事は不本意だっただろうが、身体の事を考えれば良かったのかも知れない」
「まぁ結果的にはな。今ではあの村に飛ばされて良かったって思ってる。ところでじいさん、話があるんだ」
「どうした畏まって?」
突然こんな事を言われたからか、不思議そうな、訝しそうな顔だな。だが別に嫌な話では無い。
「あー…… 仕事の話かな」
「ネイサン、仕事の話なら私は席を外した方が良いわね。終わったら教えてちょうだいね」
「いや…… ばあちゃんも居てくれて構わない」
「どうした? テレーゼも居て良いのに仕事の話か?」
「ちょっと二人共待っててくれるかな? 依頼したい物。依頼に関わる物を持ってくるから」
さて、アレを見せたら二人共どんな反応を示すかな。ちょっと楽しみではある。