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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第181話 おのぼりさん達


「お気をつけていってらっしゃいませ、サリバン卿」


コイツ会った事無いのに何でこんな好意的なんだ?


その割にはビビっても居るし、意味分からん。


「なぁ、守長ってスゲーよな」


「いきなりどうしたブライアン?」


何でコイツはいきなり感心してんだ?


「いや、さっきの官吏だよ、アイツ普段はすっげー偉そうだし、上から目線で本当に嫌な奴なんだ、それが守長の前だとペコペコしてるし、声だって女みたいな声で、それに喋り方も全然違うんだからなぁ」


「女みたいな声ってお前‥‥ アレ女だろ? てかな、俺は一応はお偉い官吏だからな」


「だな、あれ見たら守長はマジで偉い官吏だって改めて思うわ、あの官吏は女なのに男みたいな喋り方だし、口も無茶苦茶悪いんだよ、普段とは大違いだ」


「言いたい事は分からんでもないが、実際官吏は権限があるからな、それに漁師は気の荒い奴も多いんだ、優しく言っても聞かないだろ?」


「そうだけど、アイツは酷いんだよ」


ブライアンの話によると、先程のナンシー・ボーウェル以外に男の官吏が二人、態度が酷い奴居るらしく、ソイツらはハズレと言われて居るらしい。


そしてハズレが居れば当たりも居るらしく、中でも女官吏が一人居て大当たりと言われてるそうだ。


だがその大当たりの官吏も怒ったら結構怖いらしく、皆素直に従っているらしい。


と言っても余程酷い事をしなければ怒らないし、人当たりも良く親切であるそうで、皆が大当たりと言っているそうだ。


先程のナンシー・ボーウェルは十年前位からおり、多分だが俺と入れ替わりで官吏になったんだろう。


十年前ならバハラでは研修は、色々な部署を回る事無く、配属先での実地研修だったから、俺と同い年位なのだろう。


一瞬アイツ三十五歳位に見えたが気のせいだったかも知れない、うん、別にどうでも良いんだがな。


「おい、ブライアン皆揃ったな?」


「ああ揃ったよ、荷物も皆持った」


「おい、モリソン弟、お前が身体の前に括り付けてる荷物はマジで気を付けて運べよ、皆も自分が担当してる荷物は責任を持って運べ、それと手ぶら組は周りをきっちり警戒しろよ、分かったな?」


「分かってるよ守長、てか守長何してんだ?」


「身体をほぐしてるんだよ、準備運動だ」


ストレッチしとかないといざと言う時に機敏に動けない可能性があるし、それに身体を壊す事もあるからな。


小悪党が狙って来やがった時に咄嗟(とっさ)に動けないのは困る。


「なぁ守長、早く行こう」


「だな、早く行こう」


コイツら飯食いたいからって急かしやがって‥‥


「お前ら急かすな、俺は前に言ったよな? いいか、今バハラではこそ泥やひったくり、スリに路上強盗や何かの小悪党がウヨウヨ居やがる、本当に治安が悪くなってんだ、お前ら気を抜きやがったら分かってんだろうな? 前みたいに一人、一人気合いを入れてやろうか?」


「「「「「「・・・」」」」」」


「分かったら周りを警戒しろ、ここら辺は安全だが今から気合い入れて警戒しろ、気を抜くな!」


俺だって一刻も早くここから出たいのは一緒だ、と言うより誰よりも早くここから俺が出たい。


理由は変態が船から上がる前に出たいからだ。


とは言え荷物をしっかり身に付けさせないといけないし、厳重に荷物を閉めなければならない。


俺はコイツらの準備が終わっていないから、だからストレッチしてたのにコイツらときたら‥‥


念の為に俺が最終チェックをする事になっているが、その際もし適当な事してやがったらもいでやる。


しかしコイツら一瞬で顔色が悪くなりやがったな。


ちょっと気合い入れる為に声掛けて、コイツらの股間を一人づつ見てるだけなのにな、変な奴等だよ。


「お前らボケっとしてないでさっさと荷物を身に付けろ、じゃないと俺がチェック出来ないだろ? ホレ急げ、但し丁寧にな」


うーん、さっきとはエライ違いだな、皆キビキビ動き出したわ、さっ、これで出発出来るな。


~~~


魚市場から出ると懐かしの町並みが、いや街並みが広がっていた。


ここらはまだ魚市場関係の建物が広がってる。


商店や商会、そして魚市場関係の人間が多い、だが人通りに関してはハルータ村とは比べ物にならない。


俺を先頭に後ろにモリソン弟、その後ろに二列に、そして手ぶらで警戒してる奴が左右に、一番後ろはチンピラブライアンと言うフォーメーションだが、状況により俺とブライアンの位置を入れ替えても良いかも知れない。


道順は後ろからでも伝える事が出来るし、状況によってはそうしよう。


てか後ろが煩い、コイツら魚市場からあまり出た事が無いから仕方ないが、おのぼりさん丸出しだな。


「お前らあんまキョロキョロすんなよ、ここいらに慣れて無いのが丸分かりだ、マジで狙われ易くなるから控えろ、特にモリソン弟、お前は人一倍気を付けろよ、倒れる場合は前には決して倒れるな、倒れるなら真後ろに倒れろ、そして身体の前に括り付けてるそれを命懸けで守れ」


コイツは俺の真後ろに、二列になった先頭に一人で居るが理由がある、コイツの持ってるモノが物だけに注意が必要だ。


「命懸けって‥‥」


「アホか、俺は冗談でも大袈裟でも無く、本気で言ってるからな」


「なぁ守長、コレ何なんだ? てか無茶苦茶持ちにくいんだ、それに歩きにくいし‥‥」


「知らなくて良い、手間賃にはそれも含まれてる、黙って運べ、いや、黙って命懸けで運べ」


「・・・」


「何か言いたそうだな、モリソン弟?」


「いや、何も無いから、だから手をニギニギすんのは止めてくれ守長」


コイツも俺が手をニギニギしたら素直になるな、しかし身体の前で無く、後ろに持たせるべきか?


背負ってる籠を前に持ってこさせて、前に括り付けてるモノを後ろにして‥‥ 入れ換えるか?


ん? コイツら又‥‥


「おいお前達、何で又キョロキョロしてんだよ? お前ら魚市場から出た事無いのかよ? 今まで何回も出た事あるだろ、こんなトコでそんなんじゃ、もう少し先に行ったら更にキョロキョロする事になるぞ」


「いやー 実は初めて何だよな‥‥」


「俺もだ、ガキの頃は魚市場の門から出ようとすると無茶苦茶怒られて、そんで出た事無かったんだ」


「だよな、俺もガキの頃そうだったわ、大人になったら出てみようって思ってたけど、結局出なかったんだよなぁ」


「あれ何だろうな? 大人になったら別にどうでも良くなるんだよな、ガキの頃はあんなに出てみたかったのにな?」


「俺もだ、ガキの頃は魚市場から出てバハラを見物するって思ってたけど、出れるとなったらどうでも良くなったわ、不思議だよな」


マジかよ? コイツらの話によると魚市場の門から出た事ある奴って、十二人の内二人だけか?


バハラに買い物にさえ来なかったのか?

魚市場ではやる事が結構あるから仕方ないにせよだ、それにしても普通はあるだろ?


大体メシ‥‥ は魚市場で済ますんだったな?


弁当持って来たり、魚市場の中にある屋台で買って済ますんだったか?


魚市場でもそうだが、青空市でも結構忙しく働いてるからか出るヒマは無いのかも知れないが、男ってこんなもんか?


女は割と遊びに行く事があるみたいだ、と言ってもしょっちゅうでは無いが、それでもコイツらみたいに一回も魚市場から出た事が無いってのは聞いた事が無い。


女衆はバハラに来たら買い物だとか、何やかんやとやるし、やる事が、目的がある。


行く事自体が、バハラに来る事自体が目的とも言える。


女は目的無く街歩きするの好きだもんな。


これも世界が違おうと、変わらない真理の一つだ。


それに買い物って目的があるみたいだし、うん、そうらしいと言うか、理由付けと言うか‥‥


女って買い物好きだもんな‥‥


今世でも前世でもそうだが、母親と遠出して買い物行くと時間掛かったなぁ。


前世でも母親とデパートに一緒に行くと、一生ここに住むのか? って位、買い物に集中してたなぁ‥‥


彼女と買い物に行ってもそうだったわ、もう勘弁してくれって泣き入れても、もう少しって言って連れ回されたりしてたもんだ。


そう考えるとコイツらバハラに来ても、やる事無いし、目的も無いし、金も無いしで来る意味も無かったからバハラに行く意味を見出さなかったんだろう。


門を潜り、バハラの市街に行ってもどうせ酒場で安酒を一杯飲むのが精々だろうしな。


しかしどうしよう‥‥ 注意力散漫になりそうだな。


股間を掴んで気合いを入れ直させるか?


いや、コイツら荷物持ってるし万が一落としでもしやがったり、ブッ倒れて中の物が台無しになるかも知れない。


ん? 待てよ‥‥ そうか、その手があったか。


「おいお前達、あんまボケっとしてやがったら、周りに注意を払わずキョロキョロし腐ってやがったら、昼メシは肉じゃ無く魚にするぞ、良いのか? 肉食いたいならキョロキョロすんな、周りに注意を払って歩け、てかお前らの股の間にぶら下がってるきったねーモン千切り取るぞ」


「「「・・・」」」


「分かったらガキみたいにはしゃがずキリキリ歩け、そして周りを注意しろ、つーかちゃんとやらないなら次呼ばないからな」


本当世話が焼ける‥‥ 皆青い顔して頷いてやがる。


これは自分の身に降り掛かる恐怖と、今後美味しい小遣い稼ぎが出来なくなるって危機感の表れかな?


まぁ良いだろう、皆表情が改まった。


さっさと行こう、もたもたしてたら日が暮れちまう。



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