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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第178話 厄日の旅立ち


「守長~」


「ゲッ、ジルじゃないかよ!」


何であの変態が居やがる?


あっ! まさか今日、青空市に行くのか‥‥


そうだ、本格的に冬になる前に、少しでも蓄えを増やす為に最近連日バハラまで行ってるんだったな?


とは言え毎日は行って無かったはずだ、そして今日は行かないって聞いてたのに‥‥


幸先良いなと思ってたんだが‥‥


何で居やがるんだよ? まさか見送りか?


いや、そんなの要らないから、マジでマジで。


てか今日は干物とか、完干しや何かを作るとモリソン兄に聞いたんだが、奴めガセネタ掴まされやがったな?


あのボケボケ兄貴めが‥‥ 何、目を反らし腐ってやがるんだ?


適当な事を抜かしやがってからに‥‥ どうしてくれようかあのあんぽんたんバカ兄貴の野郎‥‥


「ねえ守長、一ヶ月もバハラに行く何て長いね? 何するの?」


「・・・」


本当この変態馴れ馴れしくなりやがったなぁ。


本当にコイツには関わりたく無いんだが。


「お前達、荷物の積み込みを急いでくれ」


「ねえ守長~」


「寄るな! 息するな! 失せろ!」


「何で? ねえ何でなの?」


何が何でだよ、お前はアンナかよ?


貧乳と変態がうつる、そう言えたらどれだけスッキリするか‥‥


とは言えそんな事を言えばコイツを喜ばす事になってしまう。


マジで無敵過ぎだろコイツ。


うん、無視無視、さっさと準備してしまおう、海に出てしまえばそれで解決する。


「もう~ 息出来ないと死んじゃうよ~ そしたら守長が困るでしょ、ね?」


何が、ね、だよ? あーもう! あの夜までコイツはまともでしっかりした、頼りになる奴だったのに。


本当に失敗した、あの夜に戻れるなら決して縛ったりしないのに‥‥


優しく説教するで済ませるのに‥‥


時の流れは戻らないか、マジでコイツ記憶喪失になってくれないかなぁ‥‥


「ねえねえ守長」


「うっせーな、準備の邪魔だから失せろ」


「冷たいなぁ、どうせ守長は準備なんてしないんでしょ? 男衆が全部やってるんだし」


「荷物の置場所とか、取り扱いを指示しなきゃいけないんだ、本当邪魔だから向こうに行け」


お前はアンナか? ちょろちょろとまとわり付いて来やがってからに‥‥


「おいケイン! お前の娘を何とかしろ、準備の邪魔だから連れて行け」


「ちょっと守長、父ちゃんに変な事言わないで」


「黙れ、何も変な事は言って無いだろうが、おい早く向こうに連れて行けやケイン」


「邪魔してすまんな守長」


「ちょっと父ちゃん、引っ張らないでよ」


抵抗しても無駄だ、しかし流石にコイツも父親には勝てんらしいな?


良いぞ、もっと言ってやれケイン

「ほら遊んで無いで手伝え、邪魔するな、子供じゃあるまいし」


うーん、父親からしたらジルも子供扱いか、変態も無敵では無いって事だな。


これからはマーラだけで無くジルパパを使うのも考慮しよう、使えるものは何でも使う、当然の事だ。


さてと、幾つか取扱注意の物がある。


細心の注意を持って、深窓の令嬢の如く扱わなければならない。


しかし結構な数の船だな、全部で四十隻は越えている、今日は何時もより多いみたいだが、冬本番前に行く奴が多いとは聞いてたが、それにしては多過ぎる。


「ブライアン、何で今日は何時もより多いんだ? いくら冬本番になる前にって言っても今日は多過ぎだろ?」


「あー‥‥ そうだな、今日は守長が行くだろ、それでだよ」


「どう言う事だ?」


「うん、最近はバハラに行く奴が多いだろ? それはこの村だけで無く他の村でもそうなんだ、それでバハラの魚市場の船着き場がな混むんだよ、そんで守長と行けば停めやすくなるって思ってるみたいなんだよ」


「・・・」


俺が居れば優先されるからってか?


アホか、そんな事ある訳無いだろ、あくまで優先されるのは俺の乗ってる船だけだ。


それと荷物持ちをする奴が乗ってる船に便乗してる船位だぞ、何てご都合主義だよ。


そんな甘い話がある訳ねーだろうが‥‥


その話をブライアンにすると。


「そうだよなぁ、そらそうだろ」


「おい、これってもしかして奴等に説明しとかないと、向こうでゴネやがらないか?」


「そうなるかも知れない」


「いや、そうなるかもじゃねーよアホか、勝手に決めつけて、勝手に思い込んで、そんで違ったらゴネるってチンピラかよ? 面倒クセーな‥‥」


とは言え言わなければ理不尽にも俺が悪者になってしまう。


あーもう、仕方ないし面倒だが説明するか‥‥



~~~


「その‥‥ 守長、お疲れさん」


「おう、疲れたわ、出発前からいらん手間掛けさせやがってからに‥‥」


案の定このご都合主義者共はゴネ腐りやがった。


なのでちゃーんと、おはなしをして納得させたが、何でこんな無駄な事をしなきゃならないんだ?


あんまガタガタ抜かしやがるから、吊るすと言ってようやく素直になりやがった。


その後はきっちり言い聞かせ、話を聞いたが何の事は無い。


俺が居れば優先して船着き場に停めれるってのは、単に噂が独り歩きしてただけの事だった。


世界が変わっても人は噂に惑わされ、振り回される。


決めつけ、思い込み、噂、それらが違ったら、否定されたら悪意を持つ。


これも一緒だ、そしてその様な物は芽の内に摘まないといけない。


成長したらそれは積み重なり、何時か必ず自分に災いとなって振り掛かるからなぁ。


面倒だが対処しないと、後で困る事になるかも知れないからな。


とは言え無駄に時間を食ってしまった、さっさと出発しよう。


「おい、もう出れるな?」


「大丈夫だ、船を海に出せば良いだけだ」


「ん? おいお前達、何で靴を脱いでいる?」


「脱がないと濡れるだろ? 濡れたままだと寒さが辛いし」


あー そうか、靴と靴下を脱いでズボンの裾も捲り上げ無いと濡れるからな、てかズボンを脱いでる奴も居るじゃないか。


「お前達なぁ、俺が魔法で乾かしてやるから大丈夫だぞ」


「えっマジで? あー でも駄目だよ守長、靴が痛むから」


「兄貴の言う通りだ、でも守長、身体や何かは乾かしてくれると助かる」


「やってやるよそん位、てか俺の魔法なら靴を痛めず乾かせるが? どっちでも良いよ、さっさと行くぞ」


寝起きじゃ無いんだ、その位の制御や加減は出来る、匙加減はバッチリだ。


まだ朝早い時間、それも早朝と言える時間だがさっさと行きたいし、船にも乗りたい。


でないとあの変態(ジル)が寄って来そうだ。


今は親父に抑えられてるが、暴走しないと断言出来ないんだ、船に乗って海に出るってのが安心確実だからな。


~~~


風が冷たいな‥‥ 少し強い気がしたので周りの奴に聞いたら、やはり風が普段より吹いてる様だ。


だがその分早くバハラに着くから、悪い事ばかりでは無いらしい。


俺も含め皆が温石を持っている、いや、懐に入れていると言うべきか?


温石のお陰で、入れてるその辺りポカポカして何とも気持ちが良い、だが顔が冷たい。


コイツらは慣れて居るからか、余り苦にはなっていない様だ、それでも寒さや冷たさは感じてるみたいだが、身体を動かしてるからってのもあるかも知れない。


俺に比べてコイツらは軽装だ、上着を一枚脱いで船を操作している。


帆を調整したり舵を取ったり、何やかんややる事があるからそこまで寒さは感じていない様だ。


中には温石を懐から出してる奴も居る位だからな、寧ろ暑いと感じてるみたいだ。


俺や他の船に乗ってる女衆は、厚着であるのと対照的だ、俺は正装で、帝城で働いて居た時の格好で巡察使のマントを羽織って居るから、余計周りとの格好と違和感がある。


夏場にあった対応5の時は当然夏服だったが今は冬服で、冬服の官吏服、それも正装ってのも久しぶりだ、腰には短剣を身に付けて居るし、十手も二本腰の後ろにクロスさせ身に付けて居る。


それに加えて何時も通り寸鉄も二つ身に付けて居るが、何だかカチコミに行くみたいになってんな‥‥


とは言えバハラも最近は物騒になって居るから念の為装備して来た。


使わないに越した事はないが‥‥ 使う可能性大だろうな。


しかし‥‥ ジルの奴がさっきから煩い。


俺の乗ってる船の横に奴の家の船を持って来て、いや、横付けし腐ってやがる。


どうも親父を言いくるめたらしいがマジで煩い。


親父であるケインもさっきからジルを諌めてるし、怒ってるが一向に静かにならない。


てかお前目がイッちゃってるじゃないかよ。


バッキバキに決まってると言うか、ガンギマリしてやがる。


コイツ本当に葉っぱやってんじゃないだろうな?


「ねえ守長こっち向いてよ」


うるっせー 何なんコイツは?


向く訳無いだろうが! 何でコイツ何だよ?


アマンダが居てくれたなら、コイツで無くアマンダが横に居たなら楽しい船旅だったのになぁ‥‥


「おいブライアン! 一番前に出ろ、最先頭に船を出せ、てか荷物持ちが乗ってる船も前に来させろ、どうせバハラに着いたら優先されるんだ、なら今の内に前に行っとく方が効率的だ、てかあのアホが煩いし声が耳障りだ、返事は?」


「分かったから、守長手をニギニギするのを止めてくれ、ちゃんとやるから」


「おう、行けブライアン、邪魔する奴は蹴散らせ」


「分かった、直ぐやる、今直ぐやる」


「おう」


良いねー ブライアン始め皆の動きが良くなったわ。


キビキビって擬音が今にでも聞こえて来そうだよ。


しかしうるせーな‥‥


「お前黙れやボケ! てかお前マジで海に叩き落とすぞ、お前は泳いでバハラまで行けや」


「こんな所で落ちたら死んじゃうよ! 大体バハラ迄まだ距離があるじゃない、それに寒いよ」


「知らん! 海軍灯台まで行けば救助してくれるわ、てか本当お前泳いで行け、そして煩い黙れ、口を開くな」


「何でそんな事言うの? ちょっとお喋りしたいだけだよ」


「俺はしたくない、おいケイン! お前の娘を黙らせろ、そして俺たちを決して追い掛けるなよ、来たら分かってるよな?」


ケインの奴、俺が本気だって分かったみたいだ。


顔色が悪くなったのは気のせいでは無いな。


うん、正しく今の状況を認識したか、判断力が良いじゃないか、娘とは大違いだな。


「分かった、おいジルお前黙れ、今日はどうしたんだ? お前おかしいぞ?」


「父ちゃん守長達の船追い掛けて」


「だから駄目だって守長が言ってるだろ?」


「ねえ、父ちゃんお願いだから」


父と娘の心温まる会話だな。


遠ざかる親子の声を聞いてそう思った。


楽しい休暇がやっと始まった気がする。


さぁ久々の休暇を楽しもう。


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