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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第174話 神ならず身の救済


「アマンダ、イカの完干し出来上がり次第全部買うから取っておいてくれよ」


「うん、分かってる大丈夫よ」


「イカの一夜干しも言った日に買いにくるから」


「うん、大丈夫」


「「・・・」」


「「なぁ ねえ」」


「「・・・」」


声が被っちゃったなぁ‥‥


何か気まずい、最近こんな事増えたよなぁ。


「あー アマンダ、先に言ってくれ」


「んー‥‥ 守長から先に言って」


「いや、俺は特に何かあるとかじゃ無くって‥‥ 最近寒くなってきたなと思ってな」


「うん、そうだね‥‥ 寒くなってきたね」


「「・・・」」


うわー 何だろうこれ?


普通の会話なのにスベったみたいな空気に‥‥


「あー‥‥ アマンダは何を言い掛けたんだ?」


「うん‥‥ 季節が変わってもう冬になってきてるって、寒くなってきたなぁって‥‥」


「そうだよな、寒くなってきたな」


「うん‥‥」


「「・・・」」


いやいや、今までなら笑うとこだろ?


そうだ、今までなら一緒の事を考えてたって、そんな何気無い事で二人で笑ってたじゃないか。


「ねえ守長、バハラに一ヶ月行くんだよね?」


「うん、休みが溜まってるし一月程な」


「一ヶ月かぁ‥‥ 何するの?」


「知人の老夫婦の家で世話になるが、その二人と話したり、知り合いに会いに行ったり、ブラブラしたり‥‥ 色々だな」


「そっかぁ‥‥ 知り合いってこの前、船で来た子に会ったり?」


「うん、そうなると思う、バハラに行って、しかも時間があるのに会わないってのも不義理だし、多分相手の家にも行くと思う、家族ぐるみの付き合いだから」


「そっかぁ、前に言ってたもんね」


「うん」


「「・・・」」


何か会話が途切れるなぁ‥‥


前はこんな事無かったのに、何でなんだろうな‥‥


「バハラは‥‥ 魚市場から出たのって十一年前が最後だから、街並みも変わっちゃってるんだろうね、と言っても行ったのは大灯台の所にある広場で、下から大灯台を見ただけなんだけどね」


「旦那と一緒に?」


「うん、マーラがねその時たまたま一緒で、店を見とくからって、たまには行っておいでって言ってくれて、それで旦那と一緒に見物に行ったの」


十一年前か‥‥ マデリン嬢を、ポートマン家を大灯台に案内した時位前か。


もう十一年か‥‥ 早いものだ、あのマデリン嬢が‥‥ 昇降機に怯え、震えて居た幼いマデリン嬢が今では立派なレディになってるんだからな。


十年って歳月は人を変えるには十分な、いや、十分過ぎる時間だ。


年月を重ね、時が経とうとも変わらぬ、変えられない物もあるが‥‥


「大灯台は魚市場からも見えるけど、あの時近くまで行って、あんなに近くで見たのは初めてだったから何て言うのかな、迫力があって圧倒されちゃった」


「確かにな、大陸一の灯台でもあるし、あんな巨大で高い建物は無いからな、巨大な建物ってだけならあるが、あんなに高い、高層建築物は大灯台だけだ」


「あの時は人も多くて、見物客も屋台も多くって祭みたいだったわ」


「あそこは何時も人が多いからな、屋台もあるし毎日が祭みたいなもんだ、しかしあれだな、もしかしてアマンダとすれ違ってたかも知れないな、とは言え俺は大灯台の中に居たか、行政府に居ただろうからそれは無いか?」


「もしすれ違ってたとしたらそれはもう運命ね、まぁそんな事は無かっただろうけど」


「だな、とは言えアマンダとすれ違ってたら流石に分かる、見たのなら分かるし、すれ違ってても分かる、俺はそこまで記憶力は悪く無いからな」


アマンダの様に美しい女を見たとしたら忘れる事は無いな。


美人は忘れ難いもんだ、いや、その時アマンダは十八か? なら美人ってより可愛いって可能性もあるか? まぁどっちみち見たら忘れる事は無いな。


うん、記憶に無いって事は会った事が無いのは当然として、すれ違ってすらいないんだろう。


「守長は記憶力良いんだね」


「まぁ‥‥ それもあるし、アマンダみたいな美しい女を見たら忘れる訳が無い」


「又そう言う事言うんだから‥‥」


「だが事実だからなぁ、俺の記憶に無いって事はすれ違ってすらいないんだろう、残念だな、運命では無かったって事か」


「もう‥‥ でも守長は大灯台で働いて居たなら、上にも行った事があるのよね? やっぱり景色は良いのよね?」


「そうだな、景色は良いな抜群に良い、だが夏でも割と冷える事があるな、とは言え夏場なら冷えるってより涼しいって感じる事が多いかな」


夏場に冷える事もあるが、基本的には涼しい、当然冬はかなり冷える、と言うより(こご)える。


上に行くと風が強いから余計冷えるんだ、体感気温が下がるからだろうけど、展望台に行くと寒さがきつい。


とは言え中に入っていればまだマシだ、篝火があるから凍える程では無い、寒いのは寒いがな。


「大灯台かぁ、一度は上に、死ぬまでに一回は行ってみたいって皆言ってる位だもんね、有名だよね」


「だな、アマンダも行ってみたいのか?」


「そりゃね、でも抽選でしょ? 普通は死ぬまでに当選する事無く人生が終わるって言われてるのも有名だもの、よっぽど運が良くないと行けない物だし、それか大灯台で働いてるかしないと行けないでしょ?」


「あー‥‥ 連れて行こうか?」


「さっきも言ったけど、当選するはずが無いじゃない、守長も今は大灯台で働いて居ないし、働いてても滅多に招待出来ないでしょ?」


「いや、俺は特級官吏だからその辺りの制限が一切無いんだ、申請も簡単に通るし招待に関しても全く問題無い、俺が同行者としてアマンダが行政府で申請すれば簡易手続きで認可される、俺が証人、俺自体の存在が証人として簡単に認められる」


「‥‥ありがとう守長、でもダメね、私は人妻だもの‥‥ 」


「そっか、そうだよな、ダメだよな」


俺は何誘ってんだよ、分かってた事じゃないか。


この村の中ですら、二人で行こうか何て誘うのもどうかと思うのに。


この辺りで立ち話してて、少し移動しようってのとは違うんだぞ。


何を思ってんーな事言ったんだ?


「何かすまんアマンダ、しかし何であんな事言ったんだろうな」


「うん、私が行ってみたいって言っちゃったから、だから謝らないで守長」


「うん、分かった」


「それにしても一ヶ月も休めるなんて、官吏って結構休みがあるんだね」


「ん? あー‥‥ 俺は任官、官吏になってからろくに休みも取らず、ずーっと働きっぱなしだったからな、だからだよ、普通はそこまで休める訳では無い」


「休みが溜まってたんだね」


「そうだな、と言うか更にまだまだ休みが残ってる、休もうと思えば休めるが、一応は灯台の管理者だし、纏まって休みを取るにしてもこの位が限度だな」


「休みがとても残ってるんだね凄いね、一ヶ月は長いけど、そっかぁ、一ヶ月居ないんだね‥‥」


ちょっとした夏休み位か? 少し短い夏休みって所だな。


終わってみたらあっと言う間だろうが、小学生の時、夏休みに入る前は大袈裟だが、永遠と言える程の長さに感じてた。


本当、終わってみたらあっと言う間なんだがな。


それに夏休みは、休みに入る前が一番楽しいって後に気付く事になるが‥‥


今回はそうでも無いな?


慣れか? それとも年取ってスレたからなのか?


両方だろうな、勿論楽しみではある、だが休みの終わりを考えると憂鬱でもある。


おかしな話だ、まだ休みになってもいないのに。


「終わってみればあっと言う間だろうな」


「そうだね、終わってみればね」


「「・・・」」


又だよ、微妙~に会話が途切れると言うか、続かなくなる。


何でなんだ? お互い何かある訳でも無いのに、少なくとも俺には無いし、アマンダにも多分無さそうなのに。


アマンダの微妙に困惑した様な、少し戸惑った様な、当惑した様な‥‥


何とも言えない顔で、仕草で、その雰囲気が俺ももどかしいと言うか‥‥


分からんなぁ‥‥


~~~


「アマンダどうしたね、守長の後ろ姿を見詰めて?」


「ああマーラ、今日もいっぱい買ってくれたなぁと思って」


「土産だろ? バハラの知り合いのじいさん ばあさん家に泊まりに行くから、その土産買い集めてるんだったね?」


「うん、そうみたい」


「アマンダ、もしかしてだけどアンタ守長と何かあったのかね?」


「特に何にも無いわよ、どうして?」


「いやさね、なーんかアンタら最近ギクシャクしてると思ってねぇ‥‥ 何かあったのかと思ったのさ」


「・・・」


「守長がアンタに嫌がる事をするはず無いからねぇ、どうしたのさね? アタシに言ってみな?」


「本当に何も無いの‥‥ だからこそかな、何か自分でも変だとは思うけど‥‥ 分からないの、何も無いからこそ何でこんななんだろうって、何も無かったし、それなのに‥‥ 本当何でなんだろうね?」


これは言ってあげるべきかね?


今言っても余計なお世話かねぇ‥‥


こればっかりは人が言うより、自分で気付くべき事だしねぇ。


お互い子供じゃ無いんだから。


とは言え人の機敏に敏感な守長までとは‥‥


簡単な事なんだけど、だからこそ分からないし、気付かないのかねぇ。


ハナっから決めつけ過ぎなんだよ、守長は結婚するつもりが無いし誰も想ってる相手は居ないし、その上でアマンダの事を尊重ってのかね? その気持ちを大事にしてるって、アマンダも思ってる事も。


アマンダが旦那の事を忘れて無くって、今も想ってるって、未来永劫変わらないって、守長はそう思ってるみたいだけど‥‥


アタシに言わせればそんな事は無いね。


とは言えきっかけがねぇ‥‥


そう考えたら今の状態ってのは案外悪く無いのかも知れないねぇ。


『マーラ、忘却とは神々の慈悲だ。だが神は全てを救わない。その慈悲から漏れる人間も必ず居る。ならその慈悲から漏れた人間はどうするんだろうな? 不謹慎を承知で言うぞ、神は全てを救わないし、救えない。だがそれでも忘却とは神々の慈悲だ』


忘れるって事は神の情けねぇ‥‥ 守長は洒落た事言うよ、確かに人には忘れたい事はあるさ。


神がその慈悲とやらを与えないなら、人が与えれば良いのさ。


人を救うのが神だけだなんて誰が決めたんだね?

そうだって神が決めたのかね? 違うね、神だけが人を救う訳でも無いんだよ。


人が人を救っても良いじゃないのさ。


アマンダを救うのが守長で良いじゃないか。


守長、お願いだからアマンダを救っとくれ‥‥


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― 新着の感想 ―
[一言] うーん・・・じれったいー。もどかしい。 アマンダ様ファンとしては、ゴールインいつかしてほしいです。
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