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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第172話 ハルータ村の檻


香ばしいと言えなくも無い匂いがした


野焼きと言えば大袈裟であるが、焼けた香り。


焚き火にしては濃い香りが漂っている、


「お前達、さっきも言ったが芋の大きさは運だからな、焼く前にお前達が見た通り殆んど大きさは変わらんが、全く一緒の大きさでは無いから、大きさに多少の違いはある、繰り返しになるが運だからな、マジで揉めるなよ、ケンカすんなよ、したら分かってるよな?」


俺の説明に皆、大きな声で返事をした。


勿論、はい、と言う返事だ、素直で宜しい。


焼いた芋は一ヶ所に纏めてある。


俺達大人組の三人で灰ごと集めておいたのだ。


芋を傷付け無い様に、シャベルや棒で集めた。


かなり熱かったし手間が掛かったが、一ヶ所に集めずに芋を灰から取り出すのは更に手間が掛かるし、余計熱くなると思ったので頑張った。


その作業は手間であったが、更に手間であったのが、ガキ達がその作業をやりたがった事だ。


必ず、そう、必ず芋を傷付け、下手しなくても真っ二つに割ったりする。


そしてそれ以上にガキ達にやらすのは危ない。


余りにも煩く、そして強硬にやりたがったので俺は面倒になり、何時も身に付けている細縄を出し、『ガタガタ抜かしてやがると、吊 る す ぞ♪』と言ってあげた。


ついでに俺の狂犬、そう、俺に忠実な狂犬をけしかけるとも言ってやっと静かに、そして素直になった。


アンナの抗議と何で? と言う問題が発生したが、何とかかんとかキッズ達が素直になったので良しとしとこう。


しかし、このガキ共は俺が優しく説明し、言ってあげてるのに聞きやしやがらなかった上、モリソン弟が言おうが、村一番のチンピラであるブライアンが言おうが聞きやしやがらなかったからな。


俺の細縄を見せて説明してやっと収まった位だ。


何であんな面倒な事をやりたがるのかさっぱり分からん、熱いし面倒だし、手間だし、しかも灰で汚れるのに、実際熱かったし手間だったし、灰でかなり汚れた。


クリーンを掛けたから綺麗になったが、鼻の穴にも灰が入ったのは参った。


てかガキ達がソワソワし始めやがったな‥‥


早く食いたいんだろうが、説明はきっちりやらなければならない。


「それと芋を早く食いたいんだろうが、ある程度冷めるまで暫く置いておけよ、どうせ熱すぎて持てないんだ、ちっと位は我慢しろよ」


コイツらはここまで言っても、熱々の芋に触ろうとするんだろうなぁ‥‥


「モリソン弟、さっき言った様にコイツらが不用意に触らん様にきっちり監視を頼むぞ」


「分かってるよ守長」


良し、完全に火傷を防ぐのは無理でも、ちっとは危険も防げるだろう。


「ブライアン、シャベルから背負い籠に入れる時ゆっくりな、気を付けて入れてくれよ」


「ああ、慎重にやるよ」


俺が一旦取り出し、そして芋をブライアンが持つシャベルに置き、それをガキ達が持つ背負い籠に入れる。


鍋掴みを手に装備してるが、何度も長い事持ってたら必ず俺の手が熱さでやられる。


持つ時間は少しでも短い方が良い。


なので二段階を経てガキ達に渡す。


背負い籠に入れるのは、直接持たせない為だ、てか一人に付き二本渡すからな、しかも芋がデカイんだ、背負い籠に一旦入れて冷まさすやり方が安全確実なやり方だろう。


さて‥‥ ガキ達は皆大人しく並んで居るが、そろそろ限界だな、トイレ我慢してんのかって位ソワソワしてやがる。


「お前らマジで揉めるなよ、横取りも禁止だからな、やった奴は盗賊扱いだ、マジで縛って簀巻きにして村の中心にあるデカイ木に吊るすからな、しかも漏らすまでずーっと吊るす、俺はやると言ったらやるぞ、それとエロゴブリン三匹が横取りするかも知れんから気を付けろよ、ここで食わず村に持って帰る奴、一人で帰るな、年上の子と一緒に何人かで帰れよ」


とりあえずはこの位にしとくか、さっさと渡していこう。


「今から配るが慌てるなよ」


うん、一本目だからかまだ全然熱く無いな。


どの位で手が熱くなるんだろう‥‥


~~~


やっと終わったか‥‥

やはり途中から手が熱くなった。


持ち手を変えたがそれでも熱かった。


はぁ~~ この季節の冷たさが心地良い。


「おいお前達、まだ熱いだろ? 気を付けろよ」


モリソン弟が先程から同じ事をガキ達に言っているが、ガキ達は我慢出来ないのか何度も触り確かめている。


最初に渡した奴は、流石にそろそろ持てる位になってるはずだ、ある程度の時間が掛かったからもう冷めてるかな?


「ねえねえ守長?」


「何だどうしたアンナ? 芋は一人につき二本だけだぞ、おかわりは無しだ」


「違うよ、それは分かってる、あのね、あのね‥‥ お芋に清浄魔法を掛けて欲しいの‥‥」


「何でだ?」


「うん、このままだと皮ごと食べられ無いから、掛けて欲しいなぁ~って」


「剥けば良いだろ」


「えー 皮ごとのほーが美味しいよー」


「そうか? 焼いて硬くなった皮が美味いか? まぁ別に良いけど‥‥」


蒸かした芋なら分からんでもない、俺は嫌だがな。


焼き芋でもしっとりしてるなら分からんでもない、俺は嫌だがな。


皮ねー 剥いた方が美味いと思うんだが‥‥


この辺りは個人の好みだが‥‥ 俺は皮は剥く。


その方が美味いと思うが、アンナみたいに皮付きの方が美味いって奴も一定数居るよなぁ。


まぁ良い、今日は特別だ、掛けてやろう。


「アンナ、今日は特別だぞ」


「やったぁ~ 分かってるよ守長、ありがとー」


幸せそうに笑いやがって‥‥


しかし皮ごと食うって、喉に詰まったりしないのか?


しまったな、ガキ達にはコップも持って来させれば良かったかな?


「私も芋に清浄魔法掛けて~」


「俺も俺も」


「私もー 私も掛けて欲しい」


「わたしのにもかけて~」


「こらお前達、皆で寄って来んな」


しまった、アンナの芋に掛けてたら、そら自分のにもってなるわ。


このガキ共、皆灰が掛かったりしてるし、煙で煤けてやがるじゃないかよ。


てか何でこんな汚れてんだ?


うん、焚き火の近くに居たせいだ、それに俺が芋を灰から取り出してた時もガキ達は近寄って見てたから、それでか!


もう、クリーン掛けたのに又掛けなきゃならないだろ。


てかコレってガキ達にも掛けなきゃならんのか?


やっと芋を配り終わってホッとした時に‥‥


魔力は全く減って無いから出来るが、面倒なんだけど‥‥


やらないと収まらないよなぁ‥‥ あーあ




「守長お疲れ様」


「おう、疲れたわ弟」


「なぁ守長、焚き火に火を入れようか?」


「いや、待てまだだ」


「でも準備だけはしといた方が良くないか?」


確かにそうだな、だがまだだ、今はダメだ。


「お前な、今焚き火の火が消えてるが、薪を組んで焚き火の火を起こしてみろ、ガキ達が帰らずこの場に居着くぞ、良いのか?」


「確かに‥‥ そうだな、それはダメだ」


「だろ? もうちょい待て、てか疲れた、それに芋を食いたい、腹減った」


まだまだガキ達は居る、芋をやっと食い始めたばかりだ、芋がデカイから殆んどの奴は一本食ってもう一本は持って帰るだろう。


多分だが食って暫くは、この辺りにガキ達は居そうな気がする。


「守長、ガキ達に村に帰るように言おうか?」


「まだ待て、今言えば逆効果になりそうな気がする、もう少し待とう、てか芋を食ってから考えようじゃないか」


「分かった、おいブライアン守長が芋食おうってさ、こっち来いよ」


ガキ達は今は芋を美味そうに食って居る。


どうせ食い終わったら村まで帰るだろう。


遊ぶ為に帰るってのもあるが、喉も渇くはずだ、そうなれば嫌でも村に帰る。


うん、コップを持って来させれば良かったと考えたが逆だな、もし持って来させていれば、ここに居着く可能性もあった。


そう考えれば持って来させなくて良かった。


芋を食ったら結構喉が渇く、そうなれば村に帰る、ならそれまで俺達は芋を食いながら待てば良いんだ、おっとそうだ。


「お前達、芋が八本余ってる、お前達四本づつ持って帰れ」


「えっ、良いのか守長?」


「良いんだよブライアン、俺は今二本食えば満足だ、モリソン弟、お前兄貴に持って帰ってやれ」


「ありがとう守長、兄貴も喜ぶと思う、いや、芋焼いた後の事を聞いたら悔しがるかな?」


うん、悔しがるだろうな、自分が昼寝してる間にそんなイベントがあった上、その後は飲み会だ、悔しがるだろうな。


しかし平和だ、この様な時間が贅沢なんだってのをこの村に来てやっと気付いた。


本当の幸せってのは、穏やかで何気無い、淡々と流れる時間なんだって。


劇的な物等も何も無く、寧ろ波乱万丈なんてのは不幸ですらあると言うのが分かった。


良いな、本当に悪くない、俺をここに飛ばした奴には感謝してやっても良い。


うん、俺をここに飛ばした奴はある意味正解だったな、多分そいつから見たら俺は牙を抜かれ、腑抜けたんだから、檻に入れられた獣だな。


だがそれは優しい檻だ、エサもたっぷり、安全も確保された、まるで動物園の檻に居る獣であるが、それを良しとして居るんだからな。


とは言えそれはそれ、これはこれ。


俺を飛ばした奴には、機会さえあればきっちり礼はする。


うん、礼を受けたらきっちり御返しはする、人としての礼儀だからな。


まぁ、今は良いだろう、何せこれから焚き火を囲んで楽しく飲み会だ、今なら大概の事なら許せる気がする、多分な。


腹も膨れて来たし、酒が楽しみだ。


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