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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第1章 ある灯台守の日々
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第17話 黒い三本の蓮華


灯りが輝いている


暗闇の中、俺達が向かう先がいつもより光に溢れ浮かび上がっている。


「守長すまんがもそっと照らすのを抑えてくれんかね?」


振り返るとザッカリーのじい様が 目を細めている、

顔を見るとびしょ濡れだが雨のせいでは無い、

あれは汗だ。



村長の家から灯台に帰る途中灯台守のじい様達の家に寄り、

寝ぼけ眼のじい様達にクリーンを掛けて生活魔法を使い、

冷水と温水を出して顔を洗わせ目覚めさせ

一人一人拾いながら今現在、灯台へと帰っている途中だ。


ザッカリーのじい様は昨晩の酒が結構残って居たようで冷水を出してやると2杯立て続けに飲み、

更にもう一杯無理して飲んだ。


そのせいで汗を大量にかいている、

雨具で身体が囲われているのも理由の1つだろう。


風が生温いし湿気が結構あるから余計にだ。


「じい様眩しいか?」


「ああ、ちとばかりきついな」


寝起きだからかな? 俺には丁度いいが‥‥


「ザッカリー場所を変われ、明るさは今ぐらいが丁度良い、これ以上光が弱くなったら歩きづらい」


1番後ろを歩いている

アレクサンダーのじい様が抗議の声を上げる。


「おう、分かったアレク」


ほろ酔いザッカリーがその場で立ち止まり

アレクサンダーのじい様は早歩きで前にきた。


じい様達の歩みの確認の為にちょこちょこ後ろを確認しながら歩いているがじい様達の足取りに乱れは無い。


俺達5人は俺を先頭に無言で歩いていた。


雨は相変わらずだが風は気持ち弱まった気がする。


「守長」


クラインのじい様が声を掛けてきた。


振り向いて顔を見ると

暇潰しに会話をと言うのとは違うみたいだ。


「どうしたじい様?」


「うん、この嵐だが夜明けには収まりそうだ」


じい様は確信を持っているようだ。


「経験と勘、関節の痛みからそう判断したのか?」


「うん、そうだ」


じい様が言うなら間違い無いだろう。



他のじい様達もクラインのじい様の言葉を否定しない。



それ所か

「そうだな」

「朝方にかけて徐々に収まるだろうな」

「まぁ 朝方までの辛抱だ」


何て言ってる、なら船は夜明けと共に出せるな。


灯台に帰りついたらとりあえず救助者を収容する部屋にクリーンを掛けるか。


掃除は定期的にやってるが一応クリーンを掛けておこう、

こんな状況だじい様達も反対しないはずだ。


他の部屋にも掛けよう、どうせついでだ。


しかしあれだけ激しかったからなぁ、

どんだけの数が助かるか‥‥


ん?又雨が強くなったな。


フードを頭から被っているが横殴りの雨が顔にかかる、クソ! 目に入った。


帰ったら着替えないといけないな。


面倒だが仕方無い、

軍の人間やバハラの行政府からも人が来るだろうし面倒ではあるがある程度の体裁を取り繕う必要もある。


人は権威に弱い。

そして宮仕えたる官吏は他には強いが

同じ官吏の権威には事の他弱い。


軍人はある程度の地位が無いと舐めてかかって来る。



今の服装は言わば現場着だ、

俺はこれが気に入っている、動きやすいし着心地も悪くない、しかも丈夫だ。


だが色々(・・・)と分かりにくい、それが難点だ。


久々にあの格好をするな‥‥


まぁたまには良いだろう。



灯台にたどり着いた俺達は雨具を脱ぎ一息つく。


じい様達にクリーンを掛けてついでに乾燥も掛けてやる、ザッカリーのじい様は事の他気持ち良さそうだ、汗まみれだったからなさぞかし気持ちよかったと思う。


「相変わらず守長のコレは凄いな」


ジョージのじい様が感心したように呟く。


まぁ生活魔法には結構自信がある、

実際かなり役に立っている。


じい様達に灯台内の照明に火を入れるように指示し、篝火の所まで上がる。


「じい様皆を連れて来たぞ」


俺の言葉を聞きアイザックのじい様がホッとしたような顔をした。


灯台を出る前に出した氷が2割程溶けていた、

思ったより溶けている、もう少し密度を高めても良かったかもしれない。


「守長、この嵐だが朝方には収まると思う」


じい様の言葉に思わず笑ってしまった。


「どうした守長?」


じい様が不思議そうな顔をしている。


「いや、他のじい様達も来る途中に同じ事を言っていたんでな、つい」


俺の話を聞いて今度はじい様が笑い出した。


「成る程の考える事は皆一緒か」


二人して暫く笑いあった、何故か可笑しかったんだ。


暫く笑い合ってじい様に異変が無かったか聞いたが特に何も無かったみたいだ。


しかし風が強い、じい様達は、朝方には収まると言っているが俺には収まるとは思えない、これが経験の差か?



だがじい様達は本当に凄い、恐ろしい程の的中率だ、俺は最初じい様達は天気予報の魔法持ちかと思ったくらいだ。


強い風が吹き付けてきた。



「又雨天幕が捩れよる」


アイザックのじい様が捩れた雨天幕を直す、

そう言えばじい様飯食ったのかな?


「じい様飯食ったのか?」


「いや食えんかったわ」


おいおい、いかんだろう。


「じい様飯食ってちょっと()休憩しなよその間俺がやるから」


「いやいやしかしなぁ大体守長、雨具無しじゃあずぶ濡れになるぞい」


遠慮しなくてもいいのに。


「大丈夫だ魔法で直ぐ乾かせられるしそれにその間は海を魔法で照らすから」


「あー‥‥ ならその間にちと休ませて貰おうかの」


うん素直で宜しい。


風が強い、まるで俺を狙って叩きつけて来るかのようにきついな、吹き荒れてるとしか言い様が無い。


海に向かってサーチライトの様に光を収束させて照らす、片手で無く両手を使って照らす。


両手を左右にゆっくり移動させる、

俺自身も光輝かせる。


これぐらいなら山頂灯台も言ってこないと思う。


アイザックのじい様は階段の所に座って飯を食っているから眩しくは無いと思う。


もう少し光を強めるか?

サーチライトを少し強めて見よう。


うん、明るくはなったがそれだけだ、

あんまり変わらんなしかも風がキツイ。


サーチライト風の光りに照らされた嵐の海は何とも言えない幻想的な美しさがある、一瞬海難事故が起こった事を忘れてしまう程だな。



朝方には嵐が収まるのなら軍の人間も村に来るはずだ、そしてバハラからも官吏が来る可能性大だ。


服を着替えて短剣はあそこに置いてあって官吏服もあそこに一緒に置いたよな?


短剣は手入れしてたけど官吏服はこっちに来てから一回も着てないな、生活魔法で除虫を掛けて密閉された入れ物に入れたから大丈夫と思うが‥‥


最後に着たのは村に赴任してきた時だから、

1年位前になるか。


今着てる服は現場作業着なら官吏服はスーツみたいなもんだ、10年以上官吏服を着てたが今じゃこの服に随分と慣れたもんだよ、まぁ俺はこの服好きだがな。


後は‥‥


髪も整髪料を付けて撫で付けおかなければ、

しかし短剣も身に付けるのは約1年ぶりだな。



特級官吏は様々な特権や権利を有するが その一つが短剣の携帯だ。


短剣は特級官吏試験に合格し任官する時に陛下直々に賜る恩賜の短剣である。


そして特級官吏は帝城内ですら帯剣する事が許されている。


警護の者以外で武器の携帯が許されているのは

特級官吏のみであり、ある意味身分を表す物となっている。


それ以外にも身分を表すものは色々あるが、

特級官吏、上級官吏、下級官吏の官吏服には、

あるモノが施されている。


それは蓮華の花だ。


前世では蓮華草と呼ばれていたがこの世界では蓮華の花である。


この世界は前世とほぼ変わらぬ植生であり、

動植物はほとんど前世と変わらない。

勿論、前世では見た事も聞いた事も無い様な

動植物は存在するがほぼ変わらないと言っても過言では無いぐらいに似通っている。


同じ様な環境の惑星では同じ様な進化を辿ると言うのを聞いた事があるがこの世界の動植物が似通ってるのはその様な理由からかも知れない。


そして蓮華の花もこの世界には存在しており

官吏の紋章となっている。


下級官吏は 金色の蓮華が一本


上級官吏は 銀色(プラチナ)の蓮華が二本


特級官吏は 黒の蓮華が三本 服に施されている。


その為非常に分かりやすい。


今着ている服にもある、

だが今の服はソレがいまいち分かりにくく、

パッと見分かりづらい、短剣を携帯しておけば

分かるだろうがそれでも気付かぬ奴もたまに居る。


まぁ分かりやすい服、短剣があればどんなアホでも分かるはずだ、


まぁ分からせる為に着ておけば色々やり易くなる。


後は巡察使の紋章も同じ場所に仕舞ってたな、

アレも出さなければいけない。


後は‥‥


「守長ありがとう、助かったよすまんかったな」


ジョージのじい様が食い終わったようだ。



さてと、下に降りて着替えるか。



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