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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第168話 逓信を君に

手紙のみを扱う郵便制度を逓信と言うのは厳密には少し違うと思いますが、作品の世界観に響きが合っていると思いますので逓信とします。


逓信は音信を伝える物だからとのツッコミはご勘弁を。


二回目の荷物を取りに行って帰って来たが、まだガキんちょ達は帰って来て無いか‥‥


「守長それなんだ?」


「布だ、荷物に掛けておけばガキ達から見えないだろ? てかガキ達はまだか?」


「そうだな、まだ集めてるみたいだ、しかし布か? 厳重だな」


「念の為だ」


一生懸命集めてるんだろう、遊びながら一生懸命にって但し書きが付くがな。


それはある程度仕方無い。


あんま時間が掛かる様なら注意しに行かなければならんが、多少遊びながらでもきちっとやってれば仕方無い。


コレは仕事では無く遊びなんだ。


ある程度は緩くても構わないし、楽しくやるんならそれも又良いもんだ。


目くじら立てるのも少し違うからな。


とは言え焼くのに時間が掛かるから、ある程度は急がせないと食うのが遅くなる。


てか芋が結構大きいんだよなぁ。


子供って大きいと喜ぶし、何より大きいと食いでがある。


だが只でさえ焼くのに時間が掛かるのに、こんなに大きいと焼き上がるのが更に時間が掛かるな。


とは言え収穫出来たのが大きいのが多かったし、それに芋の大きさも揃ってないと絶対揉める。


食い物の恨みは恐ろしいって言うしな。


うーん、大きさはある程度揃えたが、それでも揉めるかも知れないな‥‥


焼き上がったら渡す時は要注意だ。


前以て説明しとかいといけない、大きさは運だからガタガタ文句は言うな、大きさの違いに関しての苦情は受け付けないと。


焼く前に芋を見せて、大きさの違いはそこまで無いから運次第だって、渡す時も芋を見ずに渡すから運だ、諦めろって言わないといけないな。


「なぁ守長、もう荷物は取りに行かないんだよな?」


「何だブライアン、これじゃ足りないか?」


「いやそうじゃ無くって、多過ぎる位だよ、増え過ぎたらガキ達から隠しきれなくなるからな」


「それは言えてるな、二回も取りに行ったがちと多い気もするが足りなくなるよりマシだ、だが多過ぎてガキ達が興味を持つかも知れん、とは言え布で隠しとけば何とかなる」


「俺も荷物は気にしとくよ、てか守長、もう準備は終わりだよな? 子供達が持って帰って来るまで暇になるな‥‥」


「それは仕方無い、だがブライアン、酒は芋が焼き上がってガキ達が居なくなってからだぞ、それまでは我慢しろ」


「分かってるよ、ガキ達がツマミを寄越せって言うだろうからな、どうせ芋食ったら村の広場に移動するだろう、それまでは我慢するさ」


しかしブライアンの言う通りガキ達が帰って来るまで暇だな。


三人で駄弁って話をしてる内に時間が潰れるとは思うが‥‥


「なぁ守長、ここからガルム村まで手紙を出すのって幾ら位掛かるんだ?」


「ん? あー‥‥ セレサにか?」


「うん」


「お前、魚市場‥‥ 冬は行けない事もあるか」


「そうなんだ、波が穏やかなら問題無いが、時化ってたりしたら中々なぁ‥‥」


「全く行けない訳じゃ無いだろ? と言っても冬場はすれ違いになる事もあるか」


とは言えコイツが心配する程常に時化ってる訳でも無いし、たまにすれ違いはあるだろうがそんな心配する程か?


結婚が決まったんだから多少のすれ違いと言うか、行き違いを気にしなくても良いと思うが‥‥


逆だな、だからこそ少しでも会いたいし、すれ違いが気になるのか。


少しでもセレサを感じて居たいんだろうな。


何と言うか‥‥ 付き合いたてあるあるか。


惚気と言うか、無意識の惚気かな?


「そんで守長、幾ら位掛かるんだ?」


「行商人によるんじゃないか? しかしお前なんで俺に聞くんだ?」


「だって守長は手紙をよく出してるだろ、だからだよ」


「お前勘違いしてるみたいだが、俺は手紙代は基本的にタダだからな、てかこの近隣であるなら俺に聞くより村の奴に聞いた方が良いと思うぞ」


「えっ? タダ?」


「俺は特級官吏で、特級官吏の特権の一つに手紙の無制限利用ってのがあるんだ、近隣、バハラに出す場合はこの前来た人の商会の人間が持って来たり、返信もその者に渡したりだからな、他にも色々あるが、俺のは参考にならんと思うぞ」


「守長は行商人に頼んでる訳じゃ無いのか‥‥」


「まず頼む事が無いな、全くとは言わんが基本行商人には頼まん」


「守長は帝都に手紙を出す時どうしてんだ? タダって言ってもどうやって送ってるんだ?」


コレ説明しないといけないのか?


ちょっと面倒だな‥‥


「バハラ行政府に持って行くんだよ、行政府には魚市場にある行政府の支所に持って行くとそこから行政府に運んで、更にそこから国の運営するバハラと帝都の往復便に積まれてだ、と言っても当然俺がバハラに行く訳じゃ無い、魚市場に行く奴に頼んで支所に持って行って貰ってる」


「そうだったのか」


帝国に郵便制度は無い、正確に言うと国が運営する誰もが使える郵便制度が無いと言うべきだろう。


俺の場合は官吏だから国のネットワークを使い手紙は出せるし、それを使える。


だが民間の場合は商人が運ぶ事になる。


帝都の実家から俺に出す場合は大まかであるが、バハラ行きの船便に積み、大概が知己のある商人に頼みバハラまで持って来て、そこからバハラの信頼出来る別の商人に頼みハルータ村まで運ばれて来る等である。


ほとんどは帝都まで来た知己のあるバハラの商人に頼み、その商人がバハラに帰還してから自分の商会や、もしくは信頼の置ける他の商人に頼みここまで運ばれて来る。


それが出来ない場合、バハラの商人に都合がつかない場合は、帝都の商人に頼みバハラまで持ってきて、そこから知己のあるバハラの商人に頼む事になる。


結構手間が掛かるし、当然金も掛かるしコネがいるから中間層の人間であればそうそう利用出来ない。


俺やロリババアであれば、国のネットワークを使えるからそこまで手間では無いが、民間であればかなり手間が掛かる。


俺の手紙であれば最優先で運ばれるし、当然あのババアの手紙も最優先で運ばれてくるが、理由は特級官吏だからだ。


とは言え俺の場合は手紙の委任状を書き、それを持たせなければならないから一手間掛かるが、それでも民間に比べれば気軽に出せる。


一応その辺りもブライアンにも分かりやすく説明した。


「国が逓信(ていしん)制度を整えたら簡単に出せるだろうが、無い物は仕方無い、誰かに聞け」


「なぁ守長、何でそのアレをやらないんだ?」


「お前アレって‥‥ 簡単に言うとアホ程金がかかるんだよ、逓信制度を整え、作る事は出来る、だがな維持し続けるのに毎年シャレにならん位金が掛かるんだよ」


「でもあったら便利じゃないか」


「そうだなあれば便利だな、だがブライアン、お前セレサの事があるから手紙をって思ったみたいだが、今まで手紙を出した事って何回位ある?」


「一回も無いな」


だよな、コイツから手紙を出した何てそんな話聞いた事無い。


「うん別に珍しくも無いな、手紙が必要な機会が無かったんだな良くある話だな、でだ、お前自分が手紙をって考えてるからそう思うのかも知れないが、手紙なんて出さない、出す必要が無い時にだ、毎年毎年だな税がその逓信制度で垂れ流されてたとしてお前ならどう思う? セレサとの間の事がまだ何も無かった時にって仮定して考えてみろ?」


「・・・」


「お前が何を考えてるか当ててやろう、俺達が汗水垂らして一生懸命払った税を無駄にしやがって、そう思ったんじゃないか? もしくはそんな事に使うなら別の事に使えば良いのにかな?」


「無駄に使われたらそりゃな‥‥」


「逓信制度が出来たとして、勿論手紙を出すのに金は掛かる、だがな利用者が居ないとその分国庫から、違う言い方で言うとお前が払った税から足りない分は補填、穴埋めに使われるんだ、しかも莫大な金が毎年毎年な、利用者、使う奴が居ないのにそんなのに無駄に税を使われたらどう思う? 単純にムカつくだろ?」


「確かに腹立つな」


「そうだな腹立つよな、そしてそれは不満となる、お前一人の不満じゃ無い、村の奴もこの近隣の奴も、大袈裟でも何でも無く帝国全土で不満に思うだろう、手紙を出す事自体が少ないか、お前みたいに出さない奴がほとんどだ、今の帝国の状況であれば間違い無く逓信制度を維持するだけの実入りは無い、絶対にお前達から集めた税が毎年莫大と言える程に垂れ流される、繰り返しになるが使う奴が居ないんだ、そんな事を維持する為に税が毎年使われたら皆不満に思う」


帝国を統治する立場の人間がその様な事を許す訳が無い。


サザビー帝国は巨大だ、であればこそ郵便網もそれに見合った巨大さになる。


作る事は簡単だ、だが維持し続けるとなると無駄に金が掛かる。


郵便収入なんて雀の涙ほどだろう。


絶対に毎年莫大な金が維持する為に投入される。


先の事を考えて、確かにその議論はある。


それも数百年前からな。


だが帝国の現状から考えて、郵便制度が本当に必要になるのはまだ数百年は掛かるだろう。


未来の為に数百年も無駄に税を使う何て無駄以外の何物でもない。


現状手紙は行商人に頼めば事足りるんだ、寧ろ十分と言って良い、それなのにわざわざ無駄に税を投入する事が分かっていて施行するなんて正気の沙汰では無い。


議論自体は官吏の間であるが、時期尚早と言う意見が大半だ。


一部は無駄と分かって居てもやるべきだと言う意見もあるが、少数意見でしかない。


確かに無駄と分かって居ても、制度を整え時間を掛ければ税の投入が年を追う事に減ると言うのも一理あるし、帝国内の交流も活発になるだろう、だが俺に言わせれば机上の空論だ。


何百年も無駄に税を投入し続ける程の事では無いし、もし本当に必要になったなら十年もあれば郵便網は整う。


実際その様な試算も出てるし、俺も可能だと思っている、だが十年は長過ぎると思い、俺は同期達と話し合った事があるが、無理せずとも五年もあれば郵便制度は作り上げる事は可能だと結論付けた。


五年より短縮するのは出来ない事もないが、職員教育と臣民への周知、それに官吏間の調整と根回しを考えれば五年は必要だ。


因みにその件で話し合った事は俺達、同期達の間の内々の話として腹に収める事にした。


当然レポートの作成もして居ない。


理由は俺や同期達は全員、逓信制度化反対派だからだ。


時期尚早、無駄、害悪、等々と言ってたもんだ。


議論自体はあるが、中には部分施行と言う一番お馬鹿な事を言ってる奴も居る。


一部分でも施行したら、間違いなく規模は拡大して行く。


制度化され施行されたらそこに利権が発生するし、その利権の拡大の為に間違いなく逓信制度も拡大する事になる。


そして更にお馬鹿な議論として、逓信制度か郵便制度かと言うのもある。


うん、どっちでも良いわそんなん。


マジで下らん、たまにこの様なお馬鹿な議論になるのは何でなんだろうな?


帝国の官吏ともあろう者が、こんなお馬鹿な議論をしてる事自体が恥ずかしい。


先帝陛下との四方山(よもやま)話で逓信制度について話した事があったが、先帝陛下も時期尚早、必要無しとの御考えであった。


議論自体は良いが、逓信施行賛成派の根本にあるのは制度の必要性があると思っても居るが、新たな利権に噛みたいとの思いがあるからだろうと、俺と先帝陛下は同じ意見であった。



「守長、手紙を出さないといけなくなったら俺はどうしたら良いんだ?」


「知らんわ、お前は本当‥‥ おいブライアン、さっきも言ったが近隣への手紙に関しては俺に聞いても無駄だ」


「守長は何でも知ってるから、知ってるかと思ったんだが」


「お前の俺に対する信頼は何なんだ? てかジョージのじい様に聞け、あのじい様の娘は嫁いでバハラに居るだろ? ならあのじい様に聞いた方が俺より詳しい筈だ」


「そう言えばそうだったな、そうか、ジョージのじい様に聞けば良いのか」


「おう、因みにジョージのじい様は今日は夜番だから灯台には居ないからな」


「分かった、後で聞いてみるよ」


本当コイツは何と言うか恋愛脳かよ?


恋は人を変えさせるか‥‥


しかしガキ達おっせーなぁ。


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