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異世界灯台守の日々 (連載版)  作者: くりゅ~ぐ
第3章 来訪者達
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第153話 昆布と王子

第3章開始です


「守長はいこれ、頼まれてた物」


「ん、あんがとさん、八枚分だな大銅貨八枚っと、ちゃんと数えてくれよ」


「うん‥‥ はいありました、毎度どうも」


「昆布もあるよな? 何枚だ?」


「六十枚ね」


「なら大銅貨六枚か、これもちゃんと数えてくれよ、間違いは無いな?」


「大丈夫、干し昆布も確かめてね」


「ん‥‥ 問題無いな、全部状態が良い、バッチリだアマンダ流石だな」


「教えられた通りやっただけよ、状態が悪いのはハネてるし、持ってくる前にもう一度確認したから」


アマンダと取引した物は干した昆布と、干した昆布を粉にした物だ。


昆布を粉に、昆布粉にするのは手間暇掛かる。


なのでアマンダと後二人に頼んで粉にして貰ってる。


後二人はばあさんだが、三人共丁寧に仕事をしてくれるので、この三人にだけ頼んでやって貰っている。


とは言えばあさん二人は年でもあるので余り量が作れない。


なので自然とメインはアマンダが作っており、干し昆布一枚につき大銅貨一枚払い、依頼している。


干し昆布自体はアマンダにだけ頼んでおり、アマンダの独占状態だ。


凄く丁寧だし、出来上がった物も前世で言うなら最高級品と言って良い程の出来上がりで、アマンダ以外には頼むつもりは今の所無い。


昆布も昆布粉も使い道は多い。


料理に使ったり、昆布茶にして飲んだり、出汁を取った後も食べたり、それこそ家畜に与えたりと。


鶏に与えると気のせいか卵の味が良くなる様な気がする。


アマンダも同じ様に鶏に与えており、やはり卵の味が良くなった気がすると言って居る。


それともし鶏を締めた場合、肉の味が良くもなるし、何より丸々と肥えるのだ。


それにエサ代の節約に繋がり、良い事ずくめだと俺に嬉しそうに言って居た。


昆布も出汁を取ったり食べたりしており、アマンダは昆布を食べても腹が緩くならない体質らしく、寧ろ食べる様になってからは身体の調子が良くなって、しかも肌も綺麗になったらしい。


気のせいか身体のキレも良くなったそうだ。


ただ干した昆布は兎も角、それを粉にするのが本当に大変なんだ。


繰り返しになるが、手間暇掛かるどころじゃない。


だから頼んでやって貰ってるが、アマンダは確かに手間暇掛かるが、臨時収入としてありがたいと言って、喜んでやってくれる。


「昆布もそろそろ時期が終わるな」


「そうね、時期を外れると味も風味もいまいちだし、春まで一旦お休みだね」


前世より一月程、収穫時期は長い。


植生はほぼ一緒であるが、時期や旬等は微妙にズレてるし、この辺りで何故か昆布が収穫出来る。


植生地域が何故か微妙にと言うか、結構ズレがあるのは理由が全く分からない。


とは言え収穫出来て、しかも旨いから全く問題は無いんだがな。


「アマンダはもう大分採ったんじゃないか?」


「うん、採れる時に採らないと冬の間に食べる分とか、鶏のエサにする分が足りなくなったら大変だもの、もうコレ無しは考えられないしね、冬に採ったのでも鶏のエサにする分なら問題無いけど寒い中採りたくは無いわ」


「だな、今の内に採っとけば後が楽だし、今採った方が旨いんならそらそうするよな」


「うん、それに鶏に食べさせると卵の味も良くなるし、丸々と太って肉の味も良くなるし、エサ代が凄く浮くから本当に昆布様々よ、守長に教えて貰って試してみたけど、本当に助かるわ、ありがとう守長」


「ん、俺も粉にしてもらったりしてるからな、礼はいらんよ」


「粉挽きもそうよ、凄く助かってるのよ」


「自分で挽くのは手間だからな、鶏に食べさす分はある程度雑でも良いが、自分で食う分とか、昆布茶にする分はアマンダやばあさん達が挽いてくれたのじゃ無きゃ駄目だ、風味も旨味もまるで違う、丁寧に挽いてくれて俺も助かってるからな」


アマンダと二人のばあさんが挽いた物は他とはモノが違う。


そう考えれば安いもんだ。


俺が飼ってる鶏の分は他の者に頼んでいるが、三人に払っている手間賃より遥かに安い。


言うなれば三人には、手間賃と言うより技術料を払っていると言ったとこかな?


昆布茶は灯台守のじい様達も大好きだからな。


寒くなる時期は消費量が跳ね上がる。


又頼まなきゃな。


「アマンダ、今日買い取った干し昆布だが十枚又粉にして欲しい」


「はい毎度どうも、出来たら又持って来るね」


「ああ頼む」


アレ? ハンナの奴まさか?‥‥


「どうしたの守長?」


「うん、気のせいかハンナの奴、鶏を狙ってる様な気が‥‥」


「あー 守長が飼ってる猫ね」


鶏を飼ってる辺りは囲いで守られている。


そしてハンナは子猫の頃から鶏を襲わない様にキツく言い聞かせて居るし、教育して居る。


とは言えハンナは猫だ、野生の血が疼き、猛る事が無いとは言いきれない。


又言い聞かせておかねばならないな。


てかハンナは兎も角、他の猫がちょっと危険ではあるんだよなぁ。


奴等はエサをたっぷりと貰っては居るが、野生の本能が疼き狩ろうとする可能性もある。


だって野良猫だもの。


と言っても奴等は食べる為に襲うのでは無く、本能に従ってであるとか、遊びでじゃれついてと言うのが多い。


とは言え多いと言うのも正確では無いな。


そんな事は滅多に、数年に一回あるか無いかだから。


基本的にハルータ村の村民は猫を大事にして居る。


だが鶏や、一夜干しの魚や、完干しの魚介類を狙うのであれば話しは別だ。


猫は大事にして居る、だがそれはそれ、これはこれだ。


村民は鶏や加工途中の魚介類を狙われた場合、烈火の如く怒る。


その為この村の猫達は、村民の物には決して、いや、ほぼ決して? 手は出さない。


身を持って知ってるからなぁ‥‥


ん? ハンナの奴行ったか?


本当に気儘な奴だ‥‥


「所で守長、この間凄かったね」


「ん? 何がだ?」


「大きい船に乗って来た子居たでしょ?」


「あー 何だ、アマンダも気になるのか?」


「んー‥‥ そりゃね、村でも皆あの時の話しをしてるし、守長も何時もと違うし、相手の子も目立ってたもの」


「乗馬服着てたし、村に行商人以外の人間が来れば確かに目立つな」


そらそうだ、アレで目立たない何て言う奴が居たら、寧ろ色々と疑うわ。


しかもあんだけ見物人が居て、村民皆が話してたし、噂話をして居たんだからな。


「それもあるけど、まるで婚約者みたいだったもの」


「アマンダそれは違う、婚約者じゃ無いし、その様な関係でも無い、俺が官吏になって一年程して、バハラに赴任してた時に知り合った人だ、相手が四歳で、俺が十六の時に初めて出会ったんだ、言うなれば妹みたいなもんだ」


「・・・」


「どうしたアマンダ?」


「多分相手の子はそうは思って無いと思うわよ」


「と言うと?」


「女の勘ね‥‥」


「・・・」


()に恐ろしきは女の勘か‥‥


マジでこえーな女の勘。


男の浮気とかって、こうやって見抜かれるんだろうな。


何だろう、俺は浮気してる訳では無いのに、何故に浮気がバレて咎められてる気分になってんだ?


「守長お姫様相手にしてるみたいだったもんね、子供達、女の子は皆キャーキャー言いながら喜んでたし、未だにあの時の話をしてるわよ、と言ってもそれは私達大人もだけど‥‥」


「エスコートしただけだぞ、てか俺は子供の頃からそう(しつけ)られてたし、相手の家も俺の家と同じ様な家だからエスコートは普通の事で当たり前の事でもあるんだ、お姫様とは言わなくても、相手は本物のお嬢様なんだ、極々普通の事だよ」


「・・・」


「アマンダ、あの場合エスコートしなかったら俺は礼儀知らずのマナーも分からない奴って事になるんだ、人として礼儀は大事な事だろ?」


「それはね‥‥ 確かに礼儀は大事な事ね、それにしてはと思うけど‥‥ 言葉遣いも普段と全然違ってたし‥‥ 子供達が守長の事、王子様みたいだって言ってたわよ、お伽噺みたいだって」


「・・・」


アレ普通の事だし、マナー何だけどなぁ‥‥


親しき相手にやる分は当たり前のだし、面識の無い相手なら又ちょっと違うんだけど‥‥


「じゃ私は帰るわね王子様」


「ちょっ、おい!」


「昆布粉が出来上がったら持って来るからそれまでお待ち下さいね、王子様」


「・・・」


気のせいかアマンダが少し、そう、本当~に少しだけ不機嫌なのは気のせいだろうか?


あまりに微妙過ぎて流石の俺でもイマイチ分からない。


しかし‥‥


まさかと思うが俺、王子様ってあだ名付けられてるんじゃないだろうな?


多分面と向かっては言われないだろうが、陰口ネーム的に言われてるんじゃないだろうか?


もしそうなら、抜かしてくれちゃってる奴は、とりあえず簀巻きにして吊るそう。


うん、不敬罪だよな?


そんな事を抜かす奴は簀巻きからの吊るしによる晒し刑だ。


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[一言] お前こそが灯台の王子様 ミュージカルにしましょう。
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